第24話 決着

 斬り落とされた腕が宙を舞い、そのまま地面へと落ちた。そして落ちるのと同時に、今度は首を落とす為に狐火を振るう。それをリュカがギリギリのところで躱し、で反撃をしてきた。


‘‘折ったはずの爪が生えてる!‘‘


‘‘よく見たらさっき斬ったばかりの左腕も戻ってるじゃん‘‘


‘‘どうなってんだ!?‘‘


‘もしかして‘再生能力か!‘‘


‘‘それ無敵じゃん‘‘


‘‘しぶとい‘‘


‘‘どうやって倒すんだ?‘‘


‘‘はやくメェくんにやられちゃえよ!!‘‘


 リスナー達は焦っているようだが、俺にはこの能力が無敵ではないのがわかる。確かに再生能力は厄介だが、どうやらポーション同様、失った体力までは戻らないようだ。見た目は元通りだが、肩で息をしている。つまり無限に再生出来る訳ではない。そうなると再生出来なくなるまで斬り続けるか、再生出来ない程、粉々にしてしまえばいいのだ。


「グルルルルルルルル」


 手負いの獣は怖い。まさに目の前にいるリュカがそうだ。一見追い詰められているように見えるが、その目は狩人そのものだ。今も隙をうかがっているのがわかる。


 深呼吸をする。次の立ち合いが最後になるからだ。お互いにこれ以上余裕もないだろう。


 ここで一番の問題となるのはあの鎧だ。今の俺でもあの鎧が壊せるかはわからない。だが、どんなに腕や脚を斬ろうともリュカは簡単に倒れるような事はないだろう。ここで時間が掛かったら仙薬の効果が切れるか、ナツミンが死んでしまう。そうなったら俺のゲームオーバーだ。そうならない為にはどうにかして俺の全力をあの鎧にぶつけるしかない。


 リュカもこの空気を察したのか、力を溜めているようだ。既に両腕の筋肉が盛り上がり、二倍程の大きさまで膨れ上がっている。


 お互いの間合いをはかる。そして緊張感が最高潮になった時、リュカが動き出した。今までで一番の速さで俺に迫ってくるが、今の俺にとってはそれでもスローモーションだ。狐火を鞘にしまうと抜刀の構えを取る。


 まだ三歩程遠い距離からリュカが爪を腕から切り離し、こちらに飛ばしてくる。


 まだそんな手札残してるのか!? 倍以上に膨れ上がった腕から放たれる爪の勢いは凄まじく、受け止めようと思えばただではすまない。ならば避ければいいだけなのだが、避けさせない罠が潜んでいる。俺の背後にナツミンが寝ているのだ。距離はある。だが、今の勢いでは普通に届いてしまうし、当たれば即死だろう。


 足に力を入れ、上空にある物を投げると、飛んできた爪を狐火の鞘で受け止め、何とか横へ受け流した。その隙に再生した爪を含めた両爪で俺を引き裂こうとした。


「クロ!!」


  地面に隠れさせていた盾のように格子状に拡げたクロをリュカの前に出す。一瞬リュカは怯んだが、そのままリュカは全力で爪を振り下ろした。


 クロと爪がぶつかり合う音が鳴り響く。クロごと俺を切り裂こうとするリュカ。それを防ごうとするクロ。何とか耐えようとしてくれていたクロだったが、抵抗虚しく、勝ったのはリュカの爪だ。ニヤリと嗤うリュカは、クロを引き裂いたままの勢いで俺の腹部も引き裂いていく。


「ぐっ!!」


‘‘ぎゃあああああああああ!!‘‘


‘‘メェくん!?‘‘


‘‘斬られた!?‘‘


‘‘うそだろ!?‘‘


‘‘まさかメェくんが負けたのか!?‘‘


‘‘そんなバナナ!?‘‘


 血だらけになっている俺の姿にリスナー達が慌てている。だが心配はいらない。これも計算済みだからだ。


 実はクロを盾だけではなく、鎖帷子くさりかたびらのように防具として腹部に忍ばせていた。そのおかげで斬られてはいるが二重で威力を殺した分、だいぶ弱まっている。それでも痛いには変わりないが、死ぬよりましだ。そしてこのタイミングで上に投げていた物が落ちてきた。それを狐火の鞘で叩き割る。


 中身はポーションだ。瞬時に傷口が回復すると、再び抜刀の構えを取り、溜め込んでいた力を一気に解放する。


「これで終わりだ。『百狐繚乱ひゃっこりょうらん』」


 鞘から抜かれた狐火の刀身は、見惚れる程に綺麗な蒼色に輝いている。


 一閃。


 あまりの高温にリュカの鎧が煙をあげ、まるでバターのようにスパスパと斬り刻まれていく。


「ガアアアアアアア!!」


 斬り刻まれながらも抵抗しようとするが、もはや指一本動かす事すら出来ず、リュカが出来る事はせいぜい叫ぶ事だけだ。


 「これで終わりだ」


 最後の力を込め、どんどん加速していく斬撃。もはや視認する事は誰にも叶わず、この斬撃はリュカを燃やし尽くすまで続くのだった。


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 最後まで読んでいただきありがとうございます!


 決着です! 次話で第二章も終わり、第三章へと舞台をうつしていきます。


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