第5話 ダンジョン攻略のあれこれ

 それでは、本題ともいえる配信の説明を読んでいこう。


 基本的には、週に一度のダンジョン配信が行われるようだ。そしてそれぞれの配信者には配信してもしなくてもどちらでもいい配信枠を週に一度だけ配信出来る。


 この配信とダンジョン配信の主な違いは、アーカイブが残されるか否か。ダンジョン配信は残されず、個人で配信出来る方はアーカイブを残す事が出来るようだ。


 そしてこれも大事な事だ。配信者同士のコラボである。誰とでもコラボは出来るが、コラボ配信した場合、次の週のダンジョン配信は誰とのコラボを組めず、一人でダンジョン配信をしなければならない。更に同じ配信者とは連続でコラボは出来ず、次にコラボする場合は他の配信者としないとダメとの事だ。


 ちなみにコラボする場合、配信する際のスタート位置が一緒になるらしい。カメラもコメントも別々であくまでコラボ相手と最初からダンジョンを攻略出来るってだけだ。


 他の配信者の動画を拝見させてもらった事で同じダンジョンにいたのも確認出来た。動画といっても当時のライブ配信ではなく、見所として運営側が各配信者のダンジョン配信中の様子をショート動画として切り抜き動画を投稿してくれていたのだ。


 俺の切り抜き動画も勿論あった。中身は最後のゴブコを倒したシーンだった。この切り抜き動画はダンジョン配信する毎に投稿してくれるらしく、リスナーはこれを参考に推しを選べって感じなのだろう。


 まぁはこんな感じだった。そして表向きという事は裏もある事を指している。今、マイページに重要事項と書かれた通知が来ている。


 俺は迷わず、通知を押した。ここで躊躇っても意味がないからだ。


「危なかった……」


 最初の注意事項が他人には見せるな、か。見せたらどうなるかは書かれていないがどうせ碌な事になってなかっただろうな。一応企業勢に所属している事になるから見せれないって言い訳がここにで役に立っていた。


「まぁ真帆は納得出来て無さそうだったけどな」


 まぁ実際のところ俺の説明をかなり怪しんでいた。俺が嘘をついているのはバレているみたいだ。どうやら長年俺と付き合ってきたせいか、俺の感情なんてすぐにバレてしまうらしい。いつだったかメッチャドヤ顔で自慢された。だから俺もその時、真帆がどんな事思ってるかなんて大体わかるけどなって言ったら顔を真っ赤にして黙ってた。ふ、勝ったな。


「まほってだれ? なの」


「うおっ!?」


 当時の事を思い出していると、驚くほど冷たい声が聴こえてきて思わず振り向く俺。そこには妙に冷えた笑顔を見せた狐火がいた。


「ま、真帆は俺の幼馴染だ。腐れ縁ってやつだよ」


「ふーん、なの」


 俺の説明に納得いったのかわからないが一応頷いてくれた。だが、俺にはわかる。まだ拗ねてる。俺は狐火がどんな事を思ってるか大体わかるからな。あれ、これどっかで言ったっけ?(すっとぼけ)


 こりゃあとで油揚げをたくさん買っておかないと……。


 ふふふ、我ながら完璧な作戦だ。今度油揚げで何が作れるか探しとかなきゃ……。さて、とりあえずこれ以上余計な事を言うと、今より状況が悪化するから次の説明を読もう。


 まず、ダンジョンでの評価についてだ。評価対象は、チャンネルの登録数、配信の視聴者数、今はまだ解禁されてないがスーパーチャットの金額、魔物の討伐数、ダンジョンコアの破壊の五つに分かれている。そしてこの評価に対する対価が最初の配信の最後に出ていた『DP』というポイントに換算されて配布されるとの事だ。ちなみにスーパーチャットで得た現金がこちらに入る事はないらしい。その代わりが『DP』だそうだ。


 そしてこの『DP』とはダンジョンポイントといい、配信の一時間前に出てくる『アイテムショップ』で必要になるポイントだそうだ。ダンジョン配信に有利アイテムを買う為のポイントで今のところ何が売られるのかは不明。出来ればこういうところも詳しく教えてもらえると助かるんだけどなぁ。


「なぁ狐火、DPで何が買えるかわかるか?」


 少しは事情を知ってそうな狐火に訊ねてみる。


「ふみゅ? きつねびはそのでぃーぴーがなにかわからないなの」


 首をこてんと傾げて答えるその可愛らしい姿に嘘偽りは無さそうだ。(主観)まぁ、実際に見てみた方が早いだろうな。


 他にも細かい禁則事項等があったがこれはそんなに問題無さそうだった。だが、最後の一文字に心が冷えていくのがわかった。


『ダンジョン配信中に死亡した場合、全ての人からその存在は抹消される』


「松井……」


 このぶつけようのない感情が全身に渦巻いていく。すると突然狐火が抱き着いてきた。その瞳は慈愛に満ち溢れ、その様子に俺は動く事も出来ず、ただただ受け入れる事しか出来なかった。


 やがて落ち着いてきたところで狐火から離れた。ニッコリ笑うその姿はいつもの狐火だ。今はそのいつも通りの姿が嬉しかった。


 気持ちが整理出来た訳じゃない。だけど、あまり感傷に浸っても仕方がない。次のダンジョン配信も迫っているのだから。


 一通り読み切ったのでYOUQUBEを閉じる。


 うーん、思ったより収穫が少なかった。これから考えなければいけない事がたくさんあるが、せめて今日位はゆっくり休もう。


「ありがとな」


 狐火の頭をひと撫でし、俺は立ち上がると気分転換に風呂へと向かうのだった。


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