第29話 あいつらに下された判決~アレック視点~

宮殿に着くと、すぐにクリストさんから話を聞いた。どうやら革命軍の人間の中に、あの女とまだ繋がっている人間がいた様で、その人間からあの女を紹介されたとの事。


口が上手く美しいあの女にすっかり騙されてしまったと、申し訳なさそうに話してくれた。その後クリストさんの情報を元に、あの女に協力していた革命軍の人間にも事情を聞いた。


どうやら彼は、あの女が好きだった様で、あの女の力になりたいと考えたらしい。ただ、今回の事件を聞いて


「総裁、副総裁、本当に申し訳ございませんでした。私の浅はかな行動のせいで…」


そう言って涙を流していた。彼自身は、単純にクリストさんにあの女を紹介しただけで、特に今回の事件に関わっていなかった為、不問にした。


そしてあの女に対する尋問が行われた。俺もモニター越しで、あの女の様子を見守る。すると


“どうして私が捕まらないといけないよの!私が一体ないのをしたと言うの?”


と、最初はしらを切っていたが、俺の家での映像を見せると、観念したのか


“あの女が悪いのよ。たいして可愛くないくせに、アレック様に愛されて…私はあの女のせいで、アレック様も王都での悠々自適な生活を奪われたのよ!第一あの女が、総裁の妻なんておかしいでしょう?あんな田舎娘が。だから思い知らせてあげただけ、現実をね!”


そう開き直っていた。


何が現実を思い知らせてやっただ!あの女の嘘のせいで、俺とミレイはどれほど傷ついたか。怒りからか、拳を強く握りしめる。そんな俺を見たグディオスが


「クリミアが本当にすまない。ここまでどうしようもない人間だっただなんて…俺はあんなのが血のつながった従兄妹だと思うと、恥ずかしくてたまらない。アレックにも合わせる顔がないよ」


そう呟いていた。


「グディオスのせいではない。それにグディオスは、命をかけて王族たちと必死に戦っていたじゃないか。グディオス、どうかこれからもこの国の為に、革命軍の幹部として引っ張って行ってくれよ」


グディオスがいたから、俺は革命軍に入れたし、何より王族たちを倒すことが出来たんだ。俺は今でも、グディオスの事を信頼しているし、大切な人だと思っている。


グディオスの為にも、早くこの問題を解決しないと!


その後も調査を進めていった。全ての証拠がそろったところで、あの女と元使用人たちの裁判が行われた。どうやら今回の件、平民たちにも話が伝わった様で、裁判所にはたくさんの平民が訪れていた。


より公平な裁判をするため、裁判所は一般人にも公開しているのだ。そして皆が見守る中、判決が読み上げられた。


元使用人たちは、ミレイに対する暴行罪及び窃盗罪が適用、ミレイに対する慰謝料及び盗んだ品と同じ金額の返金義務が言い渡された。


そしてあの女だが、俺の家に無断で入った不法侵入罪と元使用人たちと同じく窃盗罪が適用。同じく主でもある俺に対する慰謝料と、盗んだ品と同じ金額の返済義務が命じられた。


罪自体はそこまで重くはないが、返済義務の金額が非常に大きい。今持っている全財産を売り払っても、とても払いきれる金額ではない。ちなみに我が国では逃亡防止のため、返済義務が完了するまでは、監視員の監視の中、労働施設で働きながら返済を行う事になっている。


被害者が泣き寝入りする事がない様に、一旦全額を労働施設側が建て替えるため、返済は労働施設側に行う形になっているのだ。


ただ返済が滞らない限り、休みの日には監視付きではあるが、街に買い物に行く事も出来るため、比較的自由に過ごすことができる。


ただしこいつらの場合、自由に過ごすことは難しいだろう。今回の裁判で英雄でもある俺に行った仕打ちに対し、国民たちはかなりの怒りを買っている。


現に罪が軽すぎる、英雄になんて酷い事を!と、怒りが爆発した市民たちが、元使用人やあの女に殴りかかろうとしたり、ものを投げたりするシーンもあり、護衛たちで必死に止める一幕もあった。


彼らは完全に、市民を敵に回してしまったのだから。


真っ青な顔をしながら、護衛たちに連れて行かれる元使用人とあの女。正直あいつらがミレイにした仕打ちを考えると、この程度の罪で終わる事が、悔しくてたまらない。でも、俺は権力を使って、あいつらに地獄の苦しみを味合わせる事はしたくない。


そんな事をしたら、貴族や王族と同じになってしまうから。それでもどうか、彼らが少しでもミレイにした仕打ちを反省してくれたらと、俺は考えている。


「アレック、とりあえず片付いたな。でも…ミレイちゃんの事を思うと、お前もやりきれない気持ちもあるだろう。ただ、もうあいつらは労働施設から生きて出てくることはないだろうし、出て来てもろくな生活は送れないだろう。クリミアももう二度と、アレックやミレイちゃんに絡んでくることはないだろうし。やっとこれで、ミレイちゃんを迎えに行けるな」


ミレイを迎えに行ける…


いいや、まだだ、俺にはまだやらなければいけない事がある。その事をやらずして、ミレイを迎えに行く事なんて、あり得ないのだから…



~あとがき~

その後の元使用人とクリミアについて

※残酷な表現が出て来ますので、苦手な人はスルーして下さい。










その後、労働施設に移送されることになった元使用人たちとクリミアだったが、移送中待ち伏せていた市民たちに襲撃されます。

必死に命乞いをする元使用人とクリミアだったが、英雄でもあるアレックにした仕打ちが許せなかった民たちによって、撲殺される事になったのだった。

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