第28話 クリミアさんを捕まえろ~アレック視点~
クリミアさんが住んでいる場所へと向かうと、そこはとても立派な屋敷だった。
「グディオス、どういう事だ。どうしてクリミアさんはこんな立派な屋敷に住んでいるのだ!」
「俺にも分からない…とにかく行ってみよう」
屋敷を訪ねると、使用人が出て来た。どうやら使用人まで雇っている様だ。すぐにクリミアさんを呼ぶ様に伝えると、1人の男性が出て来た。
「あなた様たちは、アレック総裁とグディオス副総裁ですね。クリミアに会いに来てくださったのですか?どうぞ、中へ」
「いえ、こちらで結構です。急に押しかけて申し訳ございません。実はクリミアに逮捕状が出ておりまして。あの、失礼ですがあなた様は?」
グディオスが男性に尋ねた。
「クリミアの恋人です。あの…クリミアとグディオス副総裁は従兄妹で、兄妹の様な関係とお伺いしました。その…いずれ私をグディオス副総裁の右腕にして頂けると、クリミアには聞いていたのですが…」
「兄妹の関係ですって?クリミアは普段から非常に我が儘で、革命軍の人間を顎で使ったりしていたうえ、ここにいるアレック総裁の最愛の恋人に嘘の情報を流し、引き裂こうとした事から、俺はクリミアと縁を切り、手切れ金を渡して故郷に帰らせたのです。王都には二度と足を踏み入れない、もし踏み入れたら、タダでは置かないと約束させて」
「そんな…クリミアの話とは全然違います。私はクリミアがグディオス副総裁の従兄妹で、副総裁から寵愛されていると聞いたから、この屋敷にも住まわせ、お金も与えていたのに…その様な関係だっただなんて…」
男性ががっくりと肩を落としている。そもそも、あんな女の言う事を真に受けるだなんて、この男も愚かだな…て、一番愚かなのは俺だが。
「それで、クリミアさんはどこにいるのですか?彼女は俺の屋敷に勝手に侵入し、使用人と共に、俺の恋人の私物を売り払ったのです。窃盗及び不法侵入罪で、逮捕状が出ているのです」
「何と…総裁のお屋敷に無断で侵入し、恋人の私物を売りさばいただって…なんて恐ろしい女なんだ。おい、今すぐクリミアを連れて来てくれ!あの…私はあの女に騙されていたのです。どうか、どうかお許しを」
自分に火の粉が被ると思ったのか、必死に俺たちに頭を下げる男性。
「ええ、分かっております。あなたに何の罪もない事は。ただ、色々とお話を伺いたいのですが、協力して頂けますでしょうか?」
「ええ、もちろんです。何でも協力させていただきます!」
そんな話をしているうちに、クリミアさんがやって来た。
「一体何の騒ぎ…あら?グディオス兄さん、それにアレック様も。もしかして、私を迎えに来てくださったのですか?」
何をどうしたら、俺たちがこの女を迎えに来たという発想になるんだ…でも、ある意味迎えに来たのだから、正解と言えば正解だな。
「クリミアさん、あなた様は我が家に勝手に侵入し、俺の大切なミレイのものを勝手に売り払った罪で、逮捕状が出ています。俺たちと一緒に、来てもらいましょう」
「一体何のことですか?私はその様な事は…」
「俺の屋敷には、監視用の撮影機が至る所に設置してあったんだ!貴様がミレイの部屋で、やりたい放題している映像がバッチリ残っているんだよ!もう言い逃れは出来ない。さっさと来い」
「痛い!女性になんて乱暴な事をするのですか?そもそもあなた様の家の使用人たちの許可を取って、屋敷に上げてもらったのですわ。ですから…」
「使用人たちも既に逮捕され、今地下牢で尋問を受けているところだ。クリミア、頼む。これ以上俺に恥をかかせないでくれ。クリミアに縄を」
グディオスの指示で、近くに控えていた革命軍の人間があの女に縄をかけ、そのまま連行していく。
「待って!私は悪くないわ。クリスト、あなた私の恋人でしょう?早く助けなさいよ!」
近くにいた男性に向かって、あの女が叫んでいる。
「悪いが君の様な人間には、もう関わりたくはない。第一私は、君がグディオス副総裁と親類関係にあると聞いたから、屋敷に置いていただけだ。まさか、犯罪者だっただなんて。もう二度と、私の前に現れないでくれ!」
「そんな…アレック様…」
この家の主の男性にも拒否されたあの女は、何を思ったのか俺を見つめて来た。そんな女を、鋭い目つきで睨みつける。俺はお前を絶対に許さない!そんな思いで。
「クリミアも捕まったし、俺たちも宮殿に戻ろう。クリストさんとおっしゃいましたね。申し訳ないのですが、お話しを聞きたいので、宮殿までご同行願えますでしょうか?」
「はい、もちろんです。先ほども申し上げた通り、私はあの女に騙されていたのです。ぜひ協力させていただきます。それから、あの女が使っていた部屋も、ぜひ調査してください。革命軍の皆様を、あの女の部屋に案内してやってくれ」
すぐにクリストさんが、使用人たちに指示を出している。どうやら本当に全面協力をしてくれる様だ。
そんなクリストさんと一緒に、俺たちは宮殿へと戻ったのだった。
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