第6話 同盟打診と罪 【海鳥】【葉山】

「同盟を組まない?」

「同盟?何に対してだよ?」


葉山さんは俺に対して訳の分からないことを言ってきた。


「うん、説明するね。私は仁君の事が好きなんだと思う。高校の時、告白してフラれたけどまだ心の中で整理が出来ていないのかもしれない」

「は~?仁には工藤って恋人居るし、お前だって真司がいるだろ」

「それは解っているの・・・でも、この機会に仁君への思いを再確認して、整理できれば犬っちと本当の恋人になれるだろうし、仁君への最後のアプローチの最後のチャンスだとも思っているの!!」

「仮に仁とお前がSG終了後に付き合うとしてだ、工藤と真司にどう落とし前を付けるか考えておけよ。正直言えば、仁へアプローチとか真司への裏切り行為だと思うが、秘めたままで終わらすって選択肢はないのか?」

「多分、私が仁君と付き合える確率は限りなくゼロに近いと思っているの。二人の落とし前は今考えられないし、難問だから仁君を落とせたら確り考えるよ。それに、不誠実なのは自分でも分かってるの。中途半端に引き摺るより、全力で行動してフラれたいんだと思う。でもね、チャンスとも思ってるのかもしれない・・・」

「あ~~心は難しいな・・・」

「難しいね・・・海っちは、ユッキーに未練は無いの?」

「有るか、無いか、・・・有るかもしれないが、俺には秋穂がいる。」

「そっか~でもね、ユッキーが付き合って欲しいと言ってきたら?アッキーが誰かに奪われたら?どうするの?」

「正直そうなってみないと分らんが、人のモノを奪うのは罪だ。結婚してないから罪と言っても犯罪にはならないが、奪った者は間違いなく罪人だし、それを容認した者も罪人だと思うが、葉山さんはどう考える?」

「・・・・」

「後な、『二兎追う者は何も得ず』っていうだろ。俺は秋穂だけ追っ駆けるつもりだから同盟に価値が無いし、協力はできない」

「分った、嫌なこと言ってごめんね」

「いいよ、いいよ、気持ちって難しいから折り合いつけるのも大変だし、第三者として聞いてあげることは出来るけど、行動に移せば庇えないってだけの話。これでも良い恋人のつもりだから。疑似だけどな!!」

「海っちはゲームとして考えてるんだね~」

「ゲームじゃなくてリアルだとヤバいでしょ!!」

「だよね~」


話は終わったが、何とも言えない重石を背負わされた気分である。

2週間、重い気持ちで過ごすのは気まずいので今の話は無かったことにということにした。


私(静夏)は海っちの同盟を持ち掛けた。

結果から言うと同盟は不成立である。

自分の思いを吐き出したことで少しだけ気持ちが楽になったが、海っちの一言一言に考えさせられた。

特に、『罪人』という言葉を聞き自分は既に『罪』を犯しているような気分となった。

もう既に犬っちに対して『罪』を犯しているのかもしれないが、『罪』を背負っても叶えたい願いはあるのだ。

多分、私は『罪人』だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る