第26話 俺がバカだった~アレック視点~

早速映像を確認する。


「これは一体どういう事だ?」


そこには、ミレイに酷い暴言を吐き、ミレイを追い出している使用人たちの姿が映し出されていたのだ。さらに、ミレイの母の形見でもある、ブローチも使用人によって捨てられていた。


その上、ミレイが出て行った後、クリミアさんも加わり、祝杯を挙げる使用人たち。さらに、ミレイの為に買い与えたドレスや宝石たちを次々と持ち出している。


「これは酷い…もしかしてミレイちゃんは、使用人たちからずっと酷い仕打ちを受けていたのではないのか?」


グディオスが言った通り、ミレイは使用人たちに酷い仕打ちを受けていたのかもしれない。そう思い、過去の映像を遡ってみてみる。その映像は、俺にとって見るに堪えがたい映像の数々だった。


「なんて事だ…ミレイがこんな酷い目にあっていただなんて…俺は一体、ミレイの何を見ていたのだろう…」


俺はミレイを幸せにするためにこの屋敷に連れて来た。でもミレイは、1ヶ月もの間、使用人たちに酷い仕打ちを受け、地獄を味わってきたのだ。食事もろくに与えられず、やせ細っていったミレイ。そんなミレイの傍にいながら、全く気が付かないだなんて…


ミレイは人を悪く言う事を極端に嫌う。たとえ自分が酷い虐めを受けていたとしても、きっと俺に言いだせなかったのだろう。たった1人で、虐めに耐えていたのか…


その上、この使用人たちは、皆クリミアさんの息のかかった者たちだっただなんて…俺はなんて酷い事を…


「グディオス、今すぐここにいる使用人たちを捕まえてくれ。こいつら、絶対に許さない…」


「もちろんだ!お前の屋敷で何かが起こっていると踏んで、既に革命軍の人間を屋敷の外に配備していたんだ。誰1人屋敷の外に出すなと伝えてあるから、大丈夫だろう。それにしても、まさかクリミアの指示だっただなんて。そう言えば、お前の家のメイドを手配したのは、クリミアだったな。いい使用人がいるからと言って」


そう言えばそうだった。俺は使用人などには疎いから、あの女が気を利かせて手配してくれたのだった。その事をすっかり忘れていた。俺は本当に、大バカ者だ…


一番大切にしたい人物を傷つけ、ボロボロにしたのだから…


「この映像、もっと細かく調べたいから、革命軍の本部に持って行っていいかい?」


「ああ…問題ない。とにかく一刻も早く、使用人全員を捕まえて、ミレイの母親の形見を取り返さないと!それから、クリミアさんは今、王都にいる様だ。彼女からも話を聞かないと」


「その様だな。アレック、本当にクリミアがすまない。俺が情けを掛けて、大金をあの女に渡したことが良く無かった様だ。とにかく、クリミアと使用人たちの方は俺に任せてくれ。お前はミレイちゃんの方を」


ミレイ…


俺のせいで身も心もボロボロにされ、出て行ったミレイ。もう俺には愛想をつかしているだろう。でも俺は、ミレイが大好きだ。ミレイ意外と結婚するつもりはない。とにかくミレイに会って、謝らないと!


多分ミレイは、以前お世話になったパン屋さんにいるはずだ。でも、俺のせいで母親の形見を捨てられてしまった。形見のブローチだけは取り戻さないと。


部屋を出ると、革命軍によって使用人たちが捕まっていた。皆自分たちが何をやったのか理解できている様で、ガタガタ震えていた。


「アレック様、私はこの使用人たちとは違い、アレック様に忠誠を使った人間です。ですから、どうかご慈悲を」


俺に向かって必死に訴えてきたのは、俺の執事だ。


「それならどうして、他の使用人がミレイを虐めているのを見て見ぬふりをしていたんだ?俺にとってミレイは、誰よりも大切な人間だと知っていただろう。それなのにお前は、俺を裏切った!」


「裏切ってなどおりません。私はあの女性では、アレック様の奥様には役不足だと判断したのです。ですから…」


「黙れ!ミレイのどこが役不足と言うのだ!ミレイは俺にとって、誰よりも大切な人間だ。それなのにそんなミレイを傷つけ、追い出すだなんて。俺はお前たちを絶対に許さない!この家の主でもあるミレイのものを無断で捨てたり、売りさばいたりした証拠はある。これは立派な犯罪だ。それからそこのお前、ミレイの母親の形見のブローチは一体どこにやったんだ?」


スッと剣を抜き、女の喉元に突き当てた。


「お…お許しを…ブローチならゴミ箱に捨てました…」


「ごみ箱に捨てただと?あのブローチが、ミレイにとってどれほど大切な物か知っているのか?ふざけるな!」


確かこの屋敷には、ゴミを集めている場所があったな。多分まだあそこにあるはずだ。急いでゴミ収集場所に向かい、ゴミの中をあさっていく。


「総裁、おやめください。総裁がゴミをあさるだなんて」


必死に止める部下たちを無視し、ゴミをあさり続ける。すると、部下たちもゴミをあさり出したのだ。俺の為に、申し訳ない。


必死にゴミをあさっていると…


「あった…これだ…」


間違いない、ミレイがいつも大切に付けていたブローチだ。すぐにブローチを洗い、ゴミを落とす。


「皆、ありがとう。ゴミをあさらせてしまって、すまなかったな」


「そんな、お礼なんて不要です。それよりも、早くミレイ様を迎えに行ってあげて下さい。あの悪党どもは、我々が責任を持って牢に連れて行きますので」


「ありがとう、それじゃあ、行ってくる」


ミレイ、本当にすまない。俺はミレイを幸せにするどころか、逆に苦しめ傷つけてしまった。本当に自分のバカさ加減が嫌になる。


とにかくミレイに会いたい。会って謝りたい!そんな思いで、急いでパン屋へと向かったのだった。

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