第9話 嘘だ!ミレイが俺を裏切るだなんて~アレック視点~
クリミアさんが戻ってくるまでの1週間、俺は急いでミレイの部屋を整えた。完成したばかりの俺の家にはもちろんミレイの部屋もある。部屋にはミレイの為に沢山の洋服やアクセサリーを準備した。
ミレイの為に専属メイドも数名雇った。ミレイ、喜んでくれるかな?ミレイはずっと苦労をして来たんだ。これからは何不自由なく生活して欲しい。俺は5年もの間、ミレイを一人ぼっちにして来た。これからは、5年分の時間を取り戻そう。
「アレック、随分と嬉しそうだね。新居の方もかなり急がせたそうじゃないか。そんなにミレイちゃんに会えるのが嬉しいのかい?」
俺に話しかけてきたのは、グディオスだ。
「当たり前だろう。俺はミレイの為に、この5年戦って来たんだ。ミレイとの幸せな未来の為に。ミレイがいなかったら、俺は生きていけない。ミレイは俺の心臓みたいなものだからな」
「はいはい、野暮な事を聞いて悪かったよ。お前がこの5年、ミレイちゃんの為に必死に頑張って来た事を知っているからな。それにしても、アレックをここまで動かすミレイちゃんってどんな子なんだろうな。俺も会うのが楽しみだ」
「グディオス、変な気を起こすなよ!ミレイは村一番の美人だったからな。男どもには変な気を起こすなとは伝えて来たし、アリおばさんにも頼んできたけれど…」
俺は5年もミレイをほったらかしにして来たんだ。なんだか不安になって来た。
「俺はお前を敵に回す勇気なんてないよ。それにミレイちゃんもきっと、お前の迎えを待っていてくれるはずだ。明日にはクリミアも戻ってくるだろうし」
明日か…
やっと明日、ミレイに会えるのだな!
ミレイに会える、そう思ったら、その日は興奮してきた。
ミレイが王都に来たら、すぐに結婚の手続きをしよう。俺は一応総裁だ。大々的に結婚式を挙げる事になるだろうが、社交的なミレイなら大丈夫だろう。極力ミレイの意見を聞いた結婚式にしたい。
もちろん、ミレイが望むなら、村の皆も招待しよう。俺も落ち着いたら、一度村に行きたいな。ミレイを支えてくれた人たちにお礼もしたいし…
そんな事を考えているうちに、待ちに待ったクリミアさんが帰ってくる日を迎えた。
でも…
「クリミアさん、どうしてミレイがいないのですか?まさか…」
「申し訳ございません。実はミレイ様は既に別の男性と結婚されておりまして…“どうか私の事は、お忘れください”との事でした。お子様もおりまして、とてもではありませんが、王都に来て欲しいとは言えなくて」
ポロポロと涙を流すクリミアさん。
嘘だ…
ミレイが俺を裏切るだなんて。そんな事は、絶対にない!
「グディオス、悪いが俺は少し留守にする。今すぐにナリーシャ村に向かう!」
「待て、アレック。お前の気持ちは分かるが、ミレイちゃんが別の男性と幸せになっているのなら、身を引く事を考えるべきだ。既に子供がいるのなら、尚更…」
「俺はずっとミレイの為に生きて来たんだ!男がいるからはいそうですかと、諦められるほど聞き訳が良くない。それに…誰が俺のミレイに手を出したのか…とにかく、ナリーシャ村に向かう」
「お…お待ちください!ミレイ様は本当に他の男性と…」
「悪いがこれ以上他の男と幸せそうにしているミレイの話は、止めていただけますか?クリミアさん、状況を報告して頂き、ありがとうございます。グディオス、後は頼んだぞ」
「待て、アレック」
後ろで叫んでいるグディオスを無視し、急いで準備を整えると、そのまま馬に乗り込んだ。早馬で飛ばせば、村まで2日。一刻も早く、ミレイの状況を確認したい。
そんな一心で、馬を飛ばした。ミレイ…どうして俺を捨てたんだ!俺はミレイの為に、今まで頑張って来たのに…
涙で視界がぼやけるのを必死にぬぐった。一刻も早く向かいたい俺は、途中で馬を変え、2日間ほとんど寝ずにナリーシャ村へと向かった。
そして!
「ミレイ、ミレイはどこだ!ミレイ!」
ミレイが住んでいた家に向かうと、大きな声でミレイの名を呼んだ。でも、部屋は綺麗に整理されていて、誰もいない。もしかして、男の家に住んでいるのか!クソ!
「誰だい、ミレイちゃんの家で叫んでいるのは…あなたは、アレック?アレックなのかい?」
俺の声を聞きつけてやって来たのは、アリおばさんだ。
「アリおばさん、ミレイはどこのどいつと結婚したんだ?すぐに男の名前を教えてくれ!俺からミレイを奪うだなんて、許さない!」
「ちょっと、アレック。落ち着いて頂戴。言っている意味がさっぱり分からないよ。それよりもアレック、酷い顔だね。もしかして外にいる馬に乗って、王都から帰って来たのかい?とにかく家にいらっしゃい」
アリおばさんが俺を家へと招こうとしてくれている。でも俺は…
「おばさん、ミレイは…ミレイはどこにいるんだ?ミレイが他の男と結婚して、子供までいると聞いたが」
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