月下美人

海翔

第1話

 あれは幻だったのか、、、

東北本線を下り、一路、乳頭温泉に向かった。

平日と言うこともあり、人もまばらだった。

「そちらに座っていいですか?」と一人のうら若き女性が聞いてきので、

孝雄は「どうぞお座りください」

「あの、ひとり旅ですか?」

そう言われ、 文乃は「これから東北の秘境の温泉に行きます」

「あぁ、私もそちらに行くんです」

「私は井手孝雄といいます」

「実は有給で社内報に秘境の温泉を紹介しようかと、、」

「私は筧文乃といいます。現在学生です」

「大学にはいってから秘境に興味をもって、一人で出掛けるようになりました」

 孝雄は「今回は乳頭温泉の奥にある一本松たっこの湯に行きます。ただ、山奥でつくまでが大変だと聞いてますが、、、」

「今夜は乳頭温泉の少し離れた旅館に泊まる予定しているんです、文乃さんはどちらに泊まるのですか?」

文乃は「私は現地についてから考えようかと思ってました」

「それでしたら、私のところでよければ、予約してあげますよ」

「この時期すいているので、すぐ取れますよ」

文乃は「それでしたらお願いします」

 孝雄はそう言われ、即、予約確認したら、空いていると言うので「一部屋別に、お願いします」と予約を取った。

 3時を過ぎた頃に目的地に着き、 こじんまりした旅館で、孝雄にとってはお気に入りであった。早速、荷物を置いて、温泉に浸かりに行った。

外の風景も紅葉して木々が色づいていた。

孝雄はまさに一番風呂に入ったような優越感を感じた。

 夕食になり、中居さんから呼ばれて、食堂にいったらどこかで見たような人が中居をしていたので、

もしかして「薫さんですか?」と孝雄は聞いてみたら、

薫は「そうですが、、」と答えた。

「私ですよ、孝雄です」といったら、

「井手さんちの孝雄さんですか?」と二人で顔を見合わせて懐かしんだ。

孝雄は「奇遇ですね」

薫は「私この旅館で3年前から住み込みで仲居しているんです」

横で聞いていた文乃さんは「知り合いだったんですか」と孝雄に聞いた。

孝雄は「私の弟のクラスメートなんですよ」そう説明した。

文乃さんは「広いようで世の中狭いですね。こういう出会いもあるんですね」

そういいながら孝雄は過去を思い出しながら夕食を食べた。

 孝雄は薫に「明日、一本松たっこの湯に行きたいのだけどどのようにいけばいいのか教えてもらいたい」と言ったら、

薫さんは「車で黒湯温泉に行き、そこで、車を置いて孫六温泉と反対方向に川沿いに行くと着きますよ」と教えてくれた。

「明日行くのでしたら、私の車を貸しますからこれに乗っていったらどうですか?」

「孝雄は薫さんいいんですか?」

薫は「構いませんよ」と孝雄に言った。

孝雄は「文乃さんはどうですか?行きますか?なかなか面白い秘境に当たると思いますが、、、」

文乃はそれを聞いて「私も連れて行ってください」と言った。

 一先ず、予定がたち、夕食を食べ終わり自分の部屋に戻った。

孝雄は明日行く温泉の確認と今日の行動を記事にして聞き取った。

 寝る前にもう一度、宿の風呂に浸かってから寝ようと思い、風呂に入っていたら、戸が開き薫さんが入ってきた。

孝雄は「ここ男女別では」と言ったら、

「入り口は別ですが、中は一緒なんですよ」と薫は言った。

「丁度、仕事も終わり、それでここに入りに来たんです」そう言って薫は湯船に入った。

孝雄は「薫さん昔からきれいだったけど、今でもかわりないですね」そう言って、薫のヌードを眺めた。

「薫は恥ずかしいからもう、見ないで」と孝雄に行った。

「確か、5年前に母から薫さんが結婚したと聞いていたが、、、」そう言われ、

薫は「3年前に性格の不一致で離婚したの、それからここに来ているのよ」

「そうだったんですか」と孝雄は納得した。

薫は孝雄に「風呂を出てから少しお酒飲みませんか?」

「積もる話もあるので」

「そうですね。部屋で待ってますので、来てください」と孝雄は入った。

湯船から出て、孝雄は自分の部屋に向かった。

 暫くして、薫がノックをして部屋に入ってきた。

孝雄は部屋にあるビールを開けて、薫が来るのを待っていた。

「まずはビールで乾杯しましょうか」

「再会を祝って乾杯、、、」

そう言って薫は、ビールを一口で飲んでしまった。

孝雄は「実は薫さんは私の片想いの人だったんですよ」

「勇気がなくて、なにも言えなかったですよ」

「あれから、社会に出て色々経験しましたが、なかなか、恋は実りませんでした」

「そうだったんですか、私も学生の時は孝雄さんみたいな人を探していたんです。でも、見つけた人で失敗してしまい、離婚になりましたが、また頑張って見つけます」といいながら、孝雄にしなだれかかった。

