第5話 属性魔法

<ヴァルツ視点>


 修行開始から早三か月。


「今日も張り切っていこー!」

「は?」


 朝の修行の時間になり、庭に出て来た。

 かと思えば、いたのはマギサさんだ。


「何してんだてめえ。じじいはどこいった」

「今日は剣はお休みっ。魔法の次のステップに進むためにね」

「あ?」


 嬉しそうに人差し指を立てて説明するマギサさん。


 なんだか僕をいじめるのが楽しくなってない?

 そんな思いはよそに彼女は話を進める。


「なんと今日は、属性魔法に移ります!」

「……!」

「ほら驚いたでしょ」

「……なわけねえだろ」

 

 口からはこう出ていくけど、内心すごく驚いている。


 属性魔法はこの世界のだい醐味ごみ

 人それぞれに固有のもの・・・・・・が存在するんだ。


 僕の解釈に付け足すよう、マギサさんが口にした。


「ご存じ、魔力は自分に合うよう変換することで属性になります」

「ああ」

「そう、私なら【毒】!」

「……!」


 マギサさんの手から、紫のドロドロのものが出て来る。

 今手に込めていた魔力を属性に変換したんだ。


「自分で言うのもだけど強力よ? ほれっ!」

「……ほう」(うわっ!)


 それを地面に落とす。

 その瞬間、ドロドロが落ちた部分だけ草が枯れた。

 これが【毒】属性の効果ってわけだ。


「属性はまさに多種多様。人の数だけ存在するわ。【炎】と【火】みたいに、似たものもたくさんあるけどね!」

「ああ」

「それと~……」


 マギアさんが少し言葉をためる。

 いかにも重要そうな事を言う顔だ。


「これはあまり伝わっていない・・・・・・・・・・話だけど、属性は人の本質を表すと言われている説も存在するの」

「……!」


 すごいな、この情報を知っているのか。

 これはゲーム本編の後半・・で出て来る情報。


 本来なら、属性はランダムに生まれ持つと言われる。

 それがこの世界の常識だ。


 だけど、本当は違う。

 マギサさんが言ったように「属性は人の本質を表す」。

 これは主人公たちがイベントで明らかにする。


「面白い話よねえ」

「……」


 その説明でさらに思い出してくる。

 この世界で言い伝えられる“逸話”のことだ。


 属性はほぼ無数に存在するけど、中でも特別・・な二属性がある。


 人々に“希望”をもたらす【光】。

 人々に“絶望”をもたらす【闇】。


 この二つを発現させたのは、過去に一人ずつのみ。

 勇者の【光】。

 魔王の【闇】。


 今から何百年も前。

 争い合った両者のみが持っていたとされ、以来伝説となった属性なんだ。


 学園が始まるまでは・・・・・・・・・


「……」


 そして、ヴァルツは悪役でありラスボス。

 後に判明することだけど、実は魔王のけいを持っている。


 ゆえに、発現させるのは──【闇】。


「やってみな、ヴァルツ」

「……ああ」


 マギサさんに言われ、目を閉じる。


 魔力を属性に変換するコツは学んだ。

 あとは魔力を込め、心の奥底にあるイメージを──放つ!


「……!」


 魔力が色を持った感覚があり、目を開く。


 ──その瞬間、


「嘘でしょう!?」


 マギサさんがひっくり返るほどに驚く。

 だけど、一番驚いているのは紛れもない僕だ。


 だって、だってこの属性は……!


「【光】……?」


 それはヴァルツが持つはずもない、輝かしい色を放っていたのだから──。

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