第7話 先輩の敵意

 教室に辿り着いてもまだ真帆に殴られていた。一発一発は大した事ないんだがこれだけ叩かれるとそろそろ左肩の感覚が無くなりそうなんだが。むしろよく殴りながらここまで来れたよな。普通どこかでやめないか? そんなに俺に恨みがあるのだろうか。この幼馴染との関係を考えちゃうぞ。


「なぁ真帆?」


 ポカポカ今も殴っている真帆に話しかける。ていうか顔まだ真っ赤じゃんか。疲れたんか?


「へっ?」


 ま、まさか無意識でここまでずっと殴ってきたのか? 嘘だろ。何だそのキョトン顔。私何かしましたってか!? いくら何でも無理があるだろ!!


 よし、冷静にだ。いくら真帆だってそこまでアホじゃない筈だ。


「あのですね、俺の左肩がそろそろヤバイんだが?」


「え、大丈夫? 誰がそんなひどい事したの?」


「真帆だが?」


 マジで言ってるのかこいつ? やっぱ真帆はアホだった。確定。決定。おい、周りの奴らがこっちを見て笑ってるんだが。俺も一緒に笑われてるみたいで恥ずかしいんだが!?


「嘘だぁ。しんちゃんにそんなひどい事する訳ないじゃん」


「マジかよ!? 教室に来るまでの記憶が真帆にはないんか??」


「え? あ……そういえばどうやって教室に入ってきたの? しんちゃんが連れてきてくれたの? えっと、あ、ありがとう」


 何で最後に照れてるんだよ!? メッチャ可愛いなおい!! 照れられても俺殴られてただけなんだが。マジでツッコミが追いつかねぇよ……。


 そのあとも漫才が続いていく。それを生暖かい目で見守ってくるみんな。公開処刑かな? みんなに文句言おうとしたところで教師が入ってきた。慌ててみんなが席に着く。


 ちっ、命拾いしたな。


 ハァ……。学校に来ただけなのになぜか疲れたわ。まぁそれでも昨日よりは大分気持ちも落ち着いた。昨日は本当にチンプンカンプンで現実なのかすらわからなかった。それは今も同じでわからない事だらけではあるが、何をすべきかだけはよくわかったからな。あとはそれに向かって頑張るだけだ。


 うん、今日は昨日より頭がスッキリしてる。とりあえず普通に授業を受けられそうだ。


―――――――――――――――――――


 バタバタと騒がしい教室。下校のチャイムが鳴った。


 あっという間に今日の学校が終わった。ていうか昨日、部活行ってなかった事に今頃気付いた。昨日はそれどころじゃなかったねん……。


 あ、だから先輩が怒ってたんじゃ? 


 まぁそんな訳ないけどな。メッチャ前から嫌がらせされてたし、いつも怒ってるもん。今も目の前でこっち睨みつけてるし。


 わざわざ教室の出口で待ってなくてもよくね? 彼女か? 俺の青春の一ページが先輩で埋まっちゃうのか? 普通に嫌なんだけど。


「おい」


 流石に無視出来ないので立ち止まった。目と目が合う。向こうはバチバチしてるけど俺はまだそんな気はない……筈。


「なんですか、先輩」


「何だじゃねぇぞっ!?」


 メッチャ敵意満々じゃん。普通に俺の事嫌いだろ。出来たらそういうのやめてほしいんだが。


 になってからちょっとした敵意でも感じてしまうと反射的に攻撃しそうになるんだ。これも最適化の影響なのかね? まぁこれからのダンジョン配信には役に立ちそうだが、こういう時にはちょっと困るかもしれないな。


「てめぇ、昨日の部活さぼっただろ?」


 はい。さぼりました。けど素直に言ってもなぁ……。


「いえ、ちょっと用事があったんで……」


「用事ってなんだよ」


 松井のとこ行ってたって言っても伝わらないからなぁ。何て言えばいいんだ? あぁ、めんどくさいから秘密でいいや。


「えっと、秘密です」


「なんだとっ!?」


 何でこれくらいで怒るんだよ! 誰だって話せない事あるだろ!?


「何で先輩に話さないとダメなんすか?」


 ちょっとむかついてきた。こっちはずっと思い悩んでるってのに何でこんなに突っかかってくるんだよ。俺の事嫌いなんだからむしろ来ない方がいいだろ?


「何だ、その態度は? 来い! 体育館でどちらが偉いか分からせてやる」


「あ、ちょうど部活行く予定だったんたんで、一緒に行きましょうよ」


 売られた喧嘩は買ってやる。険悪な雰囲気の中、俺と先輩は体育館へと向かうのだった。


――――――――――――――――――――――――――――


 本日二話目(勢い)


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