第12話 ミレイは一体どこに行ってしまったんだ~アレック視点~

早速ミレイの捜索を開始した。俺も自ら街に出て、ミレイを探す。ただ…この国の王都には、とてつもないほど沢山の人が住んでいる。その上、治安もかなり悪い。


もしかしたら、もうナリーシャ村に帰っているかもしれない。そう思い、おばさんに連絡を入れてみたが


“まだ帰って来ていないよ”


との返事が。おばさんにミレイが行方不明になった事を伝えると


“私が王都に行くように強く言ったからだ。私のせいでミレイちゃんが…”


と泣き出してしまった。どうやらおばさんとリマが、ミレイの背中を押したらしい。おばさんやリマのせいじゃない。俺があんな女に使いを頼んだのがいけなかったんだ。誰よりも大切なミレイ、公務なんかよりもずっと大切な存在なのに…それなのに俺は、公務を優先してしまった。


それから毎日、おばさんから通信が入る様になった。通信が入るたびに、もしかしたらミレイが村に…と思ったが、ミレイが見つかったかどうかの確認の連絡だった。おばさんも相当ミレイの事を心配している様だ。


おばさんの話では、ミレイは帰りの運賃分も準備して行ったらしい。それなのにまだ村に帰っていないという事は、何らかの事件に巻き込まれたに違いない!


ミレイ…どこにいるんだ?今頃辛い思いをしていないだろうか?


ミレイの事を考えると、胸が張り裂けそうになる。それでも俺は総裁だ。必死に公務をこなし、空いた時間でミレイを探す。


そんな日々を過ごす事1ヶ月。俺以外にも沢山の人がミレイを探してくれている。特にデイズに至っては、かなり責任を感じている様で、誰よりも必死に探してくれている。


決してデイズのせいではない。俺が愚かだったんだ…


こんな愚かな俺が、このまま総裁なんて続けていていいのだろうか?ミレイ1人幸せに出来な俺が、人々を幸せに出来るのだろうか?


俺は総裁なんてガラじゃない…


「グディオス、それから皆。悪いが俺は、総裁の座を降りるよ。正直俺は、総裁なんてガラじゃなかったんだ。俺はたった1人、守りたい女性を守れなかった。それに今の俺には、とても公務は務まらない」


俺は悩んで悩んで悩み抜いた結果、ついに革命軍幹部会で総裁の座を降りる事を伝えた。


「アレックは誰よりもこの国の為に尽くしたじゃないか。アレックほど総裁の座にふさわしい人物はないよ。それから…クリミアの事、本当にすまなかった。クリミアさえ変な事をしなければ、今頃アレックは、愛するミレイちゃんと一緒にいられたのにな…全て俺の責任だよ。アレックが総裁を降りるのなら、俺も副総裁を降りる」


あの女はグディオスによって故郷に送り返されたらしい。最後まで抵抗していたらしいが、グディオスが剣を突き付け“ここで死ぬか故郷でひっそり暮らすか選べ”と言ったら、大人しく帰って行ったらしい。


本当に憎たらしい女だ。


「総裁と副総裁が降りられるだなんて。今国は少しずつ纏まりかけているのです。それはお2人の人望があってこそ。どうかお2人とも考え直してください。ミレイ様の捜索に関しては、今まで以上に力を入れましょう。もしかしたら人さらいに連れて行かれているかもしれません」


「総裁、ミレイ様捜索に関してですが、懸賞金を出すのはいかがでしょうか?万が一、人さらいに連れて行かれていたとして、高額な懸賞金を出せば、人さらいもミレイ様を差し出すかもしれません」


「それはいい考えだ。アレック、やれる事はやろう。懸賞金は俺が準備する。俺のせいで、ミレイちゃんは行方不明になってしまったのだから…」


「わかったよ。でも、金は俺の方で準備するよ」


結局俺は、総裁の座を降りる事は出来なかった。こんな俺を、皆が慕いミレイ捜索に協力してくれるだなんて。本当に有難い。


俺もいつまでも落ち込んでいる訳にはいかない。ミレイが生きていると信じて、とにかく必死に働いた。そして自らビラをまき、ミレイの行方も追う。


「アレック、いい加減食事をしっかりしろ。それから、ゆっくり休んでくれ。ミレイちゃんがいなくなってから、ろくに寝ていないし、食事もほとんどとっていないだろう?お前が倒れたら、元も子もない」


そうグディオスに言われたが、正直食事なんてとる気にもなれないし、ゆっくり眠る事が出来ない。目をつぶると、最後にあったミレイの顔が浮かぶんだ。俺に行かないで欲しいと、必死に訴えているミレイの顔が…


懸賞金を出して、1ヶ月が過ぎようとしていた。未だミレイが現れるどころか、手がかりすらない。


俺たちが提示している情報は、ミレイと言う名前、18歳という年齢、ナリーシャ村出身で金色の髪で紫色の瞳をしているという事しか情報がない。せめて今のミレイの似顔絵でもあれば、まだいいのだが…生憎俺は、5年もミレイに会っていない。今ミレイがどんな姿なのか分からないのだ。


ただ、皆お金目的なのか、毎日沢山の女性が宮殿へとやって来て、“私がミレイです”と訴える。中には小さな子供や、老婆までいた。


「アレック、こう毎日沢山の女性が来ては対応も大変だ。一旦懸賞金は取りやめよう。引き続き、捜索は続けるつもりだが」


懸賞金を付けて1ヶ月が経った頃、グディオスからそう言われた。


「そうだな…皆、俺のせいで仕事を増やしてすまなかった。一旦懸賞金は取り下げてくれ。引き続き、ミレイ捜索は頼んだよ」


もうミレイが村を出て2ヶ月が経っている。一体ミレイは今どこにいるのだろう。もしかして、もうこの世には…


て、俺はなんて不吉な事を考えているのだ。大丈夫だ、きっとミレイは生きている。


頼む、ミレイ。戻って来てくれ!



※次回、ミレイ視点に戻ります。

よろしくお願いします。

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