第9話
弾を発射する。それだけの工程さえあれば、瞬く間に高速で魔物を狩りとる武器として成り立たせているのは、この銃に刻まれている万を超える魔法陣の数だ。
魔法陣超小型刻印システム。人の目には視認できないほどの魔法陣を数種類刻印することによって、本来ならば出しえないバカ威力の銃を作ることに成功した。
だがしかし、威力の高い銃を作るということは、それだけ反動が強く、この銃に至るまで計五個のミストルティンが反動によって爆発四散してしまった。
この銃そのものに刻印されているのは、『硬化』、『加速』、『回転』、『転移』のみ。後は外付け装置として、マガジンの代わりに五種類のカードリッジが差し込まれている。
硬化は、銃の反動に耐えるためとして、半分以上がこの魔法陣だ。それぐらいしないと、この銃は反動に耐えきれなくなり、爆発する。
加速と回転は何となく分かると思うから説明は省略するが、転移は弾が発射されると自動的に俺の倉庫から弾丸が補給されるようになっている。
さて、ここまで延々と銃についての説明をしたが、魔法陣というものは、小型化しても発動に必要な魔力は変わらない。なので、俺は一発を撃つごとに万を超える魔法を発動していることになるのだ。
そんなこと、並の人だったら一発でガス欠。そのまま戦場で気絶して魔物にバリボリ喰われるだけだ。
恐らく、リオーネでも五発くらいが限界。だから、気軽にこの銃を持たせることは出来ないのだ。
「リオーネ」
「はい」
さてさて、この世界の主要な施設────例えば、大型ショッピングモールとか、高級ホテルとかには、転送装置が設置されているのだが、それが無いところには、やはりこの世界特有の乗り物がある。
「あれ、乗ったことある?」
俺が指を指した先には、キックボードのような形をした乗り物が、人を乗せて空をビュンビュン飛んでいた。
飛空ホバーボード。この世界の移動手段として最もポピュラーな乗り物である。
魔法による重力制御により、空を飛ぶことを可能とした、前世地球人としては夢のアイテムである。これを知った日からしばらく乗り回していた。
「見たことは何度がありますが、実際に乗ったことはないですね」
「ふむ、となると自分のも持っていないか」
自身の端末を操作し、俺のホバーボードが目の前に転移してくる。今、俺が考えていることは、正に全男子の憧れである女子を後ろに乗せて自転車ニケツをすることとイコールなのだが……果たして、俺のポーカーフェイスが保たれるかどうかめちゃくちゃ不安である。
いや、でもなぁ……ホバーボードって慣れないと倒れる危険性があるし、一番安全なのは俺の体にしっかりと捕まってもらうことだ……俺の心臓持つか?推しとの急接近で爆発したりしない?
……しょうがないか。男アーク、腹をくくれ!
「リオーネ、一緒に乗ろうか」
「……は、はいっ」
「いくぞ、せーので乗るからな────せーのっ」
左手でハンドルを支え、ホバーボードが動かないように固定しながら足を乗せる。リオーネのことも考え、ゆっくりと、ゆっくりと両足を乗せる。
「よし、大丈夫そうか?」
「……はい、そうですね。意外と思ったよりも揺れないのですね」
「大きくバランスを崩すと倒れたりするが、俺が運転をするから安心してくれ」
俺のホバーボードの運転技術はかなり高い(比較対象無し)から、その心配はないだろう。
「それじゃ、俺は前を向くから、リオーネは俺の体にしっかりと捕まってくれ」
「……………アーク様の?」
リオーネは、俺の体を上から下まで見渡すと、少し頬を赤らめる。
「……そ、それじゃあ、失礼します、アーク様」
「……あ、あぁ」
まだ俺の右手を握ったまま、最初は右腕を俺の体に回す。それを確認したあと、俺はリオーネの手を離して、ハンドルに両手を────
「────っ」
「………っ!」
────おっふ!?こ、これはやばい!?
前を向いているから正確には分からないが、この感触は間違いなく、リオーネが後ろから抱きついているではないか!?
思ってたんと違う!そこまで密着しないと思っていたが、これ思いっきり抱きついてる!?あ、あぁ……リオーネの体柔らかい……っ。
「じゃ、じゃあ……動くぞ」
「は、はいっ……!」
ゆっくりとホバーボードが前進する。それを感じとったリオーネは、更に腕に力を込めて、体を押し付ける。
ん、んごごごご!!!頼む!頼むから持ってくれよ俺の理性!!
金スキル、鋼の意思を今無理やり取得し、俺は目的地のガンショップへとホバーボードを進めるのであった。
「……アーク様……アーク様……っ」
……ま、負けないっっっっっ!!!
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バウ……バウ……ウッ、カワイイ……え、双子……?
ワァ……ニホンゴジョウズダネェ……
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