第14話 二十一歳は魔法少女といってもいいのか
「それは――――」
恥ずかしそうにしつつも決心したのか、背中に隠していたステッキを俺の前に出す。それは女の子が見るようなアニメに出てくるようなカラフルなステッキだった。
「わ、私、実は魔法少女なんですっ!!」
サイドにあるスイッチみたいなものを押すと、どこからか音楽が流れだす。
「変☆身」
ステッキを音楽に合わせてリズミカルに振ると夏美さんが突然光り出した。あまりの眩しさに目を閉じてしまう。
そして光が収まったので目を開けてみると、夏美さんがフリフリのスカートを着て、ポーズを決めているのであった。
ポージングを決めたまま動かない夏美さん。これは動く為にも何かきっかけが必要だろう。
「夏美さんって今いくつなんですか?」
‘‘それは聞いたらあかんぞ!‘‘
‘‘メェくんの人でなし!!‘‘
‘‘公開処刑の現場はこちらですか?‘‘
思わず聞いてしまったが、確かに女性に対してこの発言は失礼だったかもしれない。
ポロっと出てしまった言葉に彼女の目が潤んでしまう。その姿は、今にも泣きそうだ。
「あ、あの……」
「うぇ~~~~~~~~んっ! 二十一にもなって魔法少女とかごめんなさ~~いっ!」
その場に座り込んでしまい、わんわんと泣き出してしまった。
「ご、ごめんね……?」
わんわん泣いている魔法少女な二十一歳とそれを眺める俺。どこからどう見てもシュールとしか言いようがなかった。
――――――――――――――――――――――
暫くしてとりあえず泣き止んだ夏美さん。だが、立ち上がりはしてもいまだにいじけ続けている。それでもさっきよりは生き返ったようなので時間も勿体ないし、声をかけるとしよう。
「落ち着きましたか?」
塞ぎこんでいた夏美さんを覗き込むようにして見ると、今度は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。忙しい人だなぁ?
「ぷいぷいっ」
何その効果音? 顔を背けるので、正面を見る為に俺も動く。すると、それに合わせて夏美さんも謎の効果音とともにそっぽを向いていく。
「で、えっと、その魔法少女って何なんですか?」
夏美さんが息が上がってきたところで、とりあえず話を進める事にした。もっと運動した方がいいよ? いつの間にか夏美さんは夢中になっていたらしく、気がついた時にはとても恥ずかしそうにしていた。
「え、えっとですね。変身すると、魔法が使えるようになるんです」
立ち上がった事でしっかりと全身が見えるようになった。その姿はまぁわかりやすく魔法少女だった。全身ピンクに三角帽子を被り、少し長めのフリフリスカートは風によって綺麗に靡いている。そしてその胸元には大きなリボンと真ん中に宝石がついていて、キラキラと輝いて存在を主張していた。夏美さん自身が二十一歳なだけあって、見た目は普通に大人な雰囲気だ(中身には触れない)。むしろスタイルは普通の人よりはいい方だと思う。特に真ん中の宝石を挟み込んでいる二つの山が凄い。もの凄い。流石大人といったところだろうか。変身前までは真っ黒だった髪も変身後はピンク色になっていてそれが余計にコスプレ感を際立たせているようだ。
「魔法ってどんな魔法何ですか?」
何となく想像もつくが、一応確認してみる。
「踊りながら呪文を唱えると、その呪文に合った魔法が使えます」
踊らなきゃならないのは面倒くさいが、もしまともな魔法ならちょっと憧れる。
「そうなんですね。ちなみに何で先程は変身して戦わなかったのですか?」
‘‘なんか尋問みたいで草‘‘
‘‘メェくん興味津々じゃん!‘‘
‘‘やっぱ男はおっ〇いなんか!‘‘
‘‘私だって負けてないんだからね!!‘‘
‘‘俺だって!!‘‘
‘‘↑お前の場合ただのデブなだけだろ!‘‘
「いや、だって魔法だよ!?」
まぁリスナーにとってはただのエンタメだからあれなんだろうけど、俺からすれば本物の魔法って普通にいいじゃん! 男として気にならない筈がないだろ!
「――――しかったんです」
リスナーと言い合いをしていると、小さな声で夏美さんが何か言っているのがわかった。
「えっ?」
小さすぎて聴こえなかった為よく聞こえるように耳をすましてみる。
「私、運動音痴だから踊るのが恥ずかしかったんです!! しかも二十一でこの格好は厳しかったんです……!」
急に大きな声になってビックリしたが、内容的には普通に切実な感じだった。まぁこういう格好って子供だったり、本業にしてる人だったらいいけど、そういう人じゃないと中々勇気がいると思う。
「けどこのままじゃまずいよな……」
「え?」
このまま死んでしまうとか勿体ないでしょ!?
「よし! 夏美さん! せっかく変身しましたし、戦闘もしてみましょうよ!」
‘‘メェくんやりたい放題だな!‘‘
‘‘唯我独尊すぎる笑‘‘
‘‘いきなりすぎません?笑‘‘
だってこのままじゃ、グレイウルフに殺されちゃうじゃん? それに今の変身した姿に慣れさえすれば、配信としても数字が取れると思う。主に増えるのは男性リスナーだろうが。今もリスナーに返信している様子を見ていると、リスナー数もコメントも増えているようだ。だって踊ればバインバインだろうからな。男性諸君は期待もするだろう。
まぁ俺の本音を言うならば魔法も見てみたい。憧れるもんね。だから刀なのにプルプル震えてる狐火には止まっていただきたい。
ちょっと戸惑っていた夏美さんだったが、このままじゃまずいと本人も自覚してたのか、決意した表情で頷いた。
夏美さんも決心してくれたので、移動を開始する。とりあえず何があっても俺が守るつもりなのでまぁ大丈夫だろ?
――――――――――――――――――――――――――――
最後まで読んでいただきありがとうございます!
他の配信者のコメントは見えません。なので何を話しているかは本人しかわかりません。それはコラボでも同様です。よろしくお願いします。
もし、少しでも面白かった! 応援してもいいよ!! って方いましたら、フォロー、応援、☆評価をよろしくお願いします。
評価される事、それが何より執筆への励みになります。今後も精一杯面白くなるよう頑張りますので、是非、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます