第3話

「す、すいません聖じゃ────」


「ん?」


「────じゃなくてアークさん!」


 ビシッ!と何故か敬礼をした状態になった先程の女性。おかしいな、別に何も怖いことはしてないと思うのだが(すっとぼけ)。


「すまない、遅くなったな」


 そして、スタッと上空から現れたエイリ先生。恐らく、屋根伝いにジャンプしてこちらまで来たのだろうか。スリットから覗く美脚にチラリと視線が吸い込まれてしまったが、直ぐに視線を男へと戻す。生脚魅惑のマーメイド。


 タイツだから生脚じゃないけどな。


「アーク、クヴァリ状況説明を」


「主観的ですけど、いいんですか?」


「構わん。どの道、そこの生徒には処分が下されるからな」


 一部始終だが、俺とリオーネが見たことを一から十まで説明した。まぁ、見つけて即制圧したので、あまり語ることもないが。


「────Bランク?」


「え、違うんですか?」


 俺が、この男が貴族であることと、Bランクであることにかこつけて、この女生徒と無理矢理パートナーになろうと迫っていたことを話すと、眼鏡越しに眉をひそめた。


「ネイリー家。貴族の中でも子爵家だが、最近は武勲を上げてよく聞くが────そこの生徒は未だにCだ」


「は?」


「兄君はとても優秀で、人望にも厚く、もうすぐAにも上がると噂では聞いたが」


「つまり、ランク詐称したわけですね……最低」


 リオーネの声が、いつにも増して低くなり、罵倒する。おっふ、流石に推しとは言え直接俺に向かって言われたくは無いな。多分心がズタズタに折れる。


「……んだよ……なんだよ!どいつもこいつも俺と兄を比較しやがって!」


 うわ、ヒスりやがったよこいつ……。俺も前世ではよく優秀な兄と比較されていたから、気持ちはわからんでもないが……。


 ………うるさいから黙らせるか。これ以上は気分が悪くなる。


「いいだろーがよ別に!兄のせいで迷惑かけられてんだから、その肩書きを少しくらい────」


「それ以上、うるさい口を開くな」


 パンっ、と弾を奴の腹に向かって発砲。「ガッ」という呻き声を上げて、奴は仰向けに倒れた。


「模擬弾に、昏倒する魔法と、治癒魔法とその他もろもろの効果を持つのを付与させて、気絶させました。あとは煮るなり焼くなり」


 二宮〇なり。この語感好き。


「感謝する」


 すると、エイリ先生はポケットから20cm程の棒を取り出した。そしたら、そこの先端からニュっと紐が現れた。


 ふーん。エイリ先生の武器ってムチなのか。何故かは言わないけど、似合ってますね。何故かは言わないけど。


 先生が腕を振ると、しなりながらムチが動き、そのまま男の体をグルグルと縛り上げた。


「私は、この男を懲罰室へ連れていく。二人も始業へ遅れるなよ」


「「はい」」


 二人で返事をして先生を見送る。ゴロゴロと回転しながら引き摺られる男は見なかったことにした。


「おーーい!!!シアンちゃーーん!!」


「……お迎えか?」


「はい、今の私のパートナーの子で────わぷっ」


 遠くから、手を振りながらこちらに近づいてきたのは女生徒だった。その子は、一瞬にしてこちらまで近づくと、絡まれていた子にそのまま抱きついて押し倒していた。


「うぇぇぇ!!いつまでも教室に来ないから心配したよ~~!!ズビー!ズビー!」


「…………」


「……まぁ、大胆ですね」


 キャラ濃っ!というか、なんかどっかで見たことあるような……あ?


 泣きながらしがみつく彼女の顔を見た時、どことなく頭の奥が刺激された。


 ……この子、こんなキャラだったっけ?






「アークさん!シアンちゃんを助けてくださってありがとうございました!」


「私からもありがとうございます。まだ御礼を言えてなかったので」


「まぁ気にしなくていいよ。女性を助けるのは当たり前だからね」


 勿論、男の人でもきちんと助けますけどね。


 あの後、もうすぐ始業だから連絡先を交換して一旦別れ、今はこうして昼休みに予定を合わせ、一緒に机を囲んでいる。


「シアン・カルベニクと申します。ランクはまだDですが、いずれはアークさんのように、多くの人を助けられるような人になりたいと思ってます」


「アタシはレイル・ヘイルバーン!朝の時はアタシのパートナーを助けてくれて本当にありがとう!」


「……あ、お、おう」


 ……いかん。名前を聞いてさらに確信したが、マジで頭が混乱している。


 さて、大体の予想はついていると思うのだが────紫髪をツインテールでまとめている少女、レイル・ヘイルバーン女史なのだが、原作キャラである。


 侵食戦線にて、第四話から登場し、後々は成人したユウラシア隊の一員となる、いわゆる準ヒロインキャラである。


 だがしかし、そもそも彼女はアニメでは髪はツインテールではないし、そもそもこんなに姿。それで思い出すのに一苦労したが、物語では主要な原作キャラである。


「……アーク様、今日は何やら歯切れが悪いようですが、どこか体調でも?」


「いや、なんでもないんだ……うん、ホントなんでも……」


 ただ、俺がレイルのキャラについていけてないだけで、少し対応に戸惑っているだけだ。


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この作品の読者には、第一話だけ読んでプロローグを読んでない人が200人います。


────なんで?

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