閑話 魔法少女の初恋 前編

 私の名前は八木やぎ 夏美なつみといいます。自分で言うのもなんですが、普通の女子大生です。むしろ普通より目立たないような女子大生です。そんな私ですが、なぜかダンジョン配信というものをやらされています。


 きっかけは事故でした。私はあの時、確実に死んだと思っていました。だって、目の前には大型のトラックが迫っていたので。私は怖くて怖くて目を閉じて、衝撃が来るのを待っていました。目を閉じた直後、私は案の定、今まで受けた事がないような衝撃を受けました。死んでしまうのかなぁと漠然と思っていたら、いつの間にか土の壁に囲まれたおかしな部屋に入りこんでしまいました。最初は天国かと思いましたが、雰囲気というかなんというか不格好でとても天国とは思えませんでした。


 そしてそこからおかしなアナウンスが流れると、おもちゃのステッキが突然上から降ってきて、それを慌てて持ってみたら、なんと魔法少女になってしまったのです。


 あれは恥ずかしかった。だって二十一にもなって魔法少女ですよ? しかもあんなにヒラヒラスカートで全身がなぜかピンクになってますし……。


 あわあわしてる間にも近くにおかしなカメラはやってきて、たくさんの人に見られるという恥ずかしさ。羞恥心はピークに……。


 ま、まぁそれはともかく、そこからも大変でした。いきなり変な生き物に遭遇して、あれは死ぬかと思いました。ううん、あの時は私の運がよかっただけ。たぶん中年のおじさんだったのかな? たぶんなのは、元の顔が既にわからないくらいにボコボコにされてて。もう服装と雰囲気でしか判断出来なかった……。そのおじさんが襲われてたから私に気付くのが遅くなったの。


 私は怖くなってその場から逃げてしまった。何とか逃げ切れたものの、その後は逃げた事による罪悪感に押しつぶされそうになり、ビクビクしながら進んだわ。だけど、やっぱりあの変な生き物がところどころにいて、その度に見つかる前に逃げてたの。


 そんな感じで必死になって逃げてる間に気が付いたら一回目の配信が終わり。配信が終わって気が付いたら自分の部屋でした。それから次の配信まで大学や街でちょっとした騒ぎになったりはしたけど思い出したくないからここでは語らない、いえ、語れないです。


 それも過ぎればあの日が夢だったんじゃないかって思う程に日常生活へ戻れてたんだけど……、やっぱり運命は逃がしてくれそうになかった。


 そして二回目の当日、私は決心したの。今度は頑張ろうって。あんなひどい目にあって、たくさんの人に死んでる姿を晒されて、なのに死んだらみんなの記憶から私がいなくなるなんて。そんなの嫌。絶対に嫌。死にたくない。死にたくないよ。


 そして前回と違って覚悟を決めて挑んだ第二回目。前回の洞窟? と違って今度は森林でした。


 ここってどこなんでしょうね? いきなり飛ばされて、知らない植物だらけ。私の大学の専攻は植物学なので、植物について他の人よりちょっと詳しいのですが、どの植物を見ても新種ばかりです。思わず手に取って調べようか迷いましたが、前回の事を考え、手を止める事にしました。


 そして移動を開始して暫くした頃、ついに魔物に出会ってしまいました。今度の魔物は大きな狼。リスナーさんがいうにはグレイウルフというそうです。


 まだ一匹……。私は覚悟を決めてステッキに力を込めて変身しようとします。ですが、運命は私に味方してくれませんでした。後ろから違うグレイウルフが襲い掛かってきてステッキを噛みつかれて変身出来なくなったのです。


 私の心にはまだ甘えがありました。本気でなろうと思えばきっと変身して魔法少女になれてたと思います。咄嗟に恥ずかしさや、恐怖心が勇気に勝ってしまいました。そこからは死なないように必死になって避けたり石を投げたりしてましたが、相手の方が上手でいつの間にかグレイウルフがいっぱいになっていて、完全に囲まれてました。追い立てられるように吠えられていたので、仲間のいる場所へ誘い込まれていたのでしょう。


 その時、私は死を覚悟しました。グレイウルフ達の鋭い牙、こちらを獲物としか見ていないその眼。怯えれば怯える程、嗤っているように見えました。


 気持ちが折れ、諦めかけたところでグレイウルフ達が一斉に飛び掛かろうとしてきました。その時、突然私の周りに炎が舞い上がりました。思わず変な声が出てしまいます。幸いにも少し距離があったので私にはケガも何もありませんでした。そう、まるでこの炎は私を守ってくれようとしているみたいです。


 そして私の目の前に現れたのは一人の青年でした。


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 最後まで読んでいただきありがとうございます!


 今回はナツミンのお話を挟んでみました。一話で納めるつもりがちょっと長くなってしまったので前後編に分けています。


 後編もお楽しみに。


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