第2話 ランキングの話

 私が最初に勤めていたお店では、ロッカールームに全ての女性の成績表が貼り出されており、毎日更新されていました。二種類の棒グラフが書かれており、男性スタッフに尋ねると、ネット指名と本指名の二種類とのこと。

 「ネット指名」とは、お客様がお店のホームページや女性の写メ日記(各風俗嬢が書かなければならないブログのようなもの)を見て入った指名のことで、「本指名」とは一度遊んだ女性とまた遊ぶという二回目以降の指名のことです。

 ネット指名はランキングには直接関係ないのですが、女性が写メ日記を頑張っている証しになるので、写メ日記を頑張ってもらう励みとなるように貼り出されていると聞きました。


 ちょっとややこしいのですが、そのお店のホームページにはランキングが三種類載っていました。「本指名数」「本指名率」「リピート率」です。

「本指名数」は棒グラフと同じ、1カ月間の本指名の数。

「本指名率」は1カ月間のすべての指名のうち本指名が占める割合。

「リピート率」は本指名は関係なく、初めてお店に来られた方がその女性で遊んだあと、1カ月以内に再度来店されている確率。このとき誰を指名していても構いません。1回目で楽しかったからもう一回来た、ということなので、良い接客ができている女性ほどこのリピート率が上がります。

 私は入店1カ月目から、このリピート率のランキングにランクインすることができました。お店のマネージャーさん(例の)に「やったね!」と褒められたのを、何年もたった今でも思い出します。


 最初の月のみならず、私はリピート率にランクインすることが多い嬢で、自分でもそれが自慢でした。これは良い循環につながると言いますか。ちゃんとしたお店ほどそうなんですが、リピート率が高い嬢は接客のランクが高いと男性スタッフに見なされる傾向があり、お店に初めて来られたお客様におすすめされることが多くなります。

 例えば初めて来られたお客様に、接客ランクが低い嬢を率先して当てがってしまうと、お客様の満足度がおのずと下がり、「このお店はハズレだ。もう来なくていいや」となりがちです。でも接客ランクが高い嬢を当てがえば、たとえ女の子がどんぴしゃで好みでなくても「いいお店だったからまた来てみよう」となります。また、二回目以降に女の子をハズしても「今回の女の子だめだったな」となるだけで、一回目の楽しかった思い出があるので「このお店だめだな」とはなりにくいのです。

 このようなメカニズムを全然考えていないお店もあり、そういったお店はお客様には優しくないですし、売り上げもあまり良くならないのではと思います。負の連鎖ですね。


 話を戻します。私は時折、その成績表をスマホで写真に撮って持ち帰り、家で彼氏と作戦会議を開いていました。

 この女性はネット指名はとても多いのに本指名は少ない。どうなってるんだろう? 写メ日記はどんなことを書かれてるのかな? ああ、顔出ししてるからネット指名が多いのか! でも本指名にはつながっていない? 実はこの顔写真加工しまくってて実物とは違うとか?

 なんてことをあれこれ話していました。

 本当に協力的なできた彼氏で……。私が「今日こんな嫌なお客さんに当たっちゃってさ」という愚痴を話しても聞いてくれていましたが、逆に「今日すごくいい方にお会いできたんだよ!」というような良い報告でも聞いてくれて、一緒に喜んでくれていました。


 そういえば、ほんの数回、三種類のランキングすべてにランクインできたことがあり、お店のホームページのスクリーンショットを撮ったことがあります。今でもその画像は大事に保存しています。

 お店によってはホームページにランキングを載せていませんし、女性に見せるために成績表を貼り出すようなところも少数派のようです。

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