第2話 話し合い

Q.憧れの人は誰ですか?

A.織田信長


Q.好きな有名人は誰ですか?

A.織田信長、廉頗


Q.好きな人はいますか?

A.織田信長、廉頗


Q.好きな漫画は?

A.キング〇厶、バガボ〇ド、ひとつなぎの大秘宝、はじめの〇歩 etc.....


Q.理由は?

A.体躯が良かったり、屈強なおじ様がいるから。


Q.生まれ変わったら何になりたい?

A.異世界で最強オヤジ将軍のお嫁さん


 そう望んだ…そう願っていた…


 ──なのに、夢見た転生先がイケメンしかいない乙女ゲームなんて需要無さ過ぎて泣きたい!!


「…い、おい!!」


 トリップしていた意識を呼び戻す声に我に返る。


「貴様が呼び出しておいて急に黙り込むんじゃない!話とは何だ。さっさと用件を言え」


 目の前にはフラガーデニア国の第一王子であるダニエル・アホカスが苛立たしげに前の椅子に腰掛けている。

 ダニエルにはあの手この手でこの話し合いに応じてもらった。何をしたのかって?今、ダニエルが夢中になっているご令嬢、ナディアを話し合いに応じなければ虐めてやると脅した。


「そうですわね。回りくどいのも面倒ですし、率直に言わせて頂きますわ。今、殿下がお考えになっている婚約解消の件なんですけども、婚約を解消するのは構いませんが国外追放や処刑ではなくわたくしを前線へ送ってはくださいませんか?」

「……は?」


 ダニエルは、苛立たしげに肘掛けに肘を付き、反対の手で肘掛をトントンと指で叩いていた動作を辞める。


「は?ではなくて、婚約を解消されましたらその後わたくしを戦場の前線へ送って下さいと申しているのです」

「二度言わずとも聞こえている。そうではなく、何故ベラがその事を知っているのかということと前線へ行きたがるのかを聞いているのだ」


 ──あら、彼に愛称で呼ばれるのはかなり久し振りね。


 だけど、それによって今まで抱いていた恋心が痛んだりとかは一切なかった。

 前世を思い出してから性格が前世に引き寄せられているのか。好みは完全に変わり、今はイケてるおじさまにしか興味がない。


 ──屈強で強面だと最高に良き!


おっと、また脱線してしまった。


「何故かって?おかしな事をおっしゃいますのね。殿下はご存知無かったのですか?世間は見目麗しい男性を侍らせた男爵令嬢の話題で持ち切りですのよ?その取り巻きをしている殿下が婚約者であるわたくしとの婚約を解消するのではないかと貴族の皆様も噂をしておいでですわ。前線へはわたくしの自殺願望とでもお好きなように受け取って下さいませ」

「なっ、私が取り巻きだと!?それに、ナディアだけでなく私の友人までも愚弄するか!!」


 ダニエルは顔を真っ赤にして怒りに肩を上げる。


「隙あらば一人の女性を取り合う間柄が友人とは……笑えるわね」


 しまった。思わず思ってる事が口をついて出てしまった。

 ちらりとダニエルを見ると彼は憤りながらもヴェラの言葉に思い当たる節でもあるのか、唇を震わせるだけで返す言葉がないようだ。


「……っ、そもそもお前は私の事が好きだったのではないのか!!」


 漸く言葉が返って来たかと思ったらそんなことかと呆れる。確かに前世を思い出す前はダニエルのことを慕っていた。だが、今はそんな気持ち綺麗さっぱり無くなってしまったのだ。


 ──というか、今まで散々婚約者を蔑ろにして他の女性と公衆の面前で堂々とイチャイチャしていた奴が何言ってんだ?


「確かに、お慕い申していた時期もございましたわ。しかし、それも過去のこと。大体、婚約者がいる身でありながら、散々わたくしの前で他の女性と仲睦まじい姿を見せつけておいてどの口がそのような事をおっしゃっているのでしょうか?」


 やられっぱなしは性分に合わない。胸の内に思ったことをそのまま吐露する。ヴェラは黒さを多分に含んだ笑みを浮かべて威圧した。

 フラガーデニア国の国王でさえも実はヴェラに強く出ることはあまり出来ない。

 そもそも、ダニエルとの婚約は王家の方から願い出てきて結んだ契約のようなものだ。

 ヴェラは幼い事から膨大な魔力を有していた。その力は大人になると国一国は滅ぼせるのでは無いかと言われるほど。

 ヴェラをこの地に留め監視する意味も含めてダニエルとの婚約が決まった。そのせいで不自由だと自己憐憫に酔ったダニエルはあっさりとナディアに攻略されて婚約破棄なんいう暴挙に出ようとしているのだ。


 ──まあ、止める気はさらさらないけど。寧ろ便乗して前線送りルートウェルカムだから。


「そもそも、この婚約は元は王家から望まれたものだということをお忘れなきように。それをわたくしは殿下の作戦に便乗しても良いと申しているのです。自由の無かった殿下にも漸く春が来るのです。その為にはわたくしが邪魔になりますでしょう?ですから、これは交渉です。」


 現在進行しているダニエルが企てた婚約破棄イベントを成功させる為、ヴェラ自身が協力してあげると分からなせなければならない。

 ヴェラはゲームのようにナディアを酷くいじめた記憶がない。ということは、婚約の解消が受理されない可能性もある上に、寧ろ陛下がダニエルを切り捨てヴェラの魔力を取る可能性だってあるのだ。それだと困る。大変困る。


「殿下はナディア嬢と一緒になりたい。わたくしは前線に行きたい。利害が一致している限り協力し合った方が上手くいくとは思いませんか?」


 ダニエルは元々は馬鹿ではない。ナディアと共にいることで愚者になってしまっているようだが、ここまで説明すれば幾ら脳内花畑になった彼でもヴェラの提案が分からないわけではない。

 まあ、前線に行ったからといってこの国に留まるという意味ではないがそんな事は言わなくていいだろう。そんな事を言えば寧ろ自分の首を締めてしまう。

 敵国に好みの屈強なおじ様がいれば其方につく気満々だが、取り敢えずはダニエル達と共同戦線を張る。


 ──私の輝かしい未来、すなわち夫探しの為に更に愚者を演じて頂きましょう。


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