魔術大帝令嬢

『一魔法入魂』


 それが、私が産まれた────産まれ落ちてしまった、魔術大帝であるクヴァリ家の家訓。


 簡単に、マイルドに言うのなら、『一つ一つの魔法に、まるで魂を込めるかのように魔法を放ちましょう』と言うのが、かなーりマイルドに表現した家訓である。


 実際にやっていることは、人を人とも思わないような強力な魔法行使の強制。


 魔法を使えなければ、人として見られないようなその家で、私はとても綺麗で、繊細で、効率のいい魔法に見蕩れてしまった。


 その事を知ったお父様────いえ、あのクソハゲドブスは、その日から私を居ないものとして扱った。


 放り出さないのは、このことが公になれば家が取り潰されることが分かっているからなのか、口止め代わりにそこに居ただけだった。


 ある日、あのクソハゲが瘴気を吸い込んだと廊下を歩いていたメイドから盗み聞いた。


 その当時、『ふーん、あいつ死ぬんだ』と思っていたが────当時は、とんだ邪魔が入ったと思ってしまった。


 聖者────アーク様が、クソデブを治療したのだという。挨拶をした時本人はあまり覚えていなさそうだったが……余計なことを、と思ってしまった。


 今思えば、感謝しかありません。アーク様があのクソハゲを治療してくれたから、自然とアーク様と接点が持てました。


 私の魔法を褒めてくださいました。クヴァリ家という色眼鏡無しで、私のことを認めてくださいました。


 幼少期の頃から一人だったため、あまり分かりませんが、きっと、この気持ちを信頼というのでしょうか。


 嬉しいです。アーク様。私の魔法を必要としてくれて。今までの研鑽が、無駄では無いと思えるようになりました。


 だから、明日からは少しだけ……。そう、少しだけ────アーク様に近寄っていきたいと思います。


 クヴァリ家の娘としてではなく、リオーネとして、あなた様の隣に居たいと思います。


「リオーネ」


「アーク様」


 なので、今はこの握っている手を、もう少しだけ強く握ってもよろしいですか?




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~完~




嘘です。続きます。

これにて大一節は終了です。次はもっともーっと二人をイチャコラさせるぜへへっ……。

そして、最後は(主人公が)幸せな死を迎えて終了。芸術的だぜ……

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