第12話

 恐る恐る、と言った感じで先程まで俺が立っていたところに向かうリオーネ。そして、俺が教えたことを忠実に守り、安全装置を外し、装填作業を行う。


 銃を右手だけで持ち、片目を瞑って────


「───って、ちょいちょいちょいちょいちょい」


「?」


 俺がやってたことを見様見真似でしようとしていたので、慌てて止める。リオーネが首を傾げ、こちらを向いた。


「どうしました?」


「悪いリオーネ。俺の教え不足だった。そのスタイルだとまともに当たらないぞ」


 慣れたら片手でも簡単に銃を扱えれるようになるが、多分だけど初めての銃の反動で照準がぶれるだろうし、片方の目を閉じるというのもいただけない。


「まず基本のスタイルだ。足を肩幅くらいに広げて」


 頷いたリオーネは、体の向きを変えて、的に体の正面を向けた。


「次に、腕を真っ直ぐに伸ばして、右手の人差し指で引き金を引けるように持ち、左手はグリップ部分を埋めるように、右手に被せる」


 そこまでやった所で一度横から構え方を見た。うん、何も問題はなさそうだな。


「これがハンドガンの基本の構え方だ。あともう一種類あるけど、どうせ片手で扱うことになるから気にしないでいい」


「はい」


「自分の心臓音と呼吸を合わせ、集中力を上げて狙いを定めろ。今は実践じゃないから、ゆっくりと、確実に当てることを意識して」


「…………」


 リオーネの呼吸が変わる。深く呼吸をすることで、呼吸音がこちらまで聞こえてくる。


「!」


 時間にしておよそ三十秒ほど。一瞬、鋭く息を吸ったリオーネが引き金を引き、バン!と銃弾が発射される。


「────お見事」


 的を確認すると、弾は綺麗にど真ん中をぶち抜いていた。最初は的に当てることすら難しいのに、一発でこれは才能があるな。


「………ふぅぅぅぅ」


「……っと」


 安全装置を掛け、銃を置いたリオーネは、深く息を吐きながら倒れかけたところを、俺が咄嗟に腰に手を回して支える。


「すみませんアーク様。その、凄く緊張してしまって、足から力が抜けました」


「反動の方はどうだった?」


「意外と、思っていたよりも軽かったですが………少し、体の鍛錬の方も増やさないとダメですね」


 その後、休憩を挟めながらリオーネに銃を慣れさせるため何発か撃ったが、やはりどれも的をしっかりと捉えた。


 俺もかるーく色々な銃を試し撃ちしながら時間を潰し、スミスさんが作業を終えるまで待つのであった。


 そして二時間後、スミスさんのガンショップを後にした俺達だが、彼女の腰には新たな武器が収まっていた。


『グングニルII』。スミスさんとグングニルシリーズの中でどれが彼女に最も合っているか相談しながら、今回買った得物だ。


 サービスでホルスターまでくれた太っ腹。お代は後ほど機関の方に領収書が送られ、俺の給料から天引きされるだろう。


 お値段ざっと70万くらい。今の俺の貯金は使い切れないくらい貯まってるので、払う分には全然問題なかった。


「………」


 ホルスターに入った銃を、キラキラとした目で見つめるリオーネ。俺の手も握らないくらい気に入ってくれたのなら、選んだかいがあったものである。


「ありがとうございます。アーク様、私、また貰ってしまいました」


「いいんだって、俺がやりたくてやったことなんだから」


 推しに貢ぐのはオタクとして当たり前のことである。


「大事に使いますね」


「ぜひそうしてくれ。そうしたら、スミスさんだけじゃなく、銃もよろこ────!!」


 発砲音。それも複数。連続で聞こえたことから、マシンガンだと銃種を特定し、とっさにリオーネを抱き寄せ、魔法を発動させる。


 ズガガガ!と、数多の弾丸が空中で止まり、そのままパラパラと地面へ落ちていく。こんな白昼堂々と襲撃か……?


「流石は聖者様。この程度では傷一つも付けられませんか」


「────オメェは」


 その顔には見覚えがある。


「おや、覚えていてくださったとは、とても光栄です」


「何をしに来た破戒僧。こちとらデート中だと見て分からんのか?」


「分かりますよ?だからこそ今襲撃しているのです」


 ………ほんっっっっっっとうにコイツらは俺の逆鱗を撫でるのがまぁまぁまぁ上手いこって……!


「リオーネ。結界魔法、硬度6だ。自分の身を守ることだけを優先しろ」


「────畏まりました」


 俺から離れ、優雅に一礼したあと、彼女の体からほんの少し光が溢れる。それを確認した俺は、奴と本格的に相対した。


「一応聞いておこう、目的は?」


「勿論、あなた自身です」


「なんでこんな白昼堂々とした襲撃を」


「そりゃあ、あなたの近くに丁度いい人質がいるようなので、捉えて言う事を聞かせようと────」


 聞くにも耐えなかったので、俺は対人装備────スナイパーライフル二丁を呼び出し、一発。


「────その汚ぇ口を今すぐ閉じろ。彼女に手を出せば、死よりも酷い醜態を晒すことになる」


「とは言っても、もう手出しは出来そうにはありませんが」


「今度こそ殺してやるよ破戒僧」


 元聖者教団序列三位『破戒僧』。


 あの教団の中で、最も武力のある男だ。



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今更リコ○ス・リ○イルを見たんだが、千束ちょーっと可愛すぎんか?声優さんと完璧にマッチしてやがるぜ……バウバウ~

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