第25話 ミレイが再びいなくなった~アレック視点~

「アレック、大丈夫か?さっきからずっとボーっとして。ミレイちゃんと3日間会えないのが、そんなに辛いのか?」


ミレイが見つかってから早1ヶ月、毎日忙しくて全くと言っていいほど、ミレイと一緒にいられない。そして今日から、3日間家を空けるのだ。


ただ…


「イヤ…ミレイが最近、急激に痩せた気がして。元気もないし、何か嫌な事があったのかなって思って。それに俺が3日間家を空けると言ったら、物凄く悲しそうな顔をしていたし。なんだか胸騒ぎがするんだ」


そう、ミレイはこの1ヶ月で、急激に痩せてしまった。心なしか、元気がない。まるで亡くなり前の両親の様で、俺は不安でたまらないのだ。


「彼女はずっと平民として暮らしていたから、豪華な生活が慣れないのだろう。ただ、急激に痩せたというのは気になるな。もしかして、何かの病気なのか?」


「分からない。ただ今日、使用人にミレイを医者に見せる様に頼んである。この地方視察が終わったら、ミレイとの時間を作るため、少し休暇が欲しいのだが、いいかな?」


「もちろんだ、アレックはずっと働き詰めだっただろう?ミレイちゃんもきっと、寂しがっているはずだから、ゆっくり過ごすといい。アレックとミレイちゃんには、クリミアの事で散々迷惑を掛けたしな」


グディオスは未だにクリミアさんの事を、申し訳なく思っている様だ。


「それじゃあ、さっさと視察を終わらせて、ミレイの元に帰ろう。グディオス、協力頼むぞ」


「ああ、もちろんだ」


その後グディオスの協力の元、無事3日間の視察を終えた。そして急いで宮殿へと戻ってきた。本来ならすぐにでも屋敷に戻りたいのだが、宮殿で報告書を仕上げないといけないのだ。さっさと報告書を仕上げて、ミレイに元に戻らないと!


そんな思いで、俺とグディオスは宮殿へと戻ってきた。


すると


「アレック総裁、ミレイ様とおっしゃられる方から、手紙を預かっております」


「ミレイから手紙だと?」


俺の元に手紙を持った護衛が現れたのだ。一体どういう事だ?なんでミレイが、わざわざ宮殿に手紙を持って来るのだ?意味が分からない。


「おい、アレック。どうしてミレイちゃんが、わざわざ宮殿に手紙を届けるんだよ。一体何があったんだ?」


「俺にも分からない。とにかく、手紙を確認してみないと」


急いで手紙を開ける。この字は、間違いない。ミレイの字だ。


そこには、この1ヶ月あの屋敷で生活してみて、自分とは住む世界が違うと感じた事。やはり平民として働きながらひっそりと暮らしたい事。俺とは住む世界が違うと感じた事。もう屋敷では暮らせないから、屋敷を出るという事が書かれていた。


そして最後に


“どうか私の事は忘れて、クリミア様と幸せになってください。私もアレックの事は忘れて、幸せになります。さようなら、アレック”


そう書かれていた。


「そんな…ミレイ…一体どうして…」


俺はショックでその場に座り込んだ。そんな俺の手紙を奪い、読み始めるグディオス。


「大丈夫か?アレック。それよりも、どうしてここでクリミアの名前が出てくるんだ!」


「分からない…ただ、ミレイは再び俺の元を去ってしまった…俺は一体何を間違えてしまったのだろう…」


気が付くと、涙が溢れ出した。俺はただ、ミレイに喜んで貰いたかっただけなのに。ミレイにはもう二度と苦労を掛けたくなくて、必死に頑張って来たのに。


「しっかりしろ!とにかく、一度お前の屋敷に戻ろう。そう言えばお前の屋敷には、監視用の撮影機が仕掛けられていたよな。もしかしたらお前が留守の間にクリミアが来て、何かを言ったのかもしれない。至急確認しよう」


頭が真っ白な俺を連れ、グディオスが俺の屋敷へと向かった。屋敷に着くと


「アレック様、ミレイ様が出ていかれました。申し訳ございません、私たちは止めたのですが」


申し訳なさそうに、頭を下げる使用人たち。


「知っているよ。それより、ここにクリミアという女性が訪ねて来なかったかい?」


グディオスが使用人たちに問いかけている。


「いいえ…その様な女性は…」


「そうか。それよりも、すぐに監視用の撮影機の映像を確認しよう。きっとクリミアが何かしでかしたに違いない」


グディオスが俺を連れて部屋に向かおうとした時だった。


「お…お待ちください。監視用の撮影機とは?」


血相を変えて使用人たちが話しかけてきたのだ。かなり動揺している様だ。


「この屋敷には、いたるところに監視用の撮影機を設置してあるんだよ。ミレイが屋敷を出ていくきっかけになった原因も、映されているかもしれないからな」


「そんな…ミレイ様はきっと、この豪華な生活が嫌になったのでしょう。わざわざ映像を確認する必要はありません」


なぜか必死に訴えてくる使用人たち。こいつら、何かを隠している。


そう確信した俺は、すぐに自室に戻り、映像を確認する事にしたのだった。

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