第11話 新たな魔物
幸いにも道はそこまで険しくなかった。ここを進めといわんばかりに獣道もちゃんとあるし、視界は悪いが虫もあまり飛んでいない。気候も穏やかで暑すぎず、寒すぎずでちょうどよかった。
「お散歩日和やで」
狐火とお手々を繋いで思わずほっこり。
‘‘そこダンジョンやで?‘‘
‘‘そやそや‘‘
‘‘何でみんな関西弁なんだよ笑‘‘
‘‘メェくんに染められました‘‘
‘‘メェくんが悪いんよ‘‘
‘‘みんなを染めちゃうそんなメェくんも素敵♡‘‘
だってまだ敵の気配すらないんだよ? それに油断してるつもりはない。俺はいつでも臨戦態勢だし、狐火も俺と手を繋いではいるものの、敵が来たらいつでも火を放つ事が出来るだろう。
ちなみに今までの狐火には戦闘能力が無かったが前回ダンジョンコアを吸収した事で自分自身でも火を放つ事が出来るようになった。更に腰には小刀がある。見た目は狐火が刀になった時の見た目をそのまま小さくしただけだ。刀が刀を持つという摩訶不思議な状況ではあるが、これで何かがあって狐火が戦わなければいけなくなった時にも単独で戦う事が出来る。
まぁ戦力的な部分で考えるなら俺が最初から狐火を持って戦う方がリスクも低くなるだろう。だが、それだと配信的に華がなくなってしまう。正直俺が独り言を話しているだけではリスナーも飽きてしまうだろう。別に俺って話すの得意な訳じゃないしな。ところがどっこい、そんな地味な配信も可愛い幼女がいるだけでリスナーもニッコリってもんよ。
あと、単純に俺自身が一人でいるより狐火と一緒の方がリラックスできるのもあるんだけどな。刀でも話は出来るが人型かそうじゃないかって気分的に違うし。そういう意味でも他の配信者とコラボするのもありなのか? 今回はまだ自分自身の準備が整っていないので一人で行く事にしたが、次あたりは誰か良さそうな人がいたらお願いしてみよう。
うーん、誰も犠牲にならなきゃいいんだがな……。
コラボするにも誰もいなくなってしまっては意味がない。その辺運営はどう考えてるんだろう? 可能性的に全滅だってゼロじゃないんだが。少なくとも既に六人の人間が犠牲になっているんだ。下手をすると俺が知らないだけで、最初はもっと人数が多かったのかもしれない。俺が知った地点で十人だっただけだからな。死んでしまったらみんなの記憶から消される。他の配信者はその辺どう考えてるんだろうな?
そんな事を考えているうちに周囲から敵意を感じた。まだそこまで近くないが、既に相手はこちらに気付いている。ちらりと狐火を見ると、狐火も既に気付いているようだ。流石相棒といったところか。
「敵が近づいてきます」
‘‘何でわかるん?‘‘
‘‘他の配信者さんはそういうの全然気付いてないんだけど‘‘
‘‘メェくんの特殊能力かな?‘‘
‘‘特殊能力ってなんやねん!笑‘‘
「うーん、特殊能力っていうか勘が鋭くなったというか。まぁ何となくわかるようになったって感じですね。とにかくそろそろ敵の姿が見えてきます」
今度はどんな敵だろうか。気持ちが高まってくる。狐火の手を放し、自然体のまま敵がこちらに来るのを待った。ヤバイ、にやけてくる。
‘‘普段は優しそうな顔してるのに戦う時かっこよくなるのずるい‘‘
‘‘羊の皮被った狼なところが好き‘‘
‘‘すき‘‘
‘‘すき‘‘
‘‘ガチ勢が多くない?‘‘
‘‘まぁかっこいいもんな‘‘
‘‘かっこいいよな‘‘
コメントに返事をしたいが今はとにかく目の前の敵だ。暫くして現れたのは数匹の牛くらいの大きさの狼だった。
「でっけぇな」
‘‘でかすぎひん?‘‘
‘‘メェくん逃げてええええええ!!‘‘
‘‘羊が狼に勝てるわけないやんけ!‘‘
あまりの大きさにリスナー達が大騒ぎしている。確かにでかいが不思議と怖さは感じない。
涎を垂らしながら警戒していないのか、躊躇することなく無造作に近づいてくる狼達。まぁ数も向こうが多いし、こっちはガキと幼女だからな。だけど、ただのガキと幼女じゃないからな。すぐにわからせてやる。
「狐火」
「はいなの!!」
俺が狐火を呼ぶと狐火は瞬時に刀へと変化する。そして刀を抜くのと同時に一匹の狼が飛び掛かってくる。
「さて、どんなもんかな」
愉しくなってきたぜ。
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