第8話 最期まで仮面を付けたままの高野悦子さん

  彼女を知る誰もが、「エエッ! あんなに明るい人が自殺 ?」と、驚いたそうです。

それほどまでに、日記の外では「明るい・ノー天気な高野悦子」という仮面をかぶって生きていた彼女。子供の時から「内なる真の自分」と「外向けの自分」を使いながら20歳まで生きてきた高野悦子さん。

二十歳の時点で、外向けの仮面をかぶった自分が内なる自分を浸食しようとする危機感に、苛まれていたのかもしれません。


麻疹と同じで、放っておけばよくなる。

真実の自分と仮面の自分との葛藤とは、時間と共にうやむやになっていく。

その「時間稼ぎ」ができなかった。  

或いは、私(平栗雅人)のように、鏡に映った自分と鏡の中の自分との違いを突き詰めようとせず、曖昧なままでいることができるような(いい加減な)性格ではなかった。

ただ、第9話に述べたように、二十歳という人生に於ける第一段階で、帰りの切符を手にできたというのは、ある意味で正解でした。

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