第5話 例えばこんなお客様

 これまでさまざまなお客様にお会いしてきて、やはり変わったお客様にも時々遭遇してきたわけですが、写メ日記つながりでひとつだけエピソードをご紹介したいと思います。

 これは私が最初のお店を辞めて、OL店で働いていた時のことです。OL店というのはその名の通りOLさんっぽい格好をしてプレイを開始するお店のことで、基本的にやることは他のお店と変わりません。そのお店ではかっちりしたブラウスと膝上丈のタイトスカートが制服でした。

 そのお店で働き出してから一人目のお客様で、まず出会い頭にチップをくださったのが印象的で。それまでチップをくださるような方にはお会いしたことなかったのでびっくりしました。プレイ後、フェラでイッたのが初めてということでその方もびっくりなさっていました。そこから何度も来てくださるようになって、今思い出しましたが、小説をお読みになるというお話を伺ったので私のおすすめの本を何冊かプレゼントしたこともあります。

 ある日、その方がA4サイズの書類の束を持って来ておられて、何かと思えば、一枚目は「見積もりお願いします」みたいなことが書かれた仕事用っぽい用紙だったんですが(偽造)、二枚目以降は全部私の写メ日記を印刷した紙だったんです。(!)

 しかも全部の紙にが入っていたと言いますか。ペンで波線や二重線が引いてあって、「この言い回しはいい!」とか、「これはどういう意味?」とか、事細かに書き込みがなされていて、本当に驚きました。持ち歩いていつでも読めるようにしているとのこと。イチカさんの写メ日記はとても面白くて、ファンだと言われました。私の写メ日記のファンと言われることはたまにありましたが、ここまでされている方はおられませんでしたし(当たり前か)……というか、写メ日記ってスクリーンショットを撮るのも嫌われるくらいなのにこれはいいのだろうか、というのも頭をよぎりました。喜んでいいのか怒ったほうがいいのか、かなり複雑な気持ちになった記憶があります。


 ところでそのお客様はよく、「いきなり辞めないでね! イチカさんは僕の心のカウンセラーだから!」と言われてまして(カウンセラー?)。「もし辞める時は次にどこのお店に行くって店長に伝えておいて。店長に訊くから!」というようなこともおっしゃっていました。

 一方、実際に私が辞めることになった時、店長さんが「もしお客様に訊かれたらイチカさんは今はどこどこのお店で働いていますってちゃんと教えてあげるからね」と言ってくださっていたんです。じゃあ大丈夫かな、親切な店長さんだなぁ、と思っていたのですが、新しいお店で働き始めても、その方何カ月も来られなかったんですよね。

 忘れた頃に突然やって来られたので、「私言われた通り前のお店の店長さんに、次のお店お伝えしておいたんですよ」と言うと、店長さんがなかなか教えてくれなかったとのこと。あれ、話が違う!と思ってこれまたびっくりでした……けど、店長さんからしたら自分のお店のお客様が減ることにつながるわけなので当然のことなんですよね。でも嘘とか社交辞令とかが苦手な私にはわりとショックな出来事でした。


 あと、そのお客様、よく私にブルボ○のアル○ォートというお菓子を持って来てくださっていたんですが、辞める前に同じお店の、他の女性の写メ日記を見ていたら、お客様からいただきました!ということでアル○ォートの写真をしょっちゅう上げておられる女性がいらっしゃって、同じお客様やないかー、と。

 いや、どの女の子と遊ぶのもその方の自由なんですけど、「せめて分からないようにやっていただけたらいいのになぁ。他の女性を無駄にライバル視しなくて済むし……」と思ったものでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る