第10話

 無限にも、一瞬にも感じ取れたリオーネとのドライブ。目的地に無事到着したお店の名前は────


「……モノクローム・ガンショップ?」


「目立たない場所にあるが、銃の取り扱いはこの国1番だと俺は思っている」


 地下へと続く、薄暗い階段の入口がお出迎える『モノクローム・ガンショップ』。品揃えは、ハンドガンからスナイパーライフルまで揃っており、店主のメンテナンスの腕もいいし、なんなら店主オリジナルパーツまで売っている。


 俺のミストルティンや、あんまり出番のないスナイパーライフル二丁も、ここのお店で発注して作ってもらったものだ。まぁ、交通の便の悪さと、雰囲気からあんまり人気はないのだが。


「階段、暗くて転びやすくなってるから、気をつけてな」


「は、はい」


 俺が先に2段ほど先に降り、リオーネへと手を伸ばす。支えるように手を握り、おずおずと階段を降りるリオーネを見ながらゆっくりと降りる。


 今は慣れたから大丈夫だが、三回ほど俺はここで足を滑らせてダイナミック入店したことがあるからな。地味に痛かったからリオーネにはそんな思いして欲しくない。


「……、きゃっ!?」


「っ、とと……」


 やはり、と言うべきか。暗がりで足を滑らせたリオーネの手を引っ張り、後ろではなく前へ。


 体を前に入れ、全身でリオーネの体を受け止めたあと、腰に手を回してこれ以上の二次災害が起きないようにしっかりとホールド。


「大丈夫か?」


「す、すいませんアーク様」


「謝る必要は無いよ。俺もよくここで転んだからな」


 体を支えながら、しっかりと立ったのを確認してからもう一度階段を降りる。そして、いよいよ入口へと辿り着いた。


「こんちゃーす。スミスさんいますかー?」


「いないぞー」


「入りまーす」


 いつもの戯れをスルーした店の中へと入る。


「……わぁ」


 そして、店の中へ入ったリオーネが思わずと言った感じで声を上げる。様々な大きさの銃が、壁や棚に所狭しと並べられたこの光景は、確かに初めて見たら壮観に見えるだろう。


「いねぇって言ったろ?」


「いるじゃないっすか。もうボケたんすか?」


「アホ。俺はまだ35だ」


 スミス・モノクローム。筋骨隆々で、全体的に肌が焼けたスキンヘッドのおっちゃんだ。


「んで?今日は何の用だ?メンテナンスにゃまだ時期が─────は?」


 俺へと目を向け、ついでにリオーネへと目を向けた瞬間、スミスさんが固まった。


「……お、おいおいおい!アークお前!彼女かこのべっぴんさんは!」


「か!?」


 あーらあらあら。まーたそういうことリオーネに言っちゃう。だから、彼女はまだこういったことに免疫着いてないんだからあまりそういうこと言わない。


 ほら、恥ずかしさと嬉しさが混ざって、顔が真っ赤になったリオーネが俺の背中に引っ付いちゃったじゃん。なにそれ可愛いかよ。


「とりあえず、今日はミストルティンのカードリッジを新しく作りに来た。やっぱギガトン級でも耐久に振ってる奴だと、そこそこ効き目が悪い」


 ホルスターから愛銃を取りだし、スミスさんへ向かって投げる。


「……っと、これでまだ効き目が薄いのか?何を刻印するよ」


「爆発系と、振動系で頼んだ。領収書はいつものとこで」


「はいよ。形といつものカードリッジはどうする?外すか?」


「いや、一回全部分解してもいいから、入るようにしてくれ」


「OK。任された」


「あと、彼女のための銃も見繕う。適当に弾と射撃場使うぞ」


「はいよー」


 投げた銃をキャッチし、俺の要望を答えるために裏へ引っ込んだスミスさん。とりあえず、リオーネを再起動させるか。


「リオーネ」


「……っ、は、はい……」


「多分、銃を使うのは初めてだよな?」


「は、はい……初めてです」


 だったら……そうだな。やはり最初は軽めで、反動も少ないやつで撃っていくとするか────ん?


「どうした?」


「あ、あの……アーク様は、お嫌ではありませんか?」


「何が?」


「その……私如きが、アーク様の恋人として間違えられることに……です」


 きゅっ、と弱々しいが、逃がさないように俺の手を掴む。その手は少し震えていた。


 ………ふーん。俺ってさ、結構リオーネに対してはイエスマンかのように肯定を沢山してきたけど────まだ足りないんだ。


 俺が思っていた以上に、リオーネの自己承認欲求欲は高かったようだ。なら、まだまだもっとうんと褒めてやらないとな。


「リオーネ」


「……っ、は、はい」


「俺は、リオーネのことをとても可愛いと思っている」


「は、はい…………はい?」


 いいわ、この際だから言うけど、俺が思ってること全部吐き出させてもらうわ。


「あのさ、そろそろ自分が可愛いってこと自覚しない?人目が無いところでは腕組もうとしたり、構わないと拗ねたりとか、俺を殺す気?もっと自分が顔面国宝ということを自覚して。てか自覚しろ」


「え……あ、あの……?」


「さっきもさ、ホバーボードで後ろに乗っている時俺の事小声で呼んで、頭スリスリしてくるのもさ、あれわざとなの?俺いい加減死ぬよ?いいの?死因尊死とかになってもいいの?」


「あ、アーク様!?」


「はー、マジでリオーネ可愛い。てか好き。ほんと産まれてきてくれてありがとう」


「アーク様!?!?!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

BAUーBAU……フワチャ…カワイイネ…モコチャ…カワイイネ…


Xフォローシチャッタ…ブイチューバーサンニンメ…バウバウ…カワイイ






あ、プロローグの前に大目出しを置くことにより、第一話よりもプロローグの方がPV高くなりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る