第13話 人たらしなメェくん
見つけた女性は、複数のグレイウルフに囲まれた状態で何とか戦っている。だが、このままだとグレイウルフにやられてしまう可能性が高そうだ。
「助けるべきか、うーん」
‘‘あれ、助けないの?‘‘
‘‘意外とメェくんって薄情者?‘‘
‘‘違うだろ。コラボ相手以外の横取りは禁止だからだよ‘‘
「そうなんですよね。とりあえず助けを求めてるかどうか確認してみますか」
リスナーがコメントした通り、基本的にコラボ相手以外は相手の魔物に手を出すのはご法度だ。何でもありになってしまうと配信として成り立たなくなってしまう。その為、今回のように助けに入るのにもいちいち相手に確認を取らなければならない。
ちなみに破った際のペナルティの具体的な記載はないが、どうせ碌な事ではないだろう。(二回目)
とりあえず話が出来るように魔物さんにはこちらに注目してもらうとしよう。
「『
女性に被害が出ないように注意を払いながら狐火を振り抜く。すると、真っ赤に燃え盛る炎が渦を巻きながら女性とグレイウルフの間の壁になるように立ち塞がった。
「えっ? えっ?」
急に驚かせてしまって申し訳なくなるが、緊急処置だから許してほしい。確認して大丈夫だと言われたら単純に『円狐』を消せば問題ないはずだ。
自ら作った炎の渦を飛び越え、女性の傍に降り立つ。
「ひゃっ!?」
「急に驚かせてしまってすみません。俺は緒日辻 進といいます。もしお困りでしたら助太刀いたしますがいかがでしょうか?」
突然上から降ってきたせいかビックリして固まってしまった女性だったが、目が合った途端、顔が真っ赤になり、倒れそうになる。それを慌てて支え、なるべく丁寧に怖がらせないよう、優しめに声をかける。
すると最初は顔を真っ赤にして固まっていた女性もカクカクとロボットのように動き出した。顔は変わらず真っ赤だったが。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、の、あり、ありがとうございましゅ! あ、ございます!! 是非、是非助けてくだしゃい」
……テンパりすぎじゃなかろうか? まぁいい、了承は得たので助ける事にしよう。
「わかりました。『
手を振りかざすと、俺達を囲んでいた炎の渦がそのまま波のように全方位に拡がっていく。高波のように押し寄せてくる炎の渦を相手にグレイウルフ達の逃げ場などなかった。渦に飲み込まれたグレイウルフ達は、一瞬で燃やし尽くされ、周囲は焼け野原とグレイウルフの燃えカスが残っただけだった。
「す、すごい」
女性を見ると、顔が赤いまま、口を開けて呆けているようだ。
‘‘堕ちたな‘‘
‘‘メスの顔しやがって! 私のメェくんにメスの顔を向けやがって!!‘‘
‘‘これはメェくんが悪い‘‘
‘‘メェくんの人たらし!!‘‘
‘‘ていうか普通に今の技がえげつない‘‘
‘‘辺り一面、焼け野原だからな‘‘
どういう事やねん!! とりあえずどこかにいってしまっているこの女性を現実世界に戻そう。
「これでとりあえず大丈夫でしょう。えっと、失礼ですが立てますか?」
今も支えたままなのだ。いやむしろ抱き締めているのに近い。かなり密着している状態なので、俺としても流石に恥ずかしいのでちょっと離れてほしい。
「は、はいっ! だ、だだだ大丈夫でしゅ!! はぅっ」
かなりドジなのだろうか。先程から噛み噛み状態で慌てて離れていった。そして離れてからももじもじとしていて、チラチラとこちらを見るだけで何も話してこない。
「確か、あなたは
この人は登録数が五人の中で、確か一番少なかった人だった筈だ。切り抜き動画も見たが戦闘シーンは特になし。逃げまくってるシーンしかなかった気がする。
「そ、そうです。よ、よく覚えてますね」
「同じ企業の配信者じゃないですか。当然覚えてますよ。それにしてもお互いに無事でよかったです」
幸いにも俺が通ったからよかったが、あのまま一人で戦っていたらどうなってたかわからなかった。
「けど、私、目立たない子なので……。登録者も少ないですし……。今も三十人くらいしか見てくれてません。あ、いや、こんなに見てくれてるのは嬉しいです! 感謝です!!」
どうやら三十人しかと言ったところでリスナーにいじられたようだ。確かにおどおどしてるのでいじりやすいのだろう。俺はそういうのはあまり好きではないのでやらないが。
ちなみに今の配信を見てくれているリスナー数が五百人を超えている。この差は実力とかだけではなく、運も含まれていると思う。あと、自画自賛みたいであれだが、単純に俺の数字が謎に高いだけだと思う。調べてみてわかったが新人なんて普通は登録数もリスナーの数もそんなに多くない。
何より俺の配信には狐火もいるからな。マスコットキャラの存在はでかい。
「これから増やしていけばいいじゃないですか。それより気になったのですが、装備はどうしたのですか?」
先程の戦いにおいて、気が動転していたとしても武器の一つも持っていないのはあきらかにおかしかった。何か理由があるのだろうか?
「それは――――」
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
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