第46話 運命の結果
「それで、ここは……」
「ああ、なるほど! だからこっちがこうなって……できた!」
得意気な顔で、自信満々に解けた問題を見せてくる奏多。
今までできなかった問題が、今日は解けてる。確実に実力が付いてるな。今はなんとか、授業にもついて来れてるみたいだし。
嬉しそうな奏多の頭を撫でると、口角を上げて擦り寄って来た。まったく、可愛い奴だ。
「あのー、お2人さん?」
「「あ」」
萬木からのジト目を受けて、我に返る。やば、2人きりじゃなくて、萬木と九条もいるんだった。
「わ、悪い。つい……」
「ご、ごめんね、純恋さん……!」
「いやいや、ウチは別に気にしないけどさ……なんか、いつもより距離が近くないかと思って」
え? ……そうかな。別にいつも通りの距離感だと思うけど。大親友としても、恋人としても、いつも通りの距離感だ。
奏多と目を合わせて首を傾げると、九条がやれやれと肩を竦める。
「土曜日に喧嘩しちゃったって連絡が来たと思ったら、週明けにはこんなに仲良く……君たち、この週末はちゃんと勉強したんだろうね?」
「「………………………………もちろん!」」
「「間」」
いや、ま、うん、はい……正直、この週末は勉強のべの字もしていない。
だって……ね? 恋人同士で2人きりだし、そういうこともしちゃったし、昨日は日曜日だし……仕方ないよね?
当然だけど、したことは2人には話していない。わざわざ話すようなことじゃないし。
「まったく……土日だからいちゃいちゃに歯止めが効かない気持ちもわかるけど、赤点取ったら夏休み中いちゃいちゃできなくなることは覚悟しておくんだよ」
「そ、それはいや! 京水、今日からまた気を引き締めるよ!」
「わ、わかった」
九条の言う通りだ。目先の1日に惑わされて、未来の夏休みを潰すなんてあってはならない。
奏多も少しずつ成長してるんだ。ここからだって、十分巻き返せる。
次の問題に集中する奏多を横目に、俺も自分の勉強をしていると、いつの間にか近くにいた九条が、そっと耳打ちしてきた。
「えっち」
「!?!?」
え、嘘。バレて……!?
九条の方を見ると、思いの外顔が近く、硬直した。いや、相変わらず顔良すぎっ。
「バレバレ。テスト前くらい自制しなきゃね、お猿さん」
「う……はい、すんません……」
本当にその通りです。返す言葉もございません。
奏多が話したってわけでもなさそうなのに……なんでバレたんだろう。恐ろしい、女の勘。
九条が俺から離れ、二度手を叩いて注目を集める。
「みんな、来週から期末試験が始まる。勉強の猶予は今日を入れて7日。それが終われば、後は待ちに待った夏休みだよ。最後の追い込み、頑張っていこう」
「「おー!」」
「お、おー」
奏多と萬木が元気よく拳を突き出して雄たけびを上げ、俺も釣られて拳を上げる。
この7日間の勉強で、夏休みの青春を謳歌できるかが変わってくる。
まずは勉強。イチャイチャはその後。
奏多と顔を合わせて頷き合うと、勉強に向き直った。
◆◆◆
――キーンコーンカーンコーン――
「はぁ~い。それでは、テストを返却しますよ~」
メグたんの間延びした声が教室に響き、代わりに絶望の悲鳴がクラス中から漏れる。
あれから、もう二週間。怒涛の勉強会と期末試験を終え、もうテスト返却日になった。
この学校では、テストの返却は担任が一気に行うことになっている。だから、自分の点数がこの日のうちにすべてわかる。……わかってしまう。
奏多と萬木の方を振り向くと、手を組んで神様に祈っていた。今神頼みしても無意味でしょう。
「もう一度言いますが~、赤点は平均の半分です~。赤点を取ったら1教科につき3日間、夏休みの補習がありますよ~。覚悟して受け取ってくださ~い。それじゃあ、相羽く~ん。井坂さ~ん」
出席番号順で、1人1人呼ばれていく。こうなってくると、緊張してくるな……一応自己採点では軒並み50点以上は取れたから、赤点は回避できてるはずだけど。
九条も呼ばれ、メグたんからテスト一式を貰って中身を確認する。
お。安堵の表情。よかった、九条はクリアできたみたいだ。
その後も順調に呼ばれ、安堵と絶望の表情をしているクラスメイトを見送ると……ついに、奏多の番になった。
「火咲さ~ん」
「ひゃいっ……!」
立ち上がり、ロボットのように歩いて近付くと、テスト一式を返却された。怖いのか、胸に押し当てて見ようとしていない。
「氷室く~ん」
「あ、はい」
そうか。奏多の次は俺か。
奏多を横目に、テストを貰いに前に出る。
あぁ、ついに補習かどうかが決まる。理系科目が心配だけど、果たして……?
席に戻り、各教科の点数と平均点の一覧表を眺める。
これは……よ、よかった、いけてる! 赤点回避だ!
……数学が42点、赤点が37点なのは本当にギリッギリだったけど。数学難しかったのに、みんな70点以上取ってるのやば。
それで、奏多は……?
奏多に目を向けると……テスト結果を見て、真っ白に燃え尽きていた。
あ、あれは……どっちだ?
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