第8話 配信終了

「ふぅ……」


 これ以上何もない事を確認すると一息つく。おそらく今ので最後だろうが、絶対とはいえない。俺はまだ死にたくないからな。


‘‘すげぇっ!!‘‘


‘‘まじかっ!!‘‘


‘‘ボス倒しちゃったよ!‘‘


‘‘最後のやつメッチャかっこよかったな!!‘‘


 コメントを見ると賞賛してくれる声がたくさん寄せられていた。今すぐ返事をしたいところだけど予想以上に疲労がたまっているのか声が出ない。


 最後の技はコスパが悪いな。全力疾走した時よりよっぽどきつい。


 ガタンッ。


 そのまま横になろうか考えていたその時、前方で何か物音がしてた。咄嗟にその方向を向くと、そこにはさっきまでなかった新しい扉が現れていた。


‘‘ゴールか?‘‘


‘‘いやいや、実はまだボスが出るのかもよ?‘‘


‘‘流石にそれはないっしょ‘‘


 俺も流石にそれはないと思いたい。だが、絶対ないともいえない。あれ、さっきも同じ事考えてたな。


「ハァ……。まぁいくか。みなさん、応援ありがとうございました。何とか倒せてよかったです」


‘‘いいってことよ‘‘


‘‘ボス倒したの普通に凄い‘‘


‘‘進くんの力だよっ!!‘‘


‘‘他の配信者よりあきらかに強い‘‘


‘‘強いよね‘‘


‘‘何でだろ?‘‘


‘‘わかんね‘‘


‘‘まぁ推しが弱いよりはいいっしょ‘‘


 他の配信者より強い……か。おそらく最適化? の影響なんだろうな。それくらいしか他の人との差がないしな。


「憶測で言ってもあれですのできっと俺が強いだけって事で。あれ、なんかこれじゃ俺が自惚れてるだけになっちゃうな。うーん、まぁこの話はここまでで。それではこのまま進みます」


 コメントではさっきの発言をからかってきているが無視だ。リスナー達が味を占めてる感じがするが、ここで反応すればするだけ返されるのだから無視するしかないのだ。


 とにかく目の前の扉に集中しよう。


 恐る恐る開くとそこには台座が一つ。その上には黒く輝く水晶が乗せられていた。


「ダンジョンコアってやつか?」


‘‘定番だねぇ‘‘


‘‘取ればいいのか、壊せばいいのか‘‘


‘‘クリアおめでとう!!‘‘


‘‘気が早い笑‘‘


‘‘まぁとりあえず取ってみるよろし‘‘


「そうですね。取ってみる事にします」


 今更ビビっても仕方ないので思いっきり水晶を取ってみると、持ち上げた瞬間に水晶の輝きは失われ、ボロボロと崩れ去った。


「あれ、壊れちゃった」


『ダンジョンコアの取得を確認。エネルギーを所有者の装備品に移行します。またこれまで倒した魔物の討伐数に応じてDPの配布も開始します』


 最初にもあったアナウンスだ。やはりこれがダンジョンコアだったのか。あとDPって?


‘‘ん、どうなったんだ?‘‘


‘‘壊れちゃったね‘‘


‘‘何も起きないな‘‘


 どうやら今のアナウンスはリスナーに聴こえてないようだ。一体どんな基準でアナウンスは流れているんだ? うーん、わかんね。


「ダンジョンコアを手に入れたようです。狐火にエネルギーが移行するって言っています」


 カメラが狐火を撮りだすと、狐火が輝きだして刀から幼女に変化する。姿は今までと同じ幼女であったが、その様子はどこかおかしい。なんというか……妙に色っぽい?


「とてもおいしいなの……。すごいなの」


 リスナーもコメント出来ない雰囲気だったが、暫くするといつもの狐火に戻った。


「大丈夫か?」


「だいじょうぶなの! きつねびつよくなったなの!!」


 見た目ではわからないが、どうやらダンジョンコアの力は無事に狐火に移ったようだ。いや、鎖の方にも移ってるな。チラッと見ると、前より輝いてみえる。狐火のように表には出てないが喜んでいるように感じた。


『本日の配信を残り三十秒で終了します。ご視聴いただき、誠にありがとうございました』


‘‘お、配信終わりか‘‘


‘‘あっという間だったな‘‘


‘‘面白かった。臨場感が半端ない‘‘


‘‘次の配信も楽しみ‘‘


‘‘よく頑張ったっ!笑‘‘


 今度はリスナーにもアナウンスが聴こえたようだ。あまりこのアナウンスは気にしない方がいいか? うーん、また考えよ。


 とりあえずやる事もないのでコメントに返事をしながら最後の時間を待つ。残り十秒になった時、何か思いついたのか、ずっと大人しかった狐火が動き出した。


「おい、どうした?」


「せんでんするなの!!」


 狐火はカメラを掴んで引き寄せると満面の笑みでリスナーに声を掛ける。


「あるじさまをおうえんしてくれてありがとうなの! このままちゃんねるとうろくもよろしくなの!!」


 そこに写る姿は、満面の笑みを浮かべた可愛い幼女。


‘‘すりゅううううう‘‘


‘‘させていただきます!!‘‘


‘‘もうしました!!‘‘


‘‘変態だ!‘‘


‘‘けど、確かにこれは可愛い‘‘


‘‘かわいい‘‘


‘‘かわいい‘‘


‘‘すき。お持ち帰りしたい‘‘


‘‘↑通報しました‘‘


 ハァ……。最後に狐火に全部持ってかれた気がするがまぁいいか。カウントダウンがゼロになるのと同時に目の前が暗転して、俺の意識も薄れていく。


 まだわからない事だらけだが、こうして俺の初配信はダンジョンボスを倒す事で無事に終えたのだった。


――――――――――――――――――――――――――――


 これにて、『第一章 初配信』終わりです! 次から第二章へと移ります。ここから話がどんどん広がっていくので、これからも是非読んでいただけたら嬉しいです。


 配信系の定番の掲示板回やりたかったけど諸事情で出来そうにありません……。結構好きなのに(´;ω;`)


 そしていつものお願いです。


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