第31話 沢山の人に見送られて~アレック視点~

王都を旅立つ日。


「グディオス、今まで本当にありがとう。どうかこれからも、革命軍の幹部、そして総裁として、この国を支えて行って欲しい。グディオスならきっと、立派な総裁になると俺は信じているよ」


「アレック…本当に行ってしまうのだな。大丈夫だ、お前が思い描き、作りだした平民たちが主役の国を、これからも俺が維持していく。だからどうか、故郷で安心してミレイちゃんと暮らしてくれ。それから、結婚式には必ず呼んでくれよ」


「ありがとう、グディオス。グディオスに出会えて、本当に俺は幸せだったよ」


「俺だって…アレック、本当にありがとう。アレックは最高の親友だ」


グディオスと抱き合う。5年もの間、命をかけ共に戦ったグディオス。そんなグディオスは、俺にとって今や家族の様な存在。そう思ったら、自然と涙が込みあげてきた。


スッと涙をぬぐう。


「それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。皆、グディオスの事をどうか支えてやって欲しい。それじゃあ」


「アレック元総裁、どうかお元気で」


「元総裁、今まで本当にありがとうございました」


皆が泣きながら俺に挨拶をしてくれる。俺の為に泣いてくれるだなんて…


「お前は気が付いていないかもしれないが、皆お前の事を慕っていたんだよ。革命軍の人間だけではない。ほら、平民たちも」


ふと宮殿の門の方を見ると、そこにはたくさんの平民たちが集まっていた。ミレイの恩人でもある、ルイーザさんもいる。


「アレック元総裁、平和な国を作って下さり、ありがとうございました」


「どうかご婚約者の方と、お幸せに」


「ミレイちゃんは本当にいい子です。今度こそ、幸せにしてやってくださいよ!!」


平民たちが次々に声を掛けてきてくれた。中にはミレイと知り合いなのだろう。ミレイの名前を出してくる人もいる。


「アレック元総裁、今度こそミレイちゃんを幸せにしてあげて下さいね。これ、ミレイちゃんの大好きだったパンです」


「ありがとうございます。ルイーザさん。それでは皆さん、色々とお世話になりました」


馬車に乗り込み、駅まで向かう。どうやら俺が総裁を降り、故郷に帰るという事を聞きつけた多くの住民たちが、見送りに来てくれた様だ。群衆は駅までずっと続いていた。駅にも沢山の人が俺を見送ってくれる。


「元総裁、どうかお元気で」


「あなた様のお陰で、私たちは人間としての当たり前の生活を送る事が出来る様になりました。本当にありがとうございます」


「「「元総裁、本当にありがとうございました。どうかお気をつけて」」」」


こんな俺の為に、沢山の人が見送ってくれるだなんて…


気が付くと、涙が溢れていた。約5年半前、この地に初めて降り立った時は、たった1人だった。知り合いもいなかった。そんな中、グディオスに出会い、そして革命軍に出会えた。


ミレイに会えなくて心が折れそうになった事もあった。貴族たちに追い詰められ、死を覚悟したこともあった。それでも俺を支えてくれる仲間と共に、必死に戦って手に入れた平民たちが自由に暮らせる国。


俺が思い描いた理想の国が、今目の前にある。それが嬉しくてたまらない。


でも…


それ以上に俺は、ミレイを愛している。俺の我が儘を文句ひとつ言わずに聞き入れてくれたグディオスや革命軍の皆。それにこの国の民たち。


彼らの気持ちに応えるためにも、俺は今度こそミレイを幸せにして見せる。


5年のも間ミレイを放置したうえ、1ヶ月もの間酷い虐めを受けていたミレイに気が付かずに、ついには故郷に追い返す結果になってしまった。ミレイはもしかしたら、俺の顔なんてもう二度と見たくないかもしれない。


他の男との結婚を考えているかもしれない。それでも俺は、ミレイが大好きだし、何よりミレイがいないと生きていけない。


頼む、ミレイ。


もう一度俺にチャンスをくれ。


今度こそミレイを幸せにするから!




※長くなりましたが、次回、ミレイ視点に戻ります。

よろしくお願いします。

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