第4話

 彼女のキャラを思い出す。レイルとユウラシアの出会いは、この学園に入学して四ヶ月後────所謂、二学期からである。


 初めてユウラシアと出会った時の彼女は、目が昏く、まるで世界全てに絶望しているかのような姿だった。そんな彼女に、ユウラシアとヒロインは寄り添い、その心をゆっくりと癒していき、最終的にはユウラシアの準ヒロイン────というより、ユウラシアもヒロインのこともどっちも好きな両刀キャラになっていた。なんでそうなった?


 確か、レイルには仲のいい友達がいて、その子が戦場で死んでしまったから全てに大して無気力になったと語っていたが────ん?


 もしかして、と思い目線をシアンへと向ける。


「……え、えと……アークさん、そんなに見つめられると私……」


「……むー」


 もしかして、この子がレイルが病んでしまうことになった子か?しかも、今朝のアレから見るように性格的に押し切られていた可能性がある。


 しかも、あの男結局Bランクは嘘だったからな。二学期に入るとCランクでも一年生はボチボチ戦場に出ることになる。我が身可愛さに、シアンを戦場に置き去りにした。なんて可能性もあるかもしれない。


 そう考えると、今日の朝たまたまだけど出会えてよかった。意図的では無いが、原作キャラを救うことが出来た。まぁ、原作ブレイクしていることに対して思うことはあるが……まぁ歴史の修正力的な何かが上手いことやってくれるでしょう。そこまでは俺知らん。


「………アーク様、彼女のことを少し見すぎです」


「………ん?」


「………」


「じー………」


 少し控えめに、肘ら辺の服を引っ張られて意識が戻る。レイルが口に出しながら俺の事をじとーっと見つめているが、俺はそれよりリオーネの態度に胸を打たれた。


 プイッ、と顔を背けながらも、流し目で俺の事を見つめており、少しだけ唇を尖らせている。これはまさか────嫉妬!?嫉妬してくれているのか!?


「ごめんなリオーネ。少しだけシアンの事が気になって見ていただけなんだ。だから、そう拗ねないで」


「べ、別に拗ねていたわけではありません。ただ、パートナーである私を放っているのが気になっただけで……」


「……それって嫉妬では?」


「しっ。今は黙ってみないとだよレイルちゃん」


 ちょっとそこ外野うるさいよ。


 とりあえず、現在拗ねているリオーネに対しては、俺の左手を自由にさせることで何とかご機嫌を取る。


 人差し指で、ちょんちょんとリオーネの手を突くと、ゆっくりと俺の手を握ってくる。こういう所も可愛い。


 しかし、ここで予期せぬ原作キャラとの邂逅か……。原作キャラはなるべく助けるのが俺の今回の人生のモットーだ。出来ることなら、何かこの二人にテコ入れしたいところだが……。


 よし、ついでにこの二人も鍛えるか。最近、リオーネとの訓練も少しだけマンネリ化してきたし、ここらで新しい刺激を加えよう。


「二人とも、もし良かったら今後こういうことがないように、俺が鍛えてあげようか」


「「え!?」」


 当然、俺のこの申し出に驚く二人。意外にも、リオーネが何も言ってこないなーと思ったら、めちゃくちゃ俺の手をサスサスとしているため、黙っていてくれているのだろう。感謝。


「い、いいんですか!?」


「もちろん。またシアンが絡まれないとも限らないし、助けて良かったねだけで済ませたくは無い」


 二人は、顔を見合わせると同時にこくんと頷いた。


「ぜひ、よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします。アタシも、シアンを守れるくらい強くなりたいから」


 百合の花が咲き誇ろうとしています。大切にしましょう。とあるアニメの影響で、百合に目覚めてしまった俺氏。この二人の関係性を大切にしようと思いました。あくを。


 このタイミングで、昼休み終了のベルがなった。


「それじゃ二人とも、放課後第六訓練所で」


「はい!よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします。ビシバシやってもいいから」


 もちろんそのつもりである。


 パタパタと走っていく二人を見届けた後、俺らも教室に戻ろうと立ち上がる。


「……アーク様。何かお考えが?」


「んにゃ?特に。本当に、この後もまたあの二人が絡まれたら夢見が悪いと思っただけだよ」


 ────まぁ、強いて言うなら。


「それと、そろそろリオーネの交友関係も増やしておこうと思って。俺以外塩対応はダメよ……」


 この子、俺以外に話しかけれても基本ツーンとしているのである。嬉しいけど、嬉しいんだけど!この先を考えるとちょっと心配である。


「アーク様!?」


「ま、これを機に俺以外の友達も増やしてもろて」


「必要ありません!私にはアーク様居れば────アーク様!聞いていますかアーク様!」


 聞いてない聞いてない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

えー、前話にてプロローグ読み飛ばしている人200人程いる問題をポロッと言ってしまった結果、プロローグと第一話の差が150人ほどになっていました。


……なんかごめんね?

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