第31話 王都に出回る依頼
<ヴァルツ視点>
「あん?」
今日も学園の日程が終わり、大通りを歩く。
そんな中、校門を少し出た場所から、何やら異様な雰囲気を感じた。
「……」(誰だろう)
校門近くに複数人の男達がいるんだ。
それも
ダリヤさんやマギサさんと同じ『冒険者』といったところか?
さらに、
「あれか?」
「多分な」
男達は何やらヒソヒソと話している。
学園への不法侵入は連行対象なので、中へは入ってこない。
でも、明らかに学園内に用がある様子。
……というか、僕の方をみながら話してる?
「フン」(よし)
もしそうなら、確かめなくては。
僕は男達に向かって真っすぐに歩き出す。
「……」
「「「……」」」
わざと男達の近くを通ったが、何もしてこず。
ただじっくりと僕を見ているような気はした。
「……チッ」
なんだったんだろう、一体。
そんなことを思いながらも、この日は帰路についた。
次の日、放課後。
「は?」
今日も学園から帰るべく歩いていると、またも男達が校門近くにいる。
というか、数が増えてないか?
「「「……」」」
しかも、こちらをじっくりと見ている様子。
なんだなんだ?
僕が何か悪いことをしたっていうのか?
「チッ」
だけど、このまま帰らないわけにもいかないので、気にせず校門から出て行く。
……が、今回は昨日とは違った。
「!」
男達の内、何人か付いて来たのだ。
進行方向は明らかに僕の方向。
「……フン」
こうなればさすがに分かる。
「愚かな奴らだ」
彼らは僕に用があるらしい。
学園から歩き、しばらく。
「……」
場所は商店街の裏道に入った所。
この辺りには誰もいない。
そろそろ回りくどいことをするのもやめよう。
「おい」
「「「……ッ!」」」
僕はふいに後ろを振り返った。
すると当然、付いて来ていた男達と目が合う。
「俺に用か?」
「「「……」」」
相変わらずコソコソと話す連中。
だけどその内、意を決したのか、一人の者が前に出る。
「お前がヴァルツ・ブランシュか?」
「生意気な口だな」
「……ヴァルツ・ブランシュ様でしょうか」
口の利き方には気を付けてもらいたい。
だって……
一応、あなたたちの為を思って言ってます!
「そうだが」
「やはりでしたか」
で、話を戻すと、彼らは僕の顔と名前が一致してなかった。
ならば、おそらく貴族階級ではない。
良くも悪くもヴァルツの名前は広まっているからな。
「では、これで」
「は?」
しかし、それだけを確認してから男達は去ろうとする。
それはさすがに納得がいかない。
「質問に答えろ。用があるんじゃないのか」
「名前を確認したかった」
「……?」
だが、男達の用はやはりそれだけのようで。
「顔が分かれば、後は
「……」
結局、それだけを言い残して男達は去って行く。
「なんだあいつら」
不思議な人たちだった。
何か僕を疑っているような感じはあるものの、悪い人達とも思えない感じだ。
「……チッ」
だけどこの理由を、僕はすぐに知ることになる。
★
<三人称視点>
暗い部屋にろうそくだけが灯された中、話をする二人がいる。
「どう思う? マギサ」
「……
ヴァルツの師匠──ダリヤとマギサである。
二人が手にしているのは、とある依頼書。
この依頼は
ダリヤとマギサはSランク冒険者のため、入手したようである。
「だよな」
「ええ」
二人は実際に受注したわけではない。
だが、そんな怪しい依頼に目を通さないわけにもいかないため、話を進めているようだ。
二人は改めて依頼書に目を通す。
『最近、不審な人物を見かけることが増えた。彼らは夜になると姿を現し、まるで魂を奪われたような、異常な様子で王都を
最近の
『依頼の内容は、“真相の解明”。報酬は~』
それを調べよとの依頼である。
そして、依頼書には事前調査の情報も載っていた。
『そんな彼らから【闇】の属性が確認された』
その事実から依頼書はこう締めくくられる。
『怪しい人物は、現アルザリア王立学園生であり、
【闇】が確認されたのであれば、こう言われるのも仕方がない。
しかし、ダリヤは──
「……ッ」
グシャっと依頼書を潰した。
「バカバカしい」
「同感ね」
マギサも含め、怒っているのだ。
たしかにヴァルツの態度は
それでも二人は知っていた。
ヴァルツは人を無下に扱うような者ではないと。
「マギサ」
「……ええ」
二人はすっと立ち上がる。
長年の付き合いである彼らには、お互いの言いたいことが手に取るように分かった。
「「真実を暴く」」
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