第6話
人理統合機関。この国の行政やら司法やらと様々なことを取り仕切っている、いわゆるこの世界で言うところの政府である。
幼い頃に両親が死んでしまい、機関に育てられた身としては、ここが実家なようなもの。今回は、育ての親に途中報告が聞きたいと言われ、人理統合機関中央区第三軍属所までやってきたのだが────。
「リオーネ?」
何やらソワソワしているリオーネに声を掛けると、分かりやすくビクン!と反応した。
────昨日、午前中から俺とデートしたいと豪語した彼女。午前中は機関に呼ばれてるけどいいの?と伝えても、それでも一緒にいたいと。
なんだこのヒロイン。可愛すぎかよ。
朝から推しがお出迎え、手を繋いでデートとかこんなのどっからどう見ても恋人同士だろと思うが、実はまだこれでもリオーネからの好感度MAXじゃないんですよ。
まぁ今までずっとぼっちだったからね。パーソナルスペースが狭いのも仕方がな……仕方ないか?仕方ないことにしておこう。
「どうした?」
「いえ……その、やっぱり機関に来るのは初めてですから……どうも、目移りしてしまって」
そうかな?そうかも。俺はガキの頃から何回もここに足を踏み入れたことがあるため、もはや実家のような安心感があるが、一般人からしてみれば機関はエリート中のエリートが集まる場所────というのが一般的なイメージである。全然そんなことないのにね。
親代わりの人は一日中飲んだくれてるお姉さんだし、研究主任は常に腕組んで全く喋らない寡黙な人だし、床さえあればどこでも寝れるよ!と言い張り、実際そこら辺の床で寝るオペレーターだったり、変人が多い。
確かに、機関本部に就職するのは相当難しいが、俺からしてみれば変人の巣窟である。おもしれー人が沢山いるんだよここ。
「ほれ、いくぞー」
「あ、アーク様……!待ってください、まだ心の準備が……!」
大丈夫だって。そんな緊張するほどのものでもないから。
ささやかな抵抗をものともしないで、リオーネの手を引っ張りながら受付へと向かう。俺の姿に気づいたお姉さんが、笑顔を浮かべた。
「おかえりなさいアークさん。ミオリネ様ですか?」
「ただいまです。あの人起きてます?」
呼び出した張本人だから、起きてないと困るが、あの人一日中飲んだくれてるからなぁ……。
そう言うと、受付の人は「あはは……」と苦笑すると────
「────寝てます」
「でしょうな」
かーっ、ぺっ!呼び出したくせにのんびり熟睡中かい!薄々分かってはいたけど。
「無駄だとは思いますが、所長のパソコンにメッセージを送っておきます────ところでアークさん」
「はい?」
カタカタと一通りメッセージを打ち終わった受付嬢さんは、何やら俺の右下ら辺を見て、ニヤリと笑って小指を立てた。
「お隣の美人さん、恋人さんですか?」
「残念ながら違いますねー」
「こいっ…!」
あ、リオーネがショートした。ダメだよ受付嬢さん。まだリオーネはこういった感情に耐性が出来てないんだから。
「まぁ、残念です」と言うと俺専用のこの建物で使えるキーカードを渡される。
「それではアークさん、親子歓談、楽しんできてください」
「何も楽しめる要素がないんだよなぁ……」
大抵、こうして呼び出される時は、合コンに失敗して寂しさを紛らわせようとしてたり、ふとした時に独り身であることに悲しくなったりしてだる絡みしてくるのが80パーセントだからな……。
ほんと、誰か貰ってやってくれって。このままだったら死ぬに死ねねぇ。
とりあえず、受付嬢さんにはお礼を言い、未だ顔を真っ赤にして何やらブツブツ呟いているリオーネを引っ張りながら、施設内へと入っていく。
人理統合機関中央区第三軍属所は、主に瘴気の研究に焦点をあてて稼働している施設だ。
所長は、俺の親代わりでもあり、光の壁の原案を作り出した若き秀才ミオリネ・ブランジェ。
まぁその実は学生時代に恋愛に尽く敗れ続けてしまい、ヤケ酒と合コンに狂う悲しきモンスターと化してしまった可哀想な32歳である。
「こ、恋人……私とアーク様が恋人……」
「リオーネ?おーい、リオーネ?そろそろ戻ってこーい」
「わぴゃっ!?……そ、そそそそそそのアーク様……!?す、少し顔を冷ましてきますー!」
「あ、リオーネ!?」
真っ赤な顔のまま、俺の手を振りほどいて走っていくリオーネ。
これは重症だな。まさかここまでリオーネが恋愛に初心だなんて思ってもいなかった。
………そんな姿も可愛いなぁリオーネは!流石最推し!
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どうせここまで読んでないと思うから言うね。
プロローグのコメント欄にとんでもない煽り文来た。ウケる。
いやー適当だなんてそんな褒めてくれるなんて嬉しいなー!
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