閑話 魔法少女の初恋 中編
青年の名前は緒日辻 進くん。一度目のダンジョン攻略者ですね。当然切り抜きの動画は見ましたし、その時の強さには驚きました。ですが、何より――――。
カッコいい…。
こんな状況にも関わらず、なんて事を想ってしまうのでしょう。自分でも顔が真っ赤になっているのがわかります。
動画でもちょっとかっこいい人だなぁって想ってたのですが、実物は本当にかっこいいです。さっきまでの緊張感も相まって思わずフラフラっと倒れそうになってしまいました。すると彼が支えてくれるじゃありませんか。
近すぎてドキドキが止まりません。
その後、私が何を言ったか全然思い出せませんが、緒日辻くんが凄い技でグレイウルフを全滅させたところで漸く落ち着く事が出来ました。
そしてどうやら緒日辻くんは私の事を知っていたようです。こんな底辺のような私でも知ってもらえていると思うととても嬉しいです。
そして緒日辻くんはさらに驚きの提案をしてきたのです。なんと、私の装備を見せてくれと言ってきたのです。
このダンジョン配信を生き残った人間にはある特徴があります。初めての配信の時に、必ず何か『装備』をしている事です。今目の前にいる緒日辻は勿論の事ですが、他の生き残った配信者さん達も全員が何かしらの装備を持っています。
私はそれがステッキであり、魔法少女になる為の装備です。
一度目の記憶がよみがえりました。何もわからない私はいきなり変身させられ、ピンクに包まれた服装を見たリスナーさんには笑われ……。
けど、このままではいけない事もわかっています。このままでは遠くない未来、私はダンジョン中に魔物に襲われて死んでしまうでしょう。今回は緒日辻くんに助けてもらったので運よく生き残る事が出来ました。ですが、こんな事が何回も続くとは思えません。むしろ今回が奇跡と呼べるでしょう。
ここが最後のチャンスかもしれない。私はそう思い、最後の勇気を振り絞りました。
まだ慣れる事のないBGMになぜか勝手に動き出す身体。光り輝くステッキを見て、思わず虚無に陥る感情。
光りが収まるとなぜか決めポーズをしている私。緒日辻くんの目の前で何をしているのだろう? しかもそれを見た緒日辻くんの一言目……。
「夏美さんって今いくつなんですか?」
穴があったら入りたかったです……。
ここで年齢を聞いてくるとは私の事嫌いですよね!? 他の意地悪なリスナーさん達より恐ろしい一撃をくださりやがりました。
その後はとりあえず私の初戦闘を見守ってもらい、十分に戦える事を知る事が出来たのと、ナツミンと呼ばれた事がとても嬉しくてリスナーにお礼を言っている間にお別れに。お別れは寂しかったけど、戦う勇気をくださった緒日辻くんには感謝の気持ちしかありませんでした。
緒日辻くんと別れ、やっと覚悟を決めた私は、今までが嘘のように順調に進める事が出来るようになりました。そして自信をつけた私は、グレイウルフと戦いながらあちこち歩き回ります。戦える事がわかるとこんなに気分が変わるのでしょうか? ずっとビクビクしていた私が今では複数のグレイウルフに囲まれていても問題なく対処できるようになっています。そのあとはライカンスロープという狼男も何とか倒す事が出来、強くなっているのを実感していたその時でした。
絶望が目の前に現れたのです。全身に悪寒が走り抜けました。上から降ってきたのは黄金に輝く鎧を身に着けたライカンスロープ? いえ、あれはライカンスロープではないのでしたね。『狼神 リュカ』とリスナーさんが教えてくれました。所謂ボスという奴でした。
実力はあきらかに向こうが上でせっかく緒日辻くんのおかげで戦えるようになったのに。
あの鋭い爪の前では歯が立ちませんでした。すでに全身は傷だらけ。立っているのもやっとでした。
もうダメだと思いました。そしてそれと同時に緒日辻くんに謝りたくもなりました。見ず知らずの私の為に頑張ってくれたのに、不甲斐ない結果です。
最期に一目会いたかった。私の想いを打ち砕くかのように私のお腹に突き刺さった腕。ですが、神様は最期に奇跡を起こしてくれたのです。
遠くから聴こえる心地よい声。こんな状況なのに嬉しくなっている自分がいました。でも身体に力が入らず、意識が朦朧としていきます。
せめて邪魔にならないようにと戦闘の許可を緒日辻くんに与え、私は意識を失ってしまいました。
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
これにて閑話も終了。のはずだったのですが、もうちょっと続けさせてください。
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