第10話 エキストラ

 携帯が鳴る。

「はい!山田です‥お疲れ様です‥水曜日?空いてます!‥はい‥はい‥大丈夫です!えっセリフあるんですか?‥はい‥チンピラ風の服装?多分大丈夫です‥はい‥了解しました!宜しくお願いします‥お疲れ様です」

エイリアン「どうかしたのか?」子供を膝に抱えて

崇に聞いた。

崇は、「エキストラの仕事だ!久々にセリフがあるよ、ラッキーだ」と嬉しそうだ。

崇は、押し入れの衣装ケースを引っ張り出した。

「チンピラ風の服装で来てくれと言うからさがさなきゃ」とせわしない。

〝ピーン〟着信音が鳴る。

「多分、台本だ」そう言って開くと、ふむふむと読んでいる。

エイリアンは、「どんなセリフなんだ?」と聞いた。

「俺には関係ねえ!」崇は、凄んで言った。

「この一言、刑事の現場付近の捜査で、たむろしてるチンピラに聞いた時に返す言葉だけ」と崇が説明した。

続けて、「通行人がほとんどだから、テンション上がるな!」と嬉しそうだ。

「俺には関係ねえ!」「俺には〜関係ねえ!」

「俺には!関係ねえ!」ひたすら繰り返している。

エイリアンは、「稽古の相手が必要じゃないか?なんて言えばいいんだ?」

崇は「やってくれるのか?待てな、えっーとな

〝この前の抗争での銃撃なにか知っているか?〟だ」エイリアン「ふむ、ふむ、わかった」

エイリアンは、子供を降ろして立った。

エイリアン「この前の抗争の銃撃なにか知っているか?」

崇「俺には、関係ねえ!」 「どうかな?」と崇は聞く。

エイリアン「うーむ、深みがないと言うか、印象にのこらないな?」と言う。

崇は、「いらないんだよ!深みとか!一瞬でてきて、終わりのキャラクターだから、本当にコイツは

関係ないんだから!」

「よし、もう一回、頼むぞエイリアン!」

エイリアン「この前の抗争の銃撃なにか知っているか?」

「俺には関係ない!」と崇は言う。

エイリアン「うーむ、この人の生い立ちがみえないな!」

崇は、「いいんだよ、コイツがどんな人生歩もうが、このシーンとは、関係ないんだよ!辺りをたむろしてるチンピラなんだから、生い立ちはいらない!」

エイリアンは「わかった、もう一回いくぞ」

「この前の抗争の銃撃なにか知っているか?」

崇「俺に、ば 関係ない!」

エイリアン「今の良かったぞ!」

崇「今のは、噛んだの!あーもうやめた!」

エイリアン「自然で良かった」

崇は、「うるさい!」と新聞紙を投げ、いじけてしまった。

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