第21話 狼神 リュカ

「ナツミン!!」


 俺は瞬時に巨大な狼男に向かって『狐閃』を放つ。それを避ける為、貫いた腕を抜いてナツミンから離す事に成功した。その間に倒れたナツミンのもとへ走る。


「ま、まさか最期に緒日辻くんに会えるなんて。えへへ、ごめんなさい、ドジっちゃいました。緒日辻くんのおかげでやっと戦えるようになったのに……。あ、遅いかもしれませんがあんなやつ殴っちゃってもいいですよ」


「こんな時にそんな心配するな!」


 いいか悪いか微妙だが、攻撃は当たらなかったので今回のは横取りにはならないだろう。


 だが、そんな事よりナツミンの状態だ。話している間にも血は流れ続け、命が失われていくのがわかる。俺は慌ててアイテムバックからポーションを取り出し、ナツミンの口へと流し込んだ。ちなみにこのアイテムバックもアイテムショップで購入した品だ。これを持っているとアイテムショップで購入した物を仕舞っておく事が出来るようになる。


 ナツミンは少しずつポーションを飲み込むと、すぐに効き目が表れ、傷口は瞬く間に閉じた。だが、それでもナツミンに元気になる事はなかった。


‘‘メェくんのそれはなんだ!?‘‘


‘‘すげぇ、一瞬で傷口が塞がった!?‘‘


‘‘何もないところからアイテムも出て来たし!?‘‘


‘‘他の配信者も使ってたけどあのアイテムはポーションかな?‘‘


‘‘ポーション使ったけどナツミン元気ないね……‘‘


‘‘完全には治せてないのかも?‘‘


 リスナー達が言っている通り、ポーションは傷を塞いだり、四肢の欠損は治せるが全てを治してくれる訳ではない。一度失った血や、体力までは元に戻らないので血が足りなければ死んでしまう恐れがある。身体のど真ん中を貫かれたナツミンはむしろその瞬間にショック死になっていてもおかしくなかった。それでも生きていたのは恐らく一度目の器の最適化によって精神的に強くなっていたからであろう。


「このままじゃ死んじまうな……」


 触れている身体の体温が低い。顔色は土色のようになっているし、唇も真っ青だ。


「あれを使うしかないか」


 万が一の為に購入していたアイテムを取り出そうとしたその瞬間、目の前に巨大な狼男の爪が振り下ろされた。ナツミンを抱えながら咄嗟に躱し、距離を取る。


「くそ、邪魔しやがって」


 このままじゃナツミンは死んでしまう。その前にこの狼男を何とかしないと。


 まずはナツミンの安全確保だ。


「『円狐』!」


 狐火を振るうと、真っ赤な炎の渦が舞い上がった。その渦は瞬く間に巨大な狼男に迫り、それを避けさせる事で引き離す事に成功した。


 俺はその間に少し離れた木陰にナツミンを下ろすと、再び狼男の前に飛び出る。既に狼男は『円狐』を爪で切り裂き霧散させていた。


 改めて対峙すると、その狼男の異常さが浮き彫りとなった。あきらかに煌びやかな鎧を身に着け、牙と爪は黄金色に輝いている。その体躯は二メートルを超え、遠目からでも筋肉質で出来ているのがわかった。そして一番気になったのはその目である。こちらの感情まで見透かされたような錯覚を起こすような深い蒼の瞳。そしてパッと見ただけでわかる強者のオーラ。


 どう見ても只者ではなかった。


‘‘……こいつは狼神 リュカだ‘‘


‘‘リュカって狼男の始祖みたいなやつだよね?‘‘


‘‘そうそう‘‘


‘‘いかにもボスって感じするな‘‘


‘‘メェくんはこいつを倒してナツミンを救えるのか!?‘‘


‘‘メェくん頑張れ!!‘‘


 狼神 リュカか。まさか神様が相手とは。まぁ名前に神が付いてるからって神様とは限らないけどね。それでも神が付く位だから相当の強者なのだろう。だからなんかこっちを下に見てるのか。いや、ライカンスロープも俺を下に見てきてたか。種族的にプライドでも高いのだろうか?


 空気がピリピリと震えてくる。一歩動き出す時、それが戦闘の合図だ。全身に神経を張り巡らせ、タイミングを見計らう。


 遠くで木片が落ちたその瞬間、まずはリュカが動き出した。一瞬で俺の目の前に現れたリュカは獰猛な笑みを浮かべながら、小手調べと言わんばかりに先程と同様、長く伸びた爪を振り下ろした。


――――――――――――――――――――――――――――


 最後まで読んでいただきありがとうございます!


 少し短くなってしまいましたがきりがいいところで切っちゃいます。次話より本格的な戦闘にうつりますのでお楽しみに。


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