第4話 王都に向かいます
翌朝、両親とアレックの両親が眠るお墓に行き、今日村を出て王都に向かう事を報告する。そして家に戻ると、荷物をまとめ、外に出た。この家ともしばらくお別れね。18年間過ごしてきた私の大切なお家。お父様とお母様、アレックとの思い出が詰まっている。なんだか急に寂しくなってきて、涙が溢れ出そうになる。
ダメよ、泣いたら。そっと涙をぬぐい、向かった先はアリおばさんの家だ。
「おはよう、アリおばさん、リマ」
「おはよう、ミレイちゃん」
「ミレイ、おはよう。その荷物は、王都に向かう事に決めたのね」
「ええ、2人が背中を押してくれたおかげ。本当にありがとう。それからこのお金は、お返しするわ」
昨日アリおばさんが置いていってくれたお金を返す。
「あら、王都では何かとお金が必要になるかもしれないわ。持って行って」
「ありがとう、でも、ある程度お金は貯めていたから、大丈夫よ。アリおばさん、リマ、本当にありがとう。私、どんな結果になろうと受け入れるつもり。でも…もし万が一、落ち込んで帰ってきたら、その時は…」
「もう、ミレイたら。アレックならきっと大丈夫よ。でも、万が一アレックが最低な男だったら、まっすぐこの村に帰ってくるのよ。私達はこの地で、ずっとあなたを待っているから」
「ありがとう、リマ」
ギュッとリマに抱き着いた。
「それじゃあ、行ってきます」
「気を付けて行ってくるんだよ。家の手入れはしておくから」
2人が手を振って見送ってくれる。2人の姿を見たら、なんだか胸が苦しくなった。5年前、アレックもこんな気持ちで村をでたのかしら?つい、そんな事を考えてしまう。
2人と別れ、向かった先は駅だ。王都までは汽車と馬車を乗り継いで、約4日かかる。実は私、汽車に乗るのは初めてなのだ。なんだかワクワクしてきた。
早速切符を購入し、汽車に乗り込んだ。これが汽車というものなのね。子供の頃、よく両親と一緒に汽車を見に来ていた。もちろん、乗るお金なんてなかったから、ただ汽車が走るのを見ていただけだけれど、それでも幸せだった。
優しかった両親の事を思い出すと、また涙が溢れそうになる。いつから私はこんなに泣き虫になったのかしら。
そっと涙をぬぐっているうちに、ゆっくり汽車が動き出した。どんどんスピードが上がっていく。やっぱり汽車は早いわね。でも、こんな早い乗り物に乗っても、王都までは4日もかかるのだ。
途中何度も汽車を乗り換え、王都を目指す。村から出たことがなかった私は、どの街もとても新鮮で、つい見とれてしまう。
いけないわ、ゆっくり街を見ている場合ではない、早く次の汽車に乗らないと!
少しでもお金を節約するため、ホテルには泊まらず基本的に夜行汽車を利用して王都を目指した。ベッドに横になれないのは辛いが、アレックに会うためにもこれくらいどうって事はない。
そして4日間かけ、何とか王都に着いた。
「ここが王都の街なのね…凄いわ…」
まず、汽車のホームが広くて人が沢山いるのだ。それに色々なお店も並んでいる。ずっと小さな田舎の村で過ごしていた私にとって、王都はまるで別世界。ただ、人が多すぎてなんだか怖い。
荷物を取られない様にギュッと握りしめ、駅の外に出た。駅の外にも沢山のお店が並んでいる。ただ、やはり内戦の名残が残っており、あちらこちらで壊れた建物の修復工事を行っている。
アレックは、この場所で1人必死に戦っていたのね。そう思うと、胸が熱くなった。とにかくアレックに会いに行かないと。でも、アレックはどこにいるのかしら?
辺りを見渡すが、人と建物が多すぎて目が回りそうだ。少し人通りが少ない場所に行こう。そう思い、路地に向かって歩き出した時だった。
「あんた、どこに行くのだい?裏路地は危ないよ。悪い奴が沢山いるからね」
誰かに腕を掴まれる共に、声が聞こえる。声の方をゆっくり振り向くと、そこには私より少し年上の女性が立っていた。
「あの、私、実は今日故郷から出て来たばかりで。その、人を探しているのです。革命軍の幹部をしているのですが、革命軍の人たちはどこにいますか?」
「革命軍の幹部に会いたいだって?とにかくこっちにおいで」
お姉さんに腕を引っ張られ、パン屋さんへとやって来た。凄いわ、こんなに沢山のパンが売られているだなんて。やっぱり王都は凄いのね。
「何だい?お腹が空いているのかい?ここは私のお店だよ」
「まあ、あなた様のお店だったのですね。素敵なお店ですわ」
「それで、革命軍の幹部に会いに来たと言っていたね。革命軍の幹部たちがいるのは、あの大きな丘の上にある宮殿にいるよ。昔はあそこに王族が住んでいたのだが、革命軍に敗れて全員処刑されたからね。今貴族たちも続々と捕らえられているよ」
「まあ、そうなのですね。あの大きな宮殿に、アレックが…」
「今アレックと言ったかい?アレックと言えば、王族を討ち破った英雄の名前じゃないか?もしかしてあんた、英雄に会いに来たのかい?」
「はい、アレックは私の幼馴染でして…」
「そうだったのかい。英雄に会うのは厳しいかもしれないね。彼に取りいろうとする人間も少なくはないだろうし」
そう言って困った顔をした女性。あんな立派なお城に住んでいるアレック、確かに会うのは厳しいかもしれない。でも…
「私、どうしてもアレックに会いたくて王都まで来たのです。何とか会えないか、交渉してきますわ。色々と教えていただき、ありがとうございました。それでは、失礼いたします」
「あっ、待って」
後ろで女性の声が聞こえたが、頭を下げそのままお店を後にしたのだった。
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