第7話 長かった5年間~アレック視点~

「アレック、やったな!これで俺たち平民は自由だ!」


「ああ…やっと終わった」


最後まで抵抗を続けていた王族たちだったが、ついに王宮にて国王を打ち取った事で、この戦争は終わった。


5年か…


この5年、ただただミレイと幸せになる未来を夢見て、必死に戦って来た。


ミレイ…


物心ついた時から、ずっと俺の傍にいたミレイ。俺の両親が亡くなり、失意のどん底にいた時も、ずっと傍で支えてくれた。俺の両親が亡くなって半年後には、ミレイの両親も亡くなった。それでもミレイは


“アレックがいてくれるから、私は大丈夫よ”


そう言って泣きながら笑っていた。でも俺は知っている、両親のお墓の前で、1人で何時間も泣き続けていたことを…


ミレイ自身、食べるものがほとんどなく、随分とやせ細っていた。ふらふらになりながらも、必死に働いている。


俺たちは王族や貴族たちの為に、命を削りながら働いているのだ。俺たちはあいつらの奴隷じゃない!俺たちにも幸せになる権利がある!このままこの生活が続けば、いつかミレイも両親の様に…


嫌だ!ミレイは俺が守りたい。こんな地獄の様な生活から、抜け出してやりたい。立派な洋服を着て、美味しい食事を食べさせて、豪華な家に住まわせてやりたい!


変えたい!この国を!ミレイとの幸せな未来の為に!そう強く思う様になった。


そんな中、こんな生活に耐えられなくなった平民たちが、各地で謀反を起こし始めたのだ。ただ、次々と捕らえられ、鎮圧されているとの事。各々で動いてはダメだ!組織を作って、動かないと!


悩んだ末、俺はこの国を変えるため、王都に出て戦う事を決めたのだ。きっと王都でも、国を変えたいと考えている人間が多いはず。その人たちと合流して戦えば!


ただ…

心残りなのは、ミレイの事。俺が王都に出たら、ミレイは1人になってしまう。両親を失って間もないミレイを1人にするだなんて…


そう悩んでいた時だった。


「お願いです、どうかそれを返してください!両親の形見なのです」


「ええい、うるさい」


「きゃぁぁぁ」


「ミレイ、大丈夫か?」


俺が少し留守にしている間に、ミレイの家に役人が入り込み、金目の物を持って行ったのだ。あいつら、貴族に媚を売るために、定期的に村人の家に押し入り、金品を奪っていくのだ。どうやら親の形見を奪われた様だ。


許せない!やっぱり俺は、あいつらが許せない!これ以上ミレイを悲しませるあいつらを!


俺はやっぱり、ミレイを幸せになりたい!


俺は意を決して、ミレイに王都に出る事を話した。すると、予想通り泣いて止めるミレイ。その涙が俺の心に突き刺さる。でも、今を見ていてはダメだ。今はどんなに辛くても、未来を変えるために動かないといけないんだ!


そう自分に言い聞かせ、俺は必死に止めるミレイを置いて、王都へと向かった。


「ミレイ…ごめんな。必ず迎えに行くから、待っていて欲しい」


汽車の中で、1人涙を流した。そして4日間かけ、王都に着いた。


「これが王都なのか?」


街は綺麗に整備されているものの、平民たちはやせ細り、あちらこちらに倒れ込んでいる人たちもいる。これは酷い、家の村よりずっと酷い状況だ。


とにかく、一刻も早く何とかしないと!でも、どうすれば…


そんな中、俺は1人の男と出会った。それはのちに俺のパートナーとなる、グディオスだ。彼も王家に不満を持っている人間の1人で、既に行動を移しているとの事。そして仲間を募集しているとの事で、俺もその組織に加わる事にした。


とにかく今は仲間を集める事を優先しよう。という事で、俺たちは密かに地下で生活をしながら、まずは仲間集めから始めた。どうやら政府に不満を持っている人間も多い様で、1年で一気に人数が集まった。


仲間集めと同時に、俺たちは剣の稽古に励んだ。強くないとあいつらは倒せない。それこそ血の滲む様な努力を重ねた。


ミレイ、今頃どうしているかな?俺の事、心配しているかな?


ふとした瞬間、考えるのはミレイの事だ。ミレイに会いたくてたまらない。でも…全てを片付けるまでは、絶対に村には帰らない。そう強く決意した。


そして王都に出て1年後、ついに革命軍として動き出した。手始めに、不当な理由で強制労働施設に収容されている平民たちを解放する事にした。大々的に動くと敵に動きを察知される、そう思った俺たちは、奇襲攻撃を仕掛ける方法を取ったのだ。その方法が良かったようで、一気に平民たちを解放することが出来たのだ。


その後も地下で作戦を練りながら、次々と他の施設も開放していく。王宮騎士団たちは、俺たちを捕まえようと血眼になって捜索している様だが、有難い事に見つかる事はなかった。


そして俺たちの動きを知った各地の平民たちも、次々と合流した。中にはかつて騎士として働いていた腕っぷしの強い人間も多数いた。


規模が大きくなったことで、ついに俺たち革命軍は、正体を現し正面からぶつかっていく事になった。ドンドン見方が増え、食料や武器の提供を受ける我々革命軍に対し、追い込まれていく王族や貴族たち。


そしてついに、国王を俺の手で打ち取る事が出来たのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る