第73話 意味深な視線
でも、ダイエットか。気にしている奏多の手前、こういうのを言うのははばかられるけど……正直、気にするほど太ってはいないと思う。というか、俺的にはちょうどいいくらいだ。
まあ、女性は女性で気にするラインっていうのがあるんだろう。そこを俺がとやかく言うのは、違うよな。
スマホで一生懸命、ダイエットについて調べている奏多を見る。
奏多も本気なんだ。俺もそれに応えよう。
奏多の横に座り、自分のスマホでいろいろと調べる。
ちょっと検索するだけで膨大な量の情報が出てくるんだ。現代技術ってすげーよな。
「ふむふむ。痩せるやら有酸素運動と筋トレを併用しなければならない、と……よし、筋トレだ!」
「ん? 何すんの?」
「わかんないけど、とにかく腕立て伏せとかスクワットとか、全身運動をすれば痩せる! ……らしい!」
ふわっふわな情報だな。でも俺が調べてみても似たような情報があったから、間違ってはなさそう。
ソファから立ち上がった奏多が動画を見ながらスクワットを始める。
背筋を伸ばし、お尻を突き出し、太ももが床と並行になるまで下げて、瞬発的に上げる。
――ぶるるん。
「んっ。これっ、ぁっ。結構、きつい……んんんっ」
「…………」
――ぶるん。だぽん。ばちゅん。
「ひーっ……! んぁっ、はぁっ……!」
エ ッ チ す ぎ る。
ただでさえ大きいお尻を突き出し、大きい胸を張り、それが揺れるだけでもエッチすぎるのに、声まで合わさったら男の欲情を刺激しまくってくる。
「あの、奏多さん。運動は偉いんですが、せめてその声はどうにかなりませんかね」
「む、りぃっ……! こえ、出ちゃうよぉっ……!」
だからそれをやめろって言ってんでしょうが! 俺を誘ってんのかこいつは!
悶々とする俺の気持ちを尻目に、スクワットを終えて次は腕立て伏せの体勢になった。ほ、ようやく終わった……まあ腕立て伏せなら大丈夫だろう。
……と、思っていたのに。
そのまま下げて、上げて、下げて、上げて……その度に胸がスライムのように形を変えて、首元から覗く深い谷間が見える。
ダメだ。もしかしたらスクワットよりエッチかもしれん。
「はぁ、はぁ、はぁ……! う、腕立て伏せは得意なんだよね。みんなより多くできちゃうんだよ」
「そりゃあ……うん、そうだろうな」
その支えがあったら、そうなりますよ。ずるいもん、その支え。
10回を3セットやり終えた奏多は、息も絶え絶えに仰向けに寝転がる。
息をするごとに揺れるお胸様から目を逸らすと、奏多は右手を上げてぶんぶんぶんと激しく腕を振った。
「ひーっ……! 久しくまともな運動してなかったから、結構キツイ……! けど、これを続ければ……!」
「い、いつまで続くかね」
「それを制御するのが京水の役目じゃんか」
「俺かよ」
「もちろん。ぼくのやる気がなかったら、ケツを蹴っ飛ばしてでもやらせてよ」
「……それで怒られたくないんだけど」
「大丈夫大丈夫。そんなことしないって」
どうかな。奏多のことだから、今の会話も忘れて反撃してきそうだけど。
「それにご褒美があればダイエットも頑張れるというか……」
「ん? 悪いけど、お菓子は全面禁止だぞ」
「わ、わかってるよ。そうじゃなくて……」
チラッチラッと俺の方を何度も見てくる奏多。
え、何? どゆこと? ごめん、本当にわからない。
首を傾げると、奏多は顔を真っ赤にして立ち上がった。
「あ、熱くなってきちゃった。ぼく、お風呂入ってくる! 京水はダイエットご飯よろしくね!」
「あ、おい」
なんか、逃げられた気分。
……まあ、悶々としたまま待つのもなんだし……食材の買い出しにでも行くか。
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