第24話 アミの願い

 2月にインターハイがある為、12月に入るとまたバスケ部は本気モードに入った。

もう、毎日会う事も出来ない。

時々電話で話すだけ。


 毎日、ユンからの告白を待つのに何も言ってはくれない。

少しずつ寂しくなってイライラして来る。

時々電話で当たる事もあったけど

ユンは優しいので怒る事はなかった。



「はぁ。」


「どうしたの?最近、ため息多いよね。」


「誰かさんのせいでね。」


「誰?ムカつくヤツいんの?」


「別に!」


「何それ?」


「別に気にしてくれなくて良いし!」


「なぁ。俺と話してて楽しい?」


「わかんない。」


「じゃあ切るよ。」


「うぅ〜。」


「なんだよ。」


「何か…言いたい事とか…ないの?」


「なんだろ? 無いけど。」


「じゃ、いいよ。切って。」


「あのさ。」


「なっ、なに…?」


「クリスマス休みなんだ。どっか行こうよ。他に予定が無ければ…。」


「予定は無いよ…。」


「じゃあ、行く?」


「うん。」



(クリスマスに会うって…期待していいのかな?)



――――――――――――――――

 クリスマスに会うのだから、絶対にプレゼントは用意したい。

誕生日プレゼントも貰っているし、絶対に…。


 でも、男の子が喜ぶプレゼントって何なんだろう。

男の子にプレゼントなど、考えた事も無い。

スマホで

『高校生 男子 プレゼント』など、検索してみたりした。

どれも、ピンとこない。

おもしろグッズなどが候補に挙がっていて、自分の求めているものは出てこないと悟り、スマホを置いた。


 身につける物が良い。

ユンを頭の中で想像する。

想像のなかで、ユンを着せ替え人気の様に立たせた。

何を着けさせる?


 アクセサリー?

全く想像出来ない。


 服?

種類があり過ぎる。


 どんなのが見てみたい?


 あ、マフラー。

白い大きなマフラー!

絶対に似合う!


 決めた!


 それだけ?


 バスケ…。


 あ!バスパンとTシャツ!

これなら季節を問わず着てくれる!


 悩みに悩み、大きな白いマフラーとバスパンにTシャツのセットに決めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

「買い物、付き合って貰ってごめんね。」


「何言ってんのよ。」


「いよいよ彼氏になっちゃうのかぁ?」


「どうかなぁあ〜♡」


 ジアンとソアに付き合って貰って、ユンへのプレゼントのお買い物。

プレゼントを選びながら、3人は浮き足立っていた。

キャッキャと笑いながら、浮かれた女子高生があれこれと見て回っている。



「バスパンとかTシャツって意外と高いんだね…。」


「ホントだねぇ。」


「違うのとかは?」


「バスケしてる時間が1番長いから私がプレゼントしたやつ着て欲しいんだよね。」


「あぁ、なるほどね。」


「いいや、これも貯金使っちゃう。」


 流石に月のお小遣いでは全く足りなくて、貯金を使った。

(クリスマスのデート費用だって貯金から使わなきゃ。)



 買い物が終わり、カフェに入った。



「で?ジアンはどうなってんの?」


「あぁ、ソジンくんと?」


「うん。」


「好きなのか分かんなくなってんだよね。話は合うからLINEで話すけど向こうは男友達だと思ってんじゃ無いかな(笑)」


「そうゆう、いわゆる男女の話みたいなのが無いって事?」


「うん。全く!だから、私の気持ちも分かんなくなってきた。好きでは無いんだと思う。仲の良い友達だね。」


「そっか。でも、私とユンくんも変わらないや。」


「そうなの?」


「恋人同志の会話がどんな物か知らないけどさ、嬉しくなる様な事は言ってくれないよ。」


「あれじゃないの?わざわざ言わなくても分かるだろ的なさ。もう付き合ってる事になってるかもしれないよ?」


「それは無い。だってさ、付き合ってるの?って聞かれて付き合ってないって即答するんだよ?そんなのある?だんだんムカつくよ。」


「手繋いだりするのに?」


「手繋ぐしか無いから!それ以外なんも無いし!」


「クリスマスに期待だね!」


「まぁ、そうなら良いけどさ…。で、ソアは?どんな状況?」


「あぁ、私もデヒョンくんとLINEで話しするよ(照)」


「お!良いじゃん!」


「でもね、話す内容が不思議過ぎて一個ずつ理解するのが大変(笑)」


「あぁ(笑)」


「だけど、好きだから話に付き合ってあげるの楽しい!」


「可愛い2人だな!」


「ねー!?」


「そんな事ないよ〜(照)」



 いっぱい話して少しストレス発散になった。

不安と疑問でいっぱいだった私に、2人は希望をくれた。

夜ご飯を一緒に食べて帰りたかったけど、これ以上お金を使いたくなくて帰らせて貰った。



――――――――――――――――

 そして、いよいよやって来た

クリスマスデートの日。

なぜか母親もソワソワしている。

 


(あぁ!ブレスレットって自分で着けんの難しい!)



「おかぁさ〜ん。これ着けて。」


「ん? はいはい。よし。」


「はぁ…。」


「なにぃ。ため息は幸せが逃げるのよ?上向いてなさい。」


「ちょっと無理。」


「何時待ち合わせ?」


「11時に来てくれる。」


「え?見に降りていい?」


「絶対にやめて?」




――ピロン


《LINE》


ユン :ちょっと早いけど着いた。

    出られる?


アミ :出れるよ。行くね。





「もう来たみたい。行ってくるね。」


「あ、アミ!」


「ん?」


「あんたあまりお金無いんじゃないの?少し渡しておくわ。はい。」


 エプロンのポケットからお金を出して渡してくれた。


「良いの?ありがとう…。」


「はい、気をつけて行ってらっしゃい!楽しむのよ?」


「うん。」



――――――――――――――――

「ここ、自転車置いてても良いよな?」


「うん。大丈夫だよ。」


「映画行く?」


「今日は映画じゃ無くていい。」


「じゃあ、夜行く予定だったとこ今から行こうか。」


「うんっ。行こっ。」


 バス停に向かい歩き出す。



「手…冷たいね。」


「自転車で来たからな。」



(マフラーじゃ無くて、手袋にしたら良かったかな…)



 毎年、冬になると大規模なイルミネーションを開催する遊園地がある。

夜はそこで過ごす予定にしていた。


 電話ではいつも、煮え切らない態度にイライラしてしまうけど、

会うとやっぱりカッコよくて、頬が緩んでしまう。

クリスマスにユンを独り占め出来ている事が、嬉しかった。



この繋いだ手から、私の期待が伝われば良いのにと、念を送り続けた。

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