第3話 オキニ男性スタッフ

 前述の接客ランクの話をしてくれたのは、私が風俗嬢人生の中で一番信頼していた男性スタッフの方です。仮にMさんとしておきます。店長になられたり系列店に飛ばされたりまた戻って来られたり、お忙しくされていらっしゃってお会いできなかった時期もあるのですが、お客様のことも嬢のこともよく考えてくださっている方で、私はこの方を本当に尊敬していました。

 そもそも、店によっては女性と男性スタッフが事務的なことしか話さない場合もあります。そうするとその女性がどんな性格で何が売りでどんなことが得意なのか、といったことが全く伝わらないので、お客様にも上手におすすめできず、マッチングがうまくいかないこともある、というのが私の持論です。必要以上に仲良くすることはないと思いますが、少しの雑談は大事かなと思います。

 Mさんは、私がくそ真面目な性格をしていることやフェラが売りなことなどをご存じで、安心感がありました。

 Mさんに信頼を寄せているお客様もおられて、お店の女性について「この女の子が気になってるんだけどどう思う?」といった相談をされることも多かったようです。しかもそれに対して、「その子を指名するのはお金の無駄ですね」などズバッと意見を言うので、気に入られていたようでした(その女性からするとたまったもんじゃありませんが……)。


 直接Mさんにお聞きして特に興味深かったのは、講習の話です。Mさんは講習の時には教えるモードに入っているから基本的に勃起しない、という方で。素股など勃起していないと教えるのが難しい場合は、「ちょっと時間をください」と断りを入れてお客さんモードに切り替える。そうするとすぐにぐーんと勃つ、とおっしゃっていました。

 でもベテランの風俗嬢の方なんかは、講習の時Mさんを最後までイカせようとしてフェラなどをやめない、といったことがあるらしく。あきらめてもらうために、「今からタイマーをかけます。10分以内に僕がイッたら1本分の報酬を渡しますよ。でもタイマーが鳴ったらそこであきらめてください」と言って実際にタイマーをかけ、10分たってプレイをやめさせて、女性を泣かせてしまったことがそれまでに二回あった、とお聞きしました。

 私もそういう方から講習受けたかったです……。私は初めての講習のときに男性スタッフに襲われたので、それはわりとトラウマになってしまいました。その後その人の代わりに謝ってくださったのもMさんです。


 今書いていて思い出しましたが、そんなMさんから、奥様とセックスレスで困っているというお話を伺ったことがありました。Mさんは結構こわもてな方で、今のエピソードから察せられるようにしっかりしたご性格のイメージを持っていたので、とても意外でした。ままならない世の中ですね……。

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