第5話

 ピリリリリリリ!!!


「「っ!」」


 授業中に、突如としてポケットに入れていた端末から、けたたましいアラーム音がなり、激しく振動する。


 端末を取り出すと、予想通り戦場への出動命令。


 横にいたリオーネと目を合わせ、頷いてから席を立つ。


「二人とも、少し待て」


「「?」」


 急いで教室を出ようとしていたら、端末を見ていたエイリ先生に呼び止められた。


「済まない。今回の襲撃において、私も呼ばれたため、これからの授業は自習とする。二人とも、着いてきてくれ」


 ザワザワと微かに騒がしくなる教室を後ろに、疑問符を頭に浮かべながら、俺とリオーネは顔を合わせ、スタスタと歩いていくエイリ先生の後を追う。


「どうかしましたか?エイリ先生」


「いくらAやSの人材が豊富とはいえ、俺が早めに戦場に出ないのはマズイのでは?」


 一回の戦闘で、最上位の強さを持つAやSランクの人間は、最低でも20人は駆り出される。俺ぐらい多少遅れた所で何か戦場に変化がある訳では無いが、俺が出ることで、大多数の人が危険から遠ざけれる。


 だから、一刻も早く出たいところなのだが……。


「上層部からの命令だ。二人には、将来有望なCランクの指導係として戦場に出ることになった」


「指導係……ですか?」


 聞きなれない単語に、リオーネが首を傾げる。


「可笑しいですね。普通、指導係とは上級生である二年生以上しか任命されないのでは?」


 指導係。この学園にて才ある生徒を更に強くするべく派遣される生徒のことである。


 この学園にて、一番死亡率が高いのは入学したての一年生である。初めて戦場に出て緊張したり、イキって飛び出てそのまま死亡というケースが多い一年生には、その手綱を握るべく、Bランク以上の生徒が下級生に戦場のいろはを教えるために派遣される。それが指導係である。


 尚、ユウラシアに指導係が派遣されたのもこの時期である。その際、その指導係がユウラシアを庇って死んでしまうのだが、確実に原作よりも今のユウラシアが強いと断言出来る。なので、そもそもユウラシアが庇われるという展開自体が起きないと思うため、いい感じに原作ブレイクは出来ているだろう。


 しかし、どうして俺達がそんな指導係に?まず俺たち一年生なんですが。


「顔を見れば分かるだろう。アークは最近、色々とやっているみたいだがな」


「?」


 色々やっている……?心当たりがありすぎてどれか分かんないな。


 この階に設置されているワープ装置へと乗り、先生の操作によるワープ。その先は、瘴気の侵入を防ぐ光の壁近く。


「えっと……ここでいいんだよね」


「はい。端末の指示はここと」


「あれ」


「あら」


 聞き覚えのある声が聞こえたので、横を見ると見慣れた少女が二人。ここ最近は、プライベートでの付き合いや、鍛錬に付き合っているレイルとシアンである。


「あれ?アークさんとリオーネさん?」


「それに、あの時の美人先生……」


「レイル・ヘイルバーン、シアン・カルベニクですね」


「「は、はい!」」


 エイリ先生に名を呼ばれ、びしッ!と背筋が伸びた二人。二人は俺とユウラシアの模擬戦時にエイリ先生を見ているはずだが、殆ど会話はしていないはず。


 確かに、エイリ先生は美人でクールな見た目をしているからな。ほぼ初見だったらそんな感じになるのも仕方ないか。


「二人には、これからアーク達の指示で戦場のエリア2に行ってもらう」


「「…………えぇ!?」」


 エイリ先生の言葉に、驚いた声を上げる二人。それもそうだ。いくら直々に俺が鍛錬に付き合っているとはいえ、まだまだ二人はCランク。


 俺的にはエリア2でも充分に通じるとは思うが、まだまだ二人は経験値が少ない。個人的には、もう少しエリア1で経験を積ませたいところなのだが……。


「えっと、私達まだCランクなんですけど」


「その……大丈夫、なんですか?」


「上は問題ないと判断したため、この処置となった。それに、危ないことがあってもアークが護るだろう」


「そりゃまぁ護りますけど……」


 もしかして原作アニメで指導係が死んじゃったのってこの上の無茶ぶりが原因?だとしたら無能とかそういうレベルでは無いぞ。


 ……エリア2ね。どこで戦うとか言われてないから、エリア1ギリギリで戦ってやろう。どうせバレへん。


「今回私に招集はかかっていないため、ここで待っていることになる。……四人とも、無事に戻ってきてくれ」






「と、いうことで二人の指導係として、エリア2までエスコートするよ」


「だ、大丈夫なんですかね私達……」


 二人の態度からは、あからさまに不安が滲み出ている。確かに、初めて足を踏み入れる戦場は怖い。俺も最初はそう……そうだったかな?


 なんか忙しくて無我夢中で駆け回っていたことしか覚えてない。あの頃は戦闘より瘴気吸い出すことの方が忙しかったからな。


「まぁ大丈夫だ。エリア2って言われてるけど、実際は1と2の境界線あたりで誤魔化すし」


「誤魔化す?」


「バレないんですか?」


「それに、何かあっても絶対に守るよ」


「「………」」


 そう言うと、徐々に頬を赤くしてサッと目を逸らした二人。あれー……?


「……リオーネ?」


「つーん」


 え、なんでリオーネも不機嫌に?



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皆さん、地震の方は大丈夫でしょうか。日本海側の読者は本当に気をつけてください。これを伝えるためだけに投稿しました。あけおめなんて言ってる場合じゃないよ。

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