第二章 変化した日常
第1話 幼馴染
「おい、あれって?」
「そうだよな?」
「こ、声かけていいかな?」
「えー、どうなんだろ」
「狐火ちゃんいないのかな?」
「家でお留守じゃないか?」
ダンジョン配信の翌日、学校へと向かっている俺に対してそこら中から好奇の視線が突き刺さる。おそらく今ヒソヒソしているのは俺の配信を観た奴らなんだろうな。
まぁそんなに気にならないがちょっとうざい。
「ハァ……」
ちなみに配信が終わって意識を失ったあとは、気が付いたら自宅のベッドで寝ていた。普通に寝巻に着替えて、普通に寝ていた。あれが夢だったんじゃないかって思ったんだけど、無数のLIME通知を見て現実なのだとわかった。
本当は色々確認したいんだけど、起きた時には朝だったのでとりあえず学校へ向かわなければならなかった。なので何もわかってない状態だ。
まぁ今わかっている事は、これだけ注目されている状況がいいとはとても思えないって事だ。俺って別に元々有名人って訳じゃないし、むしろ大人しくて目立たない方だったからどうすればいいのかわからないしな。
ただ、それに対して俺の中で焦っている感覚がないって事が怖い。周囲の目だってうるさいって思う程度で済んでいるし、ここで万が一話しかけられても何て返せばいいかわからないから返事は困るだろうが、緊張して話せないって事はない。
やはり身体の最適化の影響なのだろうか? 昨日の配信から身体の調子がおかしい。身体は軽いし、妙に視界がクリアだ。周囲の気配にも敏感だし、ヒソヒソ話だって普通じゃ聴こえない位遠くのやつが聴こえてきている。
何より、こちらに対する悪意が何となくわかってしまう。
相手は隠しているつもりなのだろうが、全然隠しているとはいえない。そしてその相手は俺の部活の先輩だった。いわゆるエースって奴。そういや、ちょいちょいちょっかいかけられてたわ。俺が嫌いだったからなのね。
別に俺はあの先輩に何かしたつもりはないんだけどなぁ……。むしろあっちはバスケ部のエースだから俺よりよっぽど上じゃん?
「ハァ……」
まぁ今は何もしてくる様子はないし、ほっとこ、ほっとこ。
「しんちゃんおーはよっ!!」
落ち着いた(問題を投げ捨てた)のも束の間、いきなり抱き着いてきた女子。こいつは俺の幼馴染の井ノ
「おう」
昔っから妙に俺に懐いている真帆。今日もいつものようにくっついたまま進んでいく。
「なぁ、これ歩きづらくねぇか?」
俺の発言に真帆の頬がぷっくりと膨らむ。
「わたしがしたいんだからいいのっ! それともしんちゃんはわたしと一緒に登校するのはイヤ?」
「いや、そういう訳じゃないが、それにしても近くねぇか?」
距離感バグってんぞおい。
「そう? あ、しんちゃんもしかして恥ずかしいんだ! そうだよね、わたし美・少・女だしっ♪」
「はいはい、美少女美少女」
「あ、ひっどい!」
まぁ真帆が美少女なのは本人の自惚れでも何でもなく事実だ。腰まで伸びた艶やかな黒髪。透き通るように蒼く輝く瞳に、ぷっくりとした唇は恐ろしい程に魅惑的だ。今も髪が風によって流れてきてメッチャいい匂いがする。むしろ、敏感になってるせいで割とヤバいな、これ。
今も真帆を見ている人がチラホラ。そこらへんのアイドルじゃとてもじゃないが勝てない位可愛いからな。まぁ仕方ないだろう。勉強は真ん中位だが、そんなところが逆に親近感をわかせる形になってしまっているらしい。学校内どころか、他校からもプロポーズされているらしいけど、誰もお眼鏡にかなう様子はない。
「え、ど、どうしたの? 急にじっと見つめてきて。もしかしなくても惚れちゃった?」
「何バカな事言ってんだよ」
「バカとは失礼ねっ! あ、そういえば友達が言ってたんだけど……、配信って何? 調べたらネットニュースにもなっててダンジョンってどういう事?」
さっきまでのフザけた表情はどこへやら。真帆の瞳を覗くと、思った以上に真剣だった。俺もよく知らない事だらけとはいえ、適当な事を言えないな。嘘がバレた時の方が面倒くさい。
「ハァ……。まぁ、とりあえず学校に着いてから話しようぜ」
ここには出歯亀が多すぎる。今も真帆だけじゃなく俺にもチラホラこちらへ視線を向けている人がいる。話も長くなりそうだしな。
「わかった」
そのまま手を繋がれると引きづられるように学校へと向かっていくのだった。
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第二章、始まりました。ここからは月曜日、木曜日、土曜日に更新していくのでよろしくお願いします。
暫く日常回? になりますがサクサク進めていくつもりです。基本的にはダンジョン配信がメイン軸になりますが、ここでのお話も楽しんでいただけたらと思います。
そしてここからは作者からのお願いです。
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