第8話
「お疲れ様です聖者様!」
「聖者呼ぶな。ぶっ飛ばすぞ」
続々と帰ってくる隊員達を見送りながら、瘴気を吸い込んだ人が居ないかの確認。今のところは0人で、俺の端末にも直接連絡は来ていない。
目に見える範囲には、残り数人しかいないし、これは帰っても良さそう────ん?
一人、何やら頭のてっぺんがちょっと申し訳ないけど、見た瞬間に笑ってしまいそうになるほどに残念な恰幅のいいおっさんがこちらへと歩いてくるのが、遠目に見えた。
「何だ……誰かがこっちに来る────リオーネ?」
「…………」
そして、それを見た瞬間に、そのおっさんから完全に隠れるように、俺の背中に張り付くリオーネ。キュッ、と服を掴まれ、ふるふると頭を振る。
……まさか。
「お久しぶりです聖者殿。ご壮健なようで何よりですぞ」
「………失礼ですが、どこかでお会いしたことがありましたか?」
「おやおや。これは私としたことが、聖者殿に会えたのが嬉しくて舞い上がっていたようです」
聖者って呼ぶのやめろよ、と内心でキレながら、分からない程度に目を細める。俺の予想が正しければ、こいつは────
「八年前、あなたの異能に助けられました。今代の『魔術大帝』ハインケル・クヴァリと申します」
────リオーネのクソ親だ。
でっぷりとした腹に手を添え、恭しく頭下げるハインケル────いや、クソハゲドブスでいいなこんなヤツ。
確かに、第一印象では物凄い丁寧な人だと思える。年下の俺にすんなり頭を下げるし、言葉遣いも丁寧だ。
だが、俺はこいつの本性を知っている。舌打ちしたい気持ちを抑え、早く会話を切り上げるために言葉を発する。
「これはこれはご丁寧に。申し訳ないですが、当時は小さく、助けた人は万を超える程いるので、あなたのことなんて全く覚えてないです」
「いえいえ、それもしょうがないこと。あなたのお力は正に神の奇跡と呼ぶに相応しいもの。あれだけの忙しさなら、仕方ないかと」
こいつ、無敵か?暗におめぇに興味ねぇからとっとと失せろ。俺のライフルが火を噴く前になぁ……!と乗せたつもりなのだが。
というか、なんかやけに俺の事をヨイショするな。気持ち悪。
「もし、聖者殿の都合がよろしければ、是非あの日のお礼も兼ねて、我が屋敷で食事の方でも」
「…………………………」
あー、はいはい。アーク、分かっちゃった。
こいつ、俺の事取り入ろうとするつもりだろ。それなら、最初からめちゃくちゃ低姿勢なのも、俺の事をヨイショするのも納得だわ。
確かに、Sランクの俺には価値がめちゃくちゃある。過去には、俺の力に惹かれて、権力をどうにかして大きくしたい貴族に養子にならないかと誘われた。勿論、顔にでっかく「権力ほちい!」と書いてあったからお断りしたが。
「いえ、この後は学園の方に報告しないといけないことがあるので。それでは」
そんなものはないし、報告なら既にエイリ先生にしているので終わっているが、こんなヤツの家にお邪魔なんてしたくないので、とっとと帰る。
背後にいるリオーネに、クソハゲドブスにバレないように合図をする。くるりと回ろうとしたタイミングで、リオーネが服から手を離し、何とか頑張って視界に入らないようにする。
「お、お待ちくだされ聖者殿!せめて話だけでも────!」
だがしかし、流石に隠し通すのは難しかったのか、それともリオーネの綺麗な髪がたまらず目に入ったのか。どちらかは分からないが────
「────おい、そこの出来損ない。なぜ貴様が聖者殿のそばにいる」
「……うわぁ」
「あちゃー……」
リオーネからは、今まで聞いたことの無いくらいに、嫌悪感が詰まった声が。俺からはバレたーとやってしまった感が詰まった声がした。
「聖者殿!そのような奴の傍にいてはダメですぞ!あなたは人類の希望なのです!そんな出来損ないの傍にいては、あなたまでダメになってしまう」
「………彼女は俺の仮パートナーだ。たとえ親でも、リオーネを卑下することは許さないぞ」
クソハゲドブスの物言いに、少し声のトーンを下げる。目を細め、もはや睨むのを隠すのもやめた。
「仮パートナー……だと……!おのれ……!出来損ないの分際で……我が家名を汚すだけでは飽き足らず、聖者殿に取り入り、足を引っ張るとは……!どこまで立っても役たたずだな!お前は!」
「……っ」
「………あ゛あ゛ぁ゛!!!!」
こいつ……っ!俺の前でよく
決めた。コイツは、今後の態度次第では絶対に殺す。なめんなよ。どうせ俺はもうすぐ死ぬし、推しのためだったら平気で人も殺すぞ。
それが例え、親であろうともなぁ……っ!!
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カクコン短編出してるから、皆読んで星入れて♡
『「書籍化したら俺だけの絵師になってくれ」と息巻いたはいいが、全く打診がこねぇ』
ぬき〇しアニメ化するんだってさ。俺さ、あれやった事ないけど、名前見ただけでヤベーって分かるよね。本当に放送できる?
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