第2話 現実
周りに見られながら教室に到着すると、真帆はそのまま一緒に俺の机まで追いかけてくる。まぁ単純に俺の隣の席なだけなんだけどな。
真帆にしては珍しくカバンを若干乱暴に放り投げると詰め寄ってきた。
「近い、近い」
このままチューするつもりか?
「あ、あ、ごめんっ」
慌てて離れると頬を赤く染めながら髪を弄る真帆。あんなにいつもくっついてくるのに何で今のは恥ずかしいんだ?
あまり脱線しても時間が勿体ないのでここは本題に入ろう。
「まぁいいさ。で、配信だっけ?」
配信という言葉と同時に固まる教室内。誰か時空魔法でも使いました? あぁ、もう。話が進まん。
「とりあえず配信だけどさ、俺も正直わかってない訳よ。真帆は逆にどこまで知ってるんだ?」
話しながら情報を集めるしかないな。実際よくわからんし。
「自分で配信してたのにわからないってどういう事? ちなみにわたしはしんちゃんがよくわからない配信ですっごく危なそうな事をしてたって事位しか知らないわよ?」
「本当に何も知らない感じなんだな。あ、そういや松井は? あいつはどうなったんだ?」
まだ学校には来ていないようだが、俺もとりあえず学校に来れてる位だからまだ遅れてるだけだろう。
「え、松井?」
「そうそう、松井だよ。まだ学校来てないみたいだな?」
キョトンとした表情をしている真帆。何だか嫌な感じがする。まさか……?
「松井って……誰?」
真帆は本当に松井が誰なのかわからないようだ。
嘘だろ……。
「松井って俺と同じバスケ部の松井だよ! このクラスの!!」
思わず大声を上げてしまった俺に驚いた様子の真帆。とてもふざけているようには思えない。そもそも真帆は人の事でふざけるようなやつじゃない。
周りの奴等も俺の大声に驚いてこちらを見ているが松井の事を覚えている様子はない。誰も松井の事を覚えてないって事なのか? 何でだ?
ダンジョン内でもそうだった。松井が死んだあの瞬間からまるで最初から存在しなかったかのように松井に気付く人間がいなくなった。
あぁ、ここで騒いでも無駄だな。とりあえず帰りに松井の家に寄ってみよう。
このままじゃらちが明かないし、頭の中で一旦気持ちを切り替えよう。
「いきなり騒いで悪かったな。とりあえず配信ってのはダンジョンを冒険? する感じだな。ダンジョン内にはまるでファンタジーみたいな魔物がいるんだ。んで、ボスを倒せば配信終わり。まぁ、そんな感じの演出だよ。ただそれだけだ」
自分で言っててなんだが、演出って言わなければ嘘みたいな話にしか思えない。だけど事実なんだよな。こんな話を真面目に言っても通じる筈がない。
俺しか松井を覚えてない。これだけでもおかしい。昨日までの事が夢のようだったが、今この場に松井がいない事で現実が追いついた気分だった。
「演出……。それなら、大丈夫なのかな? 危険はないんだよね?」
「勿論だ」
ここで真帆に心配をかける必要はない。今は余計な事を言うよりは真帆を安心させる事を優先すべきだ。
その後、真帆から他に色々な質問をされたが、基本的には守秘義務がって言ってうまく誤魔化した。納得いかない様子ではあったが、守秘義務って言われたら流石の真帆でも追及してこなかった。一応企業所属の配信者って扱いだからな。何でもペラペラ話せないって事は理解してくれただろう。
まぁ俺の本音は、そもそもあまり話をしすぎると単純に良くないと思ったからだ。
『俺が』ではなくて『真帆が』だ。俺は真帆をこんな事に巻き込みたくない。しかもこのダンジョン配信はただ死ぬだけではなく、存在すら最初から抹消されてしまう。おそらく俺が死んだ時だって同じ事が起きるのだろう。そんな事が真帆の身に起きたらと考えると苦しくなってしまう。
もし俺がそうなった場合、真帆はどうなるんだろうな。何事もなく、学校生活を過ごすのだろうか。
まぁ存在自体が抹消されてるんだから普通に過ごすんだろうけど。何言ってるんだろうな?
けどさ、想像するだけで恐ろしいんだよ。目の前にいたのに次の日になったらいなくなるんだぜ? しかもいなくなった事にすら気付けない。別に松井の事が好きだった訳じゃないけど、だからといっていなくてもよかったとは思わない。それなりに思い出もあるしな。その全てを消されたらと考えると……。
気が付いたら今日の学校が終わっていた。他の奴らと何を話したかあまり記憶にないが、とりあえずダンジョンについて聞いてきた奴はそんなにいなかったのは助かった。まぁ俺が元々有名人ならともかく、ちょっと配信をしただけだからな。興味がない奴から言えば、何かあったんだな? 程度にしか思えないのだろう。
さて、今日は真帆に頼んで一緒に帰るのを諦めてもらった。ちょっと不機嫌になったが、後日、何か買ってやればいいだろう。それより、松井の家だ。果たしてどうなってるのか……。行きたくないが行くしかないんだろうな。
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