2023-09-26

 研究のネタ出しを毎日やっていると詰まってくるので、午前中は文献整理に集中的に取り組んでいた。


 環境倫理系の本をちょっと読んでみたけど、やっぱりつまらない。キリスト教と環境倫理の関係を論じるのはいいけど、それが現実の環境保全にどうつながるのか、まるで筋道が示されていない。キリスト教が環境倫理的に問題があるからといって、人々に他の宗教を信じさせるわけにもいかないだろう。三〇年近く前の古い本だ。昔の大学の先生はこんな研究をしてお金をもらっていたのか。牧歌的な時代だったのだなあと思う。


 ノードハウスの『グリーン経済学』は目次だけみると面白そうだけど高い。原書の方がちょっと安いので、Kindleでサンプルを読み始めている。原書の方がサンプルのページ数が多いのがありがたい。環境経済学者の本だけど、倫理に対してもきちんと目配せしているみたいだ。環境倫理に関しては倫理学者よりもむしろ経済学者の方がきちんと地に足に着いた議論をしているように思う。買おうかなあ。原書でも2,500円もするんだよなあ。


 ロンボルグのBest Things Firstも面白い(これもサンプルで読んでる)。SDGsはぜんぜん成果が上がってなくて、2030年までにすべての目標を達成するのは絶望的だとのこと。コロナ前のペースを仮定しても、達成は半世紀後の2078年にずれこみそうだ。それは当たり前で、SDGsは地球上のあらゆる問題を2030年までに解決しようという極めて総花的なものになっている。本当はリソースをどこに割り当てるか優先順位を決めないとならない。しかしそうした優先順位付けをまったくしていないので、問題解決上の大きな非効率が発生している。だからきちんと優先順位を決めて限られたリソースを効率的に使っていきましょうというのがロンボルグの主張。SDGsは議論のダシとして使われていて、優先順位を決めるべきというのはロンボルグが昔からずっと言っている主張だ。面白いけど、これ以上読み進めるべきかどうか、悩むところだ。


 定例トライアル(金融の英日翻訳)の課題が出たので、午後は課題の内容を点検したり、雑に訳してみたり、関連する文献をKindleで購入して読んでみたりしていた。PEファンドというのがテーマで、YouTubeで解説動画がないか探してみたけれど、PEファンドは給料が良いみたいな下品な動画ばかりなのでやめた。経済学の知識が多少あるので金融翻訳はそこそこ得意なのだけど、金融の世界っていまいち好きになれない。どの登場人物にもまったく共感できない映画を観ているような気分だ。でもその一方で、金融の勉強をすればするほど、根本的なところで世界を動かしているのは金融なのだという確信が強まってきている。


 食後はAmazonプライムでヒッチコックの『見知らぬ乗客』を途中まで観た。最近白黒映画ばかり観ている。昔の映画を観ると、人間が今よりずっと動物っぽいことに気づく。理性がかなり弱くて、みんな感情に振り回されてる感じだ。この作品には不謹慎なことを言うのが好きな人物が二人出てくるのだけど、二人とも、周りからどれだけ止められても不謹慎なことを言うのを止められない。理性のタガが外れている。今ならちょっと頭のおかしい人のようにも見えるのだけど、当時はこういう人が今よりもっと多かったのかもしれない。


 ジャンププラスで『コレクターイズデッド』という新連載が始まっていたので読んでみた。荒削りで説明不足なところも多いけど、いいんじゃない? 独特の空気感はあると思うよ? とか思ったけれど、コメント欄は大荒れだった。意味が分からない、よくもこんなものを連載することにしたな、編集部はちゃんと仕事しろ、みたいな敵意に満ちたコメントが上位を占めていた。でも、新着コメントの方を中心にみていくと、割と好意的なコメントが多い。ジャンププラスのコメント欄は、公開されてすぐにコメントした方が「いいね」をもらいやすい。「いいね」をたくさんもらうと上位に表示されるようになり、そういうコメントは目立つのでますます「いいね」をもらえるようになる。つまり、脊髄反射ですばやく書かれたコメントほど上位に表示されてしまうという、作家にとってはあまり好ましくないシステムになっているのだ。システムのせいだ、とは頭でわかっていても、もやもやしてしまう。自分がこの作品の作者だったら、しばらく寝込むと思う。でも、週間連載だから寝込んでいる暇なんてないのだ。


 脊髄反射で書かれたコメントが上位に来てしまうからといって、脊髄で生きている人たちのために作品を書くなんて馬鹿馬鹿しいことだ。「こんなの連載して大丈夫?」と読者が心配してしまうような作品を連載してしまうのがジャンプの文化だと思う。


 寝る前に瞑想を十分。これだけのことで不安がかなり軽減されるのが不思議だ。

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