第5話 自信と不安要素 【柴田 秋穂】

恋人交換のゲームの第3回目の話し合いの席で猿渡君からスワップゲームを話す時は【SG(えすじー)】と呼んではどうかと提案された。

人前で恋人交換とかスワップと常識を疑う単語を使って話をするのは非常に恥ずかしいので皆賛成した。

今後はSGで統一決定となる。


私(秋穂)と樹は『お前達だけ不参加とか無いよな』と皆から言われ、協調圧力に負けて強制参加となった。

猿渡君はチャラそうに見えるがそんな事は無く性格も容姿もイケメンだし、犬塚君も誠実で清涼感のある隠れイケメンだと思う。

二人とも素敵な男性であることは間違いない。

でも、私には樹がいるし、樹以外の男性に興味を持てない。

樹と将来結婚して子供を作って育てて死ぬまで一緒だと考えている。

私の愛は重いのかもしれない。

でも、だからこそSGに私が参加する意味が解らない。

樹も『真面目過ぎる』と私も含め皆が揶揄うが、本当はそうではない。

名前の如く、自分で調べて考えて思考の根を張り巡らせて得た常識的で普遍的な揺ぎ無い幹に支えられた価値観という樹を土台とした行動原理で動く。

常識的で普遍的だからこそ真面目に見えるのだろう。

簡単に言えば、SGの様な非常識でも関係なく、何者にも揺るがない信念を持ちつつゲームとしても楽しむだろう。

そんな樹にも不安要素が全く無い訳でもない。

雪美さんという樹の幼馴染・・・

高校2年の時、彼の初恋は自分の気持ちを伝えることもなく終わったと樹本人に教えてもらった。

高校3年で初めて同じクラスになった私と樹はそこで知り合った。

樹は、GW前に私に告白して来た。

『好きです。付き合ってください。』とシンプルな告白の言葉だった。

付き合い始めてから直ぐに樹に『何故知り合って間もないのに告白して来たのか』尋ねると『誰かに先を越される前にフラれてもいいから告白したかった』と言われた。

後悔が彼の行動力の速さへと繋がったのであろう。

樹の行動は告白だけではなく全ての行動に現れた。

どんなことでも考えが決まれば即決するのである。

以前は中々決めることが出来なかったらしい。

樹の行動を変えさせる程の影響を与えた工藤さんに、多分、私は嫉妬しているのであろう。

そして、過去の樹のことを私以上に知っている彼女は要注意である。


最初のSGのペアリングは猿渡・柴田、犬塚・工藤、海鳥・葉山となった。

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