第16話 アレックとの再会です
初めて宮殿に入ったが、とても豪華だ。ここがかつて王族たちが暮らしていた場所なのね。ただ、あちこちで工事が行われている。
「こちらでしばらくお待ちください」
立派な部屋に通されると、案内してくれた人は出て行ってしまった。
「凄い豪華でしょう?でも今後は、政治を執り行う場として作り直しているそうよ。革命軍の幹部の皆様は、ほとんどが各自屋敷を建てて、そこで生活をしていらっしゃるのですって」
ルイーザさんが教えてくれた。ルイーザさんの話では、昨日色々と世間話もしたとの事。革命軍は平民の為の平民による政治を目指している様で、いずれは総裁なども、平民による選挙で決めていく方向で話が進んでいるらしい。
「自分の様な人間にもこうやって内部の話をして下さるだなんて、革命軍の方たちは本当に素敵な方たちばかりだわ」
そう言ってルイーザさんが笑っている。そう言えば私が初めて宮殿を訪ねた時も、私を雑に扱う門番に、革命軍の方が怒っていた。きっと市民をとても大切に思っているのだろう。
そんな事を考えていると…
「失礼いたします。総裁がお見えになりました」
ドアが開いたと思ったら、ゆっくりと部屋に入って来る男性。間違いない、アレックだわ。
「ミレイ…ミレイ!!」
「アレック、久しぶり…」
有無も言わずに私に抱き着くアレック。久しぶりの再会で感極まっているのか、ギューギュー抱きしめてくる。さすがに苦しいわ。
「アレック…ぐるじい…」
「あぁ…本当にミレイなのかい?よかった、生きていてくれて本当によかった!もう二度と離さないから。ミレイ…俺のミレイ…」
私の苦しみを全く分かっていないのか、さらに強く抱きしめるアレック。もうダメ…
「アレック、落ち着け。ミレイちゃんが死にそうだ!」
近くにいた男性が、アレックを引き離そうとしているが、離すまいと必死に抱き着くアレック。ただ、少し力が弱まったため、息を吸う事が出来た。
「はぁ…はぁ…死ぬかと思ったわ…」
相変わらずバカ力は健在のようだ。ただ…私を殺しにかかるのは、勘弁して欲しい。
「すまない、ミレイ。君に会えたのが嬉しくて、つい強く抱きしめてしまった」
「大丈夫よ…それよりもアレック、久しぶりね。なんだかやつれている様だけれど、大丈夫?」
5年前よりも大人びた顔をしているアレック。体つきも随分とがっちりした。
「ミレイもこの5年で、随分と綺麗になったね…ミレイ、色々とすまなかった。まずは謝罪をさせてくれ」
なぜかアレックが私に向かって頭を下げたのだ。
「アレック、謝るのは俺だ。ミレイちゃん、うちの従兄妹が本当にすまなかった。ミレイちゃんに嘘の情報を流すだなんて。そのせいで、色々と苦労を掛けただろう。本当に申し訳ない」
なぜか隣の男性も必死に頭を下げている。
「あの…一体何のことでしょうか?」
言っている意味が分からず、聞き返す。すると
「クリミアがアレックと恋仲だと聞いていたと思うが、それは根も葉もない嘘なんだよ。アレックはずっと君の事を思い、あの時も自らミレイちゃんを迎えに行くと言っていたのだが…俺がクリミアに使いに行くように指示したんだ。まさかクリミアが君にあんな嘘をつくだなんて、本当にすまなかった」
隣の男性が、深々と頭を下げた。
「それじゃあ、アレックとクリミア様が婚約すると言う話は…」
「大嘘だよ。俺はミレイ以外の人間と、人生を共に歩んでいくつもりはない。ミレイ、俺が自らミレイを迎えに行かなかったばかりに、ミレイには苦労させてしまってすまなかった。それでミレイは、今までどうしていたのだい?」
「私は、アレックに会いに宮殿にやって来たのだけれど、会う事が出来なくて。それで諦めて帰ろうとした時に、荷物を全て取られてしまって。途方に暮れている中、ここにいるルイーザさんに助けてもらって、今まで彼女の家でお世話になっていたのよ。そんな中昨日、宮殿で私を探しているとルイーザさんに教えてもらって、それで今日来たの」
「あなたは確か、昨日美味しいパンをとどけてくださった方ですよね。まさかミレイの命の恩人だっただなんて。その上ミレイを宮殿まで連れてきてくださったのですね。ありがとうございます、何とお礼を言ったらいいか。本当にありがとうございます」
アレックが何度も何度もルイーザさんに頭を下げている。
「頭を上げて下さい。私の方こそ、あなた様達のお陰で、両親は強制労働施設から出る事が出来たのです。本当にありがとうございました」
ルイーザさんまでアレックに何度も何度も頭を下げている。
「アレック、ルイーザさんも、もう頭を上げて。ルイーザさん、今日この場所に私を連れてきてくださり、本当にありがとうございました。お陰でアレックにも会えましたわ」
改めてルイーザさんにお礼を言った。彼女がいなかったら、私はきっとアレックに会う事はなかったかもしれない。それどころか、今頃生きていられたかどうかも分からないのだ。
「もう、ミレイちゃんまで。でも、よかったわね、ミレイちゃん」
そう言ってルイーザさんが少し照れ臭そうに笑ったのだ。ただ、なぜだろう。なんだか悲しそうな顔をしている様な気がするのだが…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。