第5話

「はい、終了」


「ぶへー……」


「つ、強すぎ……流石人外……」


「……………」


 そして放課後、俺(ハンデ有り)VS三人の模擬戦を実施した。


 シアンはD、レイルは現在Cランクなので、とにかくなんでもいいので三人で協力して俺に一撃当てる。それが今回の内容だ。


 ハンデとして、俺は直径1mの円から一歩も外に出なかったのだが……。


「まぁ、作戦は悪くなかった。二人が連携して攻撃している間に、リオーネが数の暴力で魔法を撃つ。即興にしてはいい連携だったが────」


 近くで寝そべっているシアンとレイルの頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でる。


「────ま、相手が悪かったな」


「人外ー!強すぎー!もっと手加減しろー!」


「つ、つよすぎー」


「ガハハ」


 伊達にSランクを名乗っていないのでね。俺の対人装備を解放してないだけ充分な手加減だろ。


 わーわーと文句を言ってくる二人と戯れながら、今後の二人に対する練習メニューを考えてみる。


 シアンは原作に出ていないため知らないが、レイルは最終的にAランクまで到達する。つまり、文字通り血反吐を吐いてまで努力ができる人間なので……多少キツイくらいで大丈夫か。


「とりあえず、二人はもっと体力付けな。これから一週間20キロランニングと、あと武器に対する意識を付けな」


「ぶへー」


「はぁーい」


 俺の鬼畜振りを見たせいか、最初と違って二人からの俺の態度がかなりフランクになってきた。下手にかしこまれるより、こっちの方が気楽でいい。


「……リオーネ?」


「………………」


 返事がない。ただの屍のようだ。


 実際は疲れで何も言えないだけだろうけど。大変だったよなハチャメチャに動く二人の動きを読みながら俺だけを狙い続けるの。集中力、めっちゃ使っただろうな。


「立てる?」


「……アーク様は、本当に鬼畜です……」


「ごめんて」


 とりあえず、乙女としては地面にうつ伏せになりながら喋るのはちょっとまずいから、腕を取り、俺の肩へと回す。


 リオーネの腰に手を回し、支えながら立ち上がらせてから、そのまま膝裏に手を回して横抱きにする。


「リオーネさんばっかりずるいー!私達も抱っこー!」


「そんだけ叫ぶ元気があるなら大丈夫だろ」


 あと、俺の腕は二つしかねぇから物理的に無理だ。


「明日は休みだから、今日は沢山食べて沢山寝るように」


「ぶーぶー!」


「お、お疲れ様でした……」


 さてと、とりあえず保健室行くか。


 間違いなく、誰かに見られれば100パーセント茶化される状況であったのだが、運がよく(?)誰ともすれ違わないで保健室へとやってきた。


 この学園の保健室は、簡易治療装置、魔力回復ポットなどなど、様々な治療に役立つ装置がある。


「失礼しまー」


 行儀悪いが、両手が塞がっているため足で扉を開ける。本来なら、保険医がいるはずなのだが、無人であった。


 少し進み、机を見ると『現在離席中、御用のある方はご勝手に』と書かれている紙が置かれてあった。それでいいのか保険医。


 まぁいいや。ご勝手にと書いてあるのでご勝手にさせて頂こう。


「下ろすな」


「はい」


 リオーネをソファへとおろし、背もたれにきちんともたれかかせてから、部屋内を物色する。


 気絶しているのであれば、問答無用で魔力回復ポットへと入れるのだが、意識があるので魔力回復効果のある飴を舐めさせれば、しばらくしたら歩けるようになるだろう。


 戸棚を開けて、飴を1個だけ取ってから包装を解く。


「ほら、口開けて」


「………」


 弱々しく空いた唇に、飴を当てる。こうしていると、何やらイケナイ事をやっているような気分になってしまうが、これは治療行為と自分に言い聞かせる。


 はわわ……!リオーネの唇触っちゃった!うわっ、なんかすげー柔らかかっ────!


「んっ……」


「!?」


 ちろり、とリオーネの舌が俺の指に触れる。一瞬、ビックリして指を離しかけたが、このままだと飴も落ちてしまうので、震える指を抑えながらも、何とか舐めさせることに成功した。


「ふぅ………」


「……すみませんアーク様。お手数お掛けしました」


「気にしないでいい。俺がしたくてやった事だから」


 リオーネが飴を舐めている間に、俺はリオーネの舌が触れてしまった指を水で流す。別に、この指舐めたら関節キスだなーとか思ってねぇから。


 思ってねぇから!!


「……ふぅ、だいぶ回復しました。ありがとうございますアーク様」


「ん、復活したようで何より」


 それから数分後、飴を舐め終えたリオーネは立ち上がり、頭を下げる。


「リオーネ」


「なんでしょう」


「明日、予定あるか?」


「予定、ですか?特にありませんが」


「そうか、良かった」


 明日は休みだし、ちょっと外に出る用事もあるからリオーネを遊びにでも誘ってみようと思う。


「明日────午後からデートしないか?」


「────午前中からがいいです!!!!」


 主張強。



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クックックッ……プロローグに気づかないというご指摘を頂いたので、新しく章を追加しました。一番上まで行けば分かります

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