オバケくんと美術館の歓迎
オバケくんが博物館に棲みついてから、実に2年が経ちました。
この博物館の良いところは、何といってもお客が全く来ないところです。夜行性のオバケくんが起きだすころ、月明かりの下にいるのは、せいぜい1人か2人くらい。
『ははぁん。ここは、よっぽど人気のないところなんだなぁ』
静かであんまり居心地が良いので、オバケくんはずるずると居座っていたのでした。
ところが、ある日のことです。
その夜の館内は随分と騒がしく、オバケくんは眠い目をこすりながらフヨフヨ。吊るされた灯りの影から、そうっと様子を覗きました。
すると、なんと十数人もの団体客が、群れを成して館内を巡っているではありませんか。
オバケくんは、とても驚きました。
そんなオバケくんをよそに、来る日も来る日も団体客は顔ぶれを変えて押し寄せます。
『これは困ったことになったぞぉ』
オバケくんは、天井の灯りに腰掛けて考え込みます。この日は風が強く、半透明のお尻に敷かれた灯りが揺れて、ギィギィと音を立てていました。
その途端、団体客が天井を見て悲鳴を上げたかと思うと、散り散りに逃げてしまいました。
オバケくんは最初、何が起きたのか分かりませんでした。けれどすぐに『しめしめ』と笑うのです。
『そうだ。あいつらをみーんな怖がらせて、追い出してしまおう』
それからオバケくんは、ありとあらゆる「
突然窓がガタガタ。剥製の口がカクカク。椅子がフワフワ。非常口ランプがチカチカ。
その度に団体客は震え上がり、逃げ出します。
オバケくんは、それを笑い転げながら見ていました。
しかし、団体客は一向に減りません。
それどころか、むしろ日に日に増えている気すらするのです。
『これはどういうことなんだろう』
オバケくんは首を傾げました。
けれど、もうしばらく、このいたずらに勤しむことにしたのです。何故なら、こう考えていたから。
『客は確かに怖がってるんだ。今に誰も来なくなるさ』
ところで、オバケくんは知りません。
今、この博物館が「お化けの出るナイトミュージアム」と広告を出していることを。
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