第6話
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その後、何故か不機嫌になったリオーネを、左腕を献上することでなんとか宥めたあと、今回の主戦場であるエリア1とエリア2の狭間にて────レイルの悲鳴が響いていた。
「今日に限って、やけにエリア3からの砂埃が多いな」
その理由は、エリア2の魔物から逃げ惑っているということではなく、エリア3からかなりの高頻度で流れてくる大量の砂埃のせいである。
魔物の方は別に全くの問題もなく、レイルとシアンの連携で倒せてはいるものの、流れてこんでくる砂埃がどうしても二人の邪魔をする。途中、何どか危ない場面があり手助けをした。
まったく、誰だよ周りの迷惑関係無しに魔法をブッパしている馬鹿は。
────まぁ。
「………」
「……っ」
自身の右腕を左手で抱きしめるように何かに怯えているリオーネを見れば、一発で分かるんですが。
「痛っ!今目に砂入ったんですけど!最悪!」
「大丈夫ですか?レイルちゃん」
「なんでシアンは無事なのよ……」
「魔法を使えよ魔法を。シアンは流石に回避の仕方が強引だと思うけど」
あの子、前から来た砂埃に対して、大斧を地面に思いっきり叩きつけた衝撃で相殺してたからな。
「……まぁでも、エリア2と言っても大したことないのね!私達でも倒せるくらいだし!」
「確かに。意外とあっさり倒せちゃいましたよね」
「それ、普通に君達が強くなってるだけだから」
「「…………?」」
「いやいや、二人してそんな『えっ?』みたいな顔で見られても」
大体さ、君たち誰に鍛えられてると思ってるの?
最弱だけど、我Sランクぞ?これでも人類最高峰ぞ?
「調子に乗らないように毎回叩き潰してるけど、君たちもうそんじょそこらのBよりは強いよ」
叩けば伸びる、とはまさにこの二人のこと。立てなくなるぐらいまでボッコボコにしてるけど、次模擬戦する時は、ちゃんと強くなってる。
「えっ、じゃあなんで私達Cなんですか?」
「そりゃ普通に実績でしょ。君達、まだそんな戦場でてないでしょ?」
多分だけど、俺とリオーネが指導員に任命されたのも、昇級試験的な意味合いもあるんじゃないかなーと今更ながら思ったり。
「ほら、もっと頑張りな二人とも。今日の結果次第では、Bランクに上がれるかもよ?」
「っ、シアン!」
「うん!頑張ろ!レイルちゃん!」
俺の言葉を聞いて、先程湧いたゴーレム型の魔物へ勢いよく突っ込んでいく二人。
ま、あんなこと言ったけど、本当にBに上がれるかは分からないけどね。ぶっちゃけ、昇級に関することとか知らないし。
これ終わったら念の為エイリ先生に打診してみるか。これでBに上がれませんでしたとか可哀想だし。
「リオーネ」
「っ、どうしました?アーク様」
「いや、どうした?は俺のセリフなんだが」
さっきから、一言も喋らないリオーネに声をかけると、びくり!と体全体を跳ねさせた。
「……来てるのか?魔術大帝」
「……………はい」
今代の魔術大帝────つまり、リオーネのお父さんというわけなのだが、どうやら俺の予想通り、この戦場にいるらしい。
「私にとっては、忌々しいかの者ですが………嫌でも、魔力の波動で分かってしまうのです」
「……大丈夫だよリオーネ」
「アーク様……」
震えるリオーネの頭に優しく手を置き、ゆっくりと撫でる。
彼女は、もし不幸にも出会ってしまったらということを案じているのだろう。きっと、顔を合わせれば息のように罵詈雑言をリオーネに浴びせることぐらい分かる。
「何があっても、俺が守るよ」
「……はい、頼りにしております。アーク様」
頭を撫でる手を、両手で掴んでから頬に押し付け、スリスリと甘えるように目を閉じるリオーネ。
「ちょっ!?こっち戦闘中なんですけど!?イチャイチャしないで貰えますぅ!?」
「このっ……!硬い、です!」
ドパン!と一発の銃声が手元で響くのだった。
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