「やはり一人でいると寂しいです」

そう言って、孝雄の唇にキスをした。

孝雄も、薫を抱きしめて、口づけをした。

薫は小さな声で「寂しかった、私を抱いてください」と孝雄に行った。

 そして、薫は孝雄の浴衣の紐をほどいた。

孝雄は薫の着ている服を一枚づつ脱がしていった。

先程見た、薫のヌードが頭を過った。

二人は抱き合い、お互いの体を求めあった。

薫は激しく悶え、二人は一つになり、そして孝雄に抱かれて逝った。

孝雄もその後を追うように薫の中で逝った。

 暫くして、薫は「明日、朝早いので、自分の部屋に戻ります」と言って、部屋に帰っていった。

孝雄も酔いが回って、そのまま寝てしまった。


 翌朝起きて、朝風呂に入り食堂にいったら、薫が「良く寝ることができましたか?」と聞いたら、

孝雄は「良く寝ることができました」と答えた。

暫くして、文乃さんも来て朝食にした。

 昼頃に文乃さんと秘境の湯、一本松たっこの湯を求めて出掛けることにした。

思っていた以上に迷い、やっとのことで黒湯温泉に着いた。

夕方に差し掛かっていたので、懐中電灯とバスタオルを持って、川沿いを歩いていくと温泉らしいところに着いた。

結構周りは岩だらけで、周りには誰もいなかった。

 早速、孝雄は温泉の近くの岩場に着ていた服を脱いで、温泉に入った。

お湯加減はよかったが、思っていたより浅く、寝るような形で入った。

文乃さんも周りに人が居ないことから、着ているものをすべて脱ぎ、そのまま温泉に入ってきた。

孝雄は一瞬ビックリしたが、文乃さんは「秘境の温泉にはよく入るし、タオルを温泉に入れないのが基本と聞いているので、いつも全裸で入っています」と答えた。

文乃さんは裸を見られてもあまり気にしてはいなかった。

文乃さんも孝雄と同じように寝るような感じで温泉に浸かった。入っているうちに、だんだん体も温まってきた。

少しのぼせ気味になり、温泉を出て少し風に当たっていた。

 孝雄は満月に照らされた中に文乃さんのヌードが見事に入り、非常に美しい光景を目にした。

文乃さんに「この光景をカメラに残したいのですがいいですか?」と聞いたら、

「いいですよ」といってくれたので、この光景を撮って残した。

文乃さんのヌードは無駄な部分がなく丸い月の中で美しく輝いていた。

そして、二人は再度温泉に浸かってこの地を後にした。

 薫さんに帰るのが遅くなることを伝えておいたので、夜、9時頃に夕食を済ませた。

その後に、旅館の風呂に入ったら、薫さんと文乃さんが湯に浸かって、今日行った温泉について色々話していた。

孝雄も思っていた以上にいい温泉だったことを薫に話した。孝雄は「今回はいい記事が書けそうだ」と薫に話した。

体が暖まり、三人はそのまま部屋に向かった。

 文乃さんが暫くして、部屋を訪れて「今日はどうもありがとうございます」とお礼を言ってきた。

その時に「撮った写真は掲載しないでもらいたいと言われ、やはり恥ずかしいのでお願いします」と言われた。

そう言って部屋を後にした。


 翌朝、朝風呂に入ったら、昨日来た人なのか、見知らぬ人が入ってきた。

孝雄はその女性に「井手孝雄といいます。温泉のルポライターをしています」と挨拶した。

女性は「今野まひるといいます。ひとり旅でここに来ました」

「楽しい旅になるといいですね」と孝雄が言った。

 風呂から上がって、食堂にいったら、薫さんから手紙をもらった。

文乃さんからで、

昨日の秘境の温泉は楽しかったです。またどこかで会えたら、道案内をよろしくお願いします。

短い間でしたが、ありがとうございました。

                          文乃

                                                                          

と書いてあった。

薫さんから「今日、朝早くこの宿を後にして出掛けていきました。きれいな人でしたね」そう薫さんが言った。

孝雄はその日の昼前にこの旅館を後にした。

帰るときに薫さんから「また、ここに来てください」と言われた。


 あれから、一月が立ち、庭に置いてある月下美人の花がつぼみをつけた。

そろそろこの花の咲く頃で、今日の夜は中秋の名月で夜を待った。

7時頃から大きな月が丸い姿を見せた。

それに会わせて、月下美人の花も開き、満月に、はまる月下美人の美しさはなんともいえなかった。

一月前に出会った文乃さんのヌードと月のように美しい光景だった。

それ以来、文乃さんからはなんの連絡も来なかった。


 文乃さんは月下美人の幻だったのか、、、、


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