第9話 『アイテムショップ』

 その後、先輩は今までが嘘のように大人しくなり、俺に絡んでくる事もなくなった。そして俺は人気者になるどころか周囲の人間が離れていった。どうやらやりすぎたらしい。


 どういう事だってばよ!!(二回目)


 普通こういう時にカッコいいところを見せたらキャーキャー言われるものじゃないのか? やっぱ最後にバスケットのリングを破壊したのがあかんかったのか? そうなのか?? 身体が軽いなぁとは思ってたがまさか百七十センチ程度しかない俺が簡単にダンク出来るとは思わなかった。最後に先輩の心を折るつもりで叩き込んだらリングが折れるとは誰が予想できようか? いや出来ない。だから俺は悪くないんだ。嘘です、ごめんなさい。


 帰宅後にジャンピング土下座を親にかました結果、来年の俺のお年玉はどこかへ行ってしまったようだ。これが先輩の策略だったのか。許さんぞ!!


 そして、それでも俺のそばにいてくれる優しい幼馴染には感謝せざるを得ない。真帆まで離れてたら俺はきっと不登校になってしまっただろう。そしたらただのダンジョン配信者になってしまうじゃないか。あれ? そんなに変わらないか。


 まぁ過ぎてしまった事だし、もう学校の事は忘れよう。ていうか忘れなきゃやってられない。ぐすん。


 そんなことより今日は二回目のダンジョン配信の日だ。


 俺は今、とある時間になるのを待っている。


 そう! 『アイテムショップ』の開放タイムだ。配信の一時間前になれば使えるようになり、そして前回の配信で得たDPでアイテムを購入出来る。


 いや、そのままやんけ。まぁそれはいいとして、まだ何が売っているかわからないが、ダンジョン配信に必要な物が売っているのは間違いないだろう。ダンジョンが危険な場所なのは前回でわかってる。なのできちんと準備して臨まなければならない。ただし、購入した物は基本的には配信内でしか使えない(一部例外を除く)。


 ソワソワしながら(狐火の頭をモフモフして)待っていると、配信の一時間前になった。これには狐火もニッコリ満足。尻尾がよく揺れておるわ。


『配信一時間前になりました。アイテムショップが開放されます』


 きた!!


 慣れてきてしまったアナウンスが頭の中に流れてくる。慌ててYOUQUBEのマイページを開くと、『アイテムショップ』と表示された欄が新しくあった。


 運営側がやりたい放題なのに理不尽さを感じるが、今更文句を言っても仕方ない。とにかく『アイテムショップ』の欄をクリックする。


 ズラッと並ぶ数々のアイテム。武器、防具、アクセサリーなど、見ていると何だかゲームの世界に入ったようだ。


 お、ビキニアーマーなんてのもあるな。けどこんなの着ながら配信とかきつくないか? 


 おっと、目的から逸れてしまった。ビキニアーマーをスルーしてどんどん下を見ていくと、俺はお目当ての品を見つける事が出来た。


 ポーションだ。


「予想はしてたけどさ、本当にこれじゃゲームの世界だぞ……」


 ゲームの世界の方がまだ救いがある気がする。残念ながらここは現実なのだから。コンティニューが出来る訳ではない。


 ダンジョンの攻略において怪我が一番怖い。元々命の危機を感じるような痛みもケガもした事がない。もし、その危機がおとずれた時、俺は冷静に対応できる自信がなかった。そしてそれは他の配信者でも同じだと思う。


 説明の方には四肢の欠損までは治せるような説明文が表記されているので死なない限りはこれで何とかなるだろう。ちなみにたとえポーションを使わなかったとしてもダンジョン配信が終わったら元の状態に戻れるらしい。全くもって謎システムだが、治って困る事はないのでよしとしている。


 俺は前回のダンジョン配信でボスを倒している為、他の配信者よりおそらくだがDPが多い。なのでそれなりの値段になるポーションだけではなく、他の物も買えそうだ。これは他の配信者より有利になるだろう。


 とりあえずポーションをカートに入れる。YOUQUBEで買い物って違和感しかないんだが。武器は狐火があるから必要ないが、防具はどうなんだろうか? 鎧なんかもあるが動きにくくならないか? 商品をクリックすると詳細が出るのでクリックすると、やはり防具はそれ相応に重さがあるらしい。ゲームのように装備すればただ硬くなれる訳じゃないようだ。


「うーん……」


 これは今回は保留にすべきか? だけど、急所位は守ってもらいたい気もする。


「なぁ狐火? 防具ってダンジョンで必要だと思うか?」


「あるじさまはきつねびがまもるからいらないなの!!」


 即答でぷんぷん怒りながら返事をしてきた。まぁ、壁も作れるしなぁ……。やっぱ保留で。


「ん……?」


 他に役に立ちそうな物を探しているとちょっと変わった物を発見。


『配信十分前です』


「やばっ!!」


 どうする!? 勢いで買うのは怖い。だが、これは万が一の時に役に立ちそうだ。


「買ってみるか……!」


 悩んだが残り一分を切って購入。ポーションの他にいくつか購入出来たのを確認したところで時間になったのか、意識が暗転していく。


 こうして二回目の配信が開始するのだった。


――――――――――――――――――――――――――――


 次回より、二回目の配信スタートです!


 なお、この作品においてDP等、数字関係を具体的に出す予定はありません。理由は矛盾が生じやすいのと、考えるのが面倒くさいからです(率直)。ただ文字数が増えるだけですしね。同じ理由でステータスも出てきません。


 ここでいつものお願いです。しつこくてごめんね。けどお願いしたいの。


